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賃貸業界にも及び始めたコロナ禍。関西のオーナーに入居者対応の取り組みを取材した。
敷金で減額分を補填
■賃料75%減額、1年間の猶予
大阪市内で2棟の宿泊施設を所有している図越寛オーナーは、ホテル運営会社に貸している9階建て全16室の『ブエナビスタなんば心
斎橋』のテナント賃料を1年間75%引きとして猶予を行っている。
所有する宿泊施設の中で、賃貸住宅への貸し出しが可能な特区民泊の物件は、すでに住居へ転用。一方で、ホテル仕様だった同物件
は、稼働率が低下し、運営会社側から家賃減額の相談が入ったことで、猶予の措置を講じたという。
「新型コロナウイルスの宿泊業界への経済的ダメージは、短期的なものだと考えている。物件ごと売却することも可能だが、いずれ
観光客が返ってくることを信じて堪える選択をした」と話す。減額猶予した分の賃料は、1年後に24回の分割払いで回収する予定だ。
また、図越オーナーが賃貸物件として所有している9棟の全共用部に、感染予防のためのチラシと消毒液を設置している。「今は
オーナー、テナント、全員が不安な状況にある。オーナー、テナント、入居者の壁を越えて乗り切りたい」と話す。
■家賃交渉月5件申請をサポート
「4月に入ってから、住居でも入居者から家賃減額の要請が入るようになった」と話すのは、兵庫県内で約150戸を所有する古田佳奈
美オーナー(兵庫県神戸市)だ。シングルマザーや生活保護受給者など、いわゆる生活弱者の入居者から寄せられることが多いという。
こうした相談に対し古田オーナーは、まずは住宅確保給付金の案内を徹底。時には申請書類作成を手伝うこともあり、これまで5件
の申請を行った。また、住宅確保給付金を受け取っても家賃の支払いが難しいケースは、賃料の一時的な減額にも応じている。例えば、5万円の家賃の場合、月々の請求を4万円として、敷金の中から補填する。「家賃減額の声をオーナー側に上げてくれる入居者は、真面目な人が多い。オーナーとして力になりたい」と古田オーナーは力強く話していた。
■助成金制度賃借人に周知
『おおや倶楽部』(大阪市)の糸川康雄組合長は入居している40戸に、助成金や融資制度などを記載したチラシを4月9日に配布した。
個人向けには緊急小口資金や総合支援資金、住宅確保給付金など、各社会福祉協議会に相談するように促した。企業向けには雇用調
整助成金や日本政策金融公庫の融資、各自治体のセーフティネット保証などを案内している。糸川オーナーは「制度を周知させるた
め、郵送やポスティングを行った。一度テナント入居者から家賃の問い合わせがあったが、今のところ質問や減額交渉はない」と話
す。チラシのフォーマットは、おおや倶楽部のメンバーも使用できるよう共有しているという。
■店子、家賃半額要求、通知書送付で一蹴
店舗やテナントの管理を行うK-FIRST(ケーファースト:大阪府堺市)は数件の入居者から家賃減額を求められたという。
オーナーと協議をして承諾を得、数カ月間30%減額する旨を個々の入居者に伝えていた。しかし「30%減なんてあり得ない。半年間半額にしてほしい」と複数人から声があがったため個別対応を中止。「家賃減額のお知らせ」として4~6月の3カ月分を30%減額する通知書を全テナントに送付した。すると意外にも抗議や苦情の連絡は全くなく、支払ってくれるという。
管理物件には古くから入居する飲食店や小売店などのテナントが多く、ほとんどが家賃保証に加入していない。田中健司社長は「事
業用の家賃保証が入居者にあまり認識されておらず、加入が疎まれる現状がある。今後家賃滞納の発生も予想される中で、入居者へ家
賃保証への加入をどう促していけばよいかが課題」と話す。
■設備入れ替えネット環境改善
『がんばる家主の会』(大阪市)の松浦昭会長は会のメンバーとZoomを用いて定期的に情報交換をしている。テレビ会議をする中で、
音声が途切れることがありネットワークの改善が必要だと感じたという。そこで松浦オーナーは十数年前、所有物件に導入したイン
ターネット設備を新たなサービスに刷新。6月から切り替わる予定だ。松浦オーナーは「コロナ収束後も元の生活には戻らず、在宅で
の勤務や勉強会は増加するだろう。それに伴い、物件の価値も変わり、ネット環境の見直しがより検討されるのではないか」と推測し
ているIoTを活用した見守り機器やスマートロックにも着目。機能や利便性を研究し、導入を検討していく考えだ。
■失業者の入居希望収入ゼロでも契約
一方、コロナ禍により物件入居の問い合わせが増えたケースもある。『関西大家の会』の松田英明会長は、大阪市内に1棟、京都市
に1棟、北海道札幌市に8棟の全191戸を所有する。札幌市内の物件では、離婚した単身者や店を廃業した経営者などから、入居希望の
問い合わせが3件入った。望まれる物件は賃料4万円台の2DKだ。主に固定費の削減を理由に、同じ札幌市内からの住み替えが多いとい
う。「失業し、収入がゼロの人もいる。普段であれば断ることも考えるが、今回の事態はやむを得ないケース」と松田オーナー。貯蓄
もあり、家賃保証会社の審査も通ったため、契約に至った。
物件が住居と近い場合は、オーナー自身が直接入居者の話を聞くことができるが、遠隔地であればそうはいかない。松田オーナーは
「周囲に迷惑をかけない、家賃をしっかり払う、保証会社の審査を通っていることの3点を基準にしています」と話す。
