観測にまつわる問題

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テロ等準備罪、なお残る懸念の検討

2017-05-25 20:54:28 | 政策関連メモ
昨日の日経新聞の社説でテロ等準備罪への懸念が表明されていました。

なお残る「共謀罪」法案の懸念(日経新聞 2017/5/24)

>この法案をめぐっては、「処罰の対象が不明確で、恣意的に