賃貸業界にも及び始めたコロナ禍。関西のオーナーに入居者対応の取り組みを取材した。
敷金で減額分を補填
■賃料75%減額、1年間の猶予
大阪市内で2棟の宿泊施設を所有している図越寛オーナーは、ホテル運営会社に貸している9階建て全16室の『ブエナビスタなんば心
斎橋』のテナント賃料を1年間75%引きとして猶予を行っている。
所有する宿泊施設の中で、賃貸住宅への貸し出しが可能な特区民泊の物件は、すでに住居へ転用。一方で、ホテル仕様だった同物件
は、稼働率が低下し、運営会社側から家賃減額の相談が入ったことで、猶予の措置を講じたという。
「新型コロナウイルスの宿泊業界への経済的ダメージは、短期的なものだと考えている。物件ごと売却することも可能だが、いずれ
観光客が返ってくることを信じて堪える選択をした」と話す。減額猶予した分の賃料は、1年後に24回の分割払いで回収する予定だ。
また、図越オーナーが賃貸物件として所有している9棟の全共用部に、感染予防のためのチラシと消毒液を設置している。「今は
オーナー、テナント、全員が不安な状況にある。オーナー、テナント、入居者の壁を越えて乗り切りたい」と話す。
■家賃交渉月5件申請をサポート
「4月に入ってから、住居でも入居者から家賃減額の要請が入るようになった」と話すのは、兵庫県内で約150戸を所有する古田佳奈
美オーナー(兵庫県神戸市)だ。シングルマザーや生活保護受給者など、いわゆる生活弱者の入居者から寄せられることが多いという。
こうした相談に対し古田オーナーは、まずは住宅確保給付金の案内を徹底。時には申請書類作成を手伝うこともあり、これまで5件
の申請を行った。また、住宅確保給付金を受け取っても家賃の支払いが難しいケースは、賃料の一時的な減額にも応じている。例えば、5万円の家賃の場合、月々の請求を4万円として、敷金の中から補填する。「家賃減額の声をオーナー側に上げてくれる入居者は、真面目な人が多い。オーナーとして力になりたい」と古田オーナーは力強く話していた。
■助成金制度賃借人に周知
『おおや倶楽部』(大阪市)の糸川康雄組合長は入居している40戸に、助成金や融資制度などを記載したチラシを4月9日に配布した。
個人向けには緊急小口資金や総合支援資金、住宅確保給付金など、各社会福祉協議会に相談するように促した。企業向けには雇用調
整助成金や日本政策金融公庫の融資、各自治体のセーフティネット保証などを案内している。糸川オーナーは「制度を周知させるた
め、郵送やポスティングを行った。一度テナント入居者から家賃の問い合わせがあったが、今のところ質問や減額交渉はない」と話
す。チラシのフォーマットは、おおや倶楽部のメンバーも使用できるよう共有しているという。
■店子、家賃半額要求、通知書送付で一蹴
店舗やテナントの管理を行うK-FIRST(ケーファースト:大阪府堺市)は数件の入居者から家賃減額を求められたという。
オーナーと協議をして承諾を得、数カ月間30%減額する旨を個々の入居者に伝えていた。しかし「30%減なんてあり得ない。半年間半額にしてほしい」と複数人から声があがったため個別対応を中止。「家賃減額のお知らせ」として4~6月の3カ月分を30%減額する通知書を全テナントに送付した。すると意外にも抗議や苦情の連絡は全くなく、支払ってくれるという。
管理物件には古くから入居する飲食店や小売店などのテナントが多く、ほとんどが家賃保証に加入していない。田中健司社長は「事
業用の家賃保証が入居者にあまり認識されておらず、加入が疎まれる現状がある。今後家賃滞納の発生も予想される中で、入居者へ家
賃保証への加入をどう促していけばよいかが課題」と話す。
■設備入れ替えネット環境改善
『がんばる家主の会』(大阪市)の松浦昭会長は会のメンバーとZoomを用いて定期的に情報交換をしている。テレビ会議をする中で、
音声が途切れることがありネットワークの改善が必要だと感じたという。そこで松浦オーナーは十数年前、所有物件に導入したイン
ターネット設備を新たなサービスに刷新。6月から切り替わる予定だ。松浦オーナーは「コロナ収束後も元の生活には戻らず、在宅で
の勤務や勉強会は増加するだろう。それに伴い、物件の価値も変わり、ネット環境の見直しがより検討されるのではないか」と推測し
ているIoTを活用した見守り機器やスマートロックにも着目。機能や利便性を研究し、導入を検討していく考えだ。
■失業者の入居希望収入ゼロでも契約
一方、コロナ禍により物件入居の問い合わせが増えたケースもある。『関西大家の会』の松田英明会長は、大阪市内に1棟、京都市
に1棟、北海道札幌市に8棟の全191戸を所有する。札幌市内の物件では、離婚した単身者や店を廃業した経営者などから、入居希望の
問い合わせが3件入った。望まれる物件は賃料4万円台の2DKだ。主に固定費の削減を理由に、同じ札幌市内からの住み替えが多いとい
う。「失業し、収入がゼロの人もいる。普段であれば断ることも考えるが、今回の事態はやむを得ないケース」と松田オーナー。貯蓄
もあり、家賃保証会社の審査も通ったため、契約に至った。
物件が住居と近い場合は、オーナー自身が直接入居者の話を聞くことができるが、遠隔地であればそうはいかない。松田オーナーは
「周囲に迷惑をかけない、家賃をしっかり払う、保証会社の審査を通っていることの3点を基準にしています」と話す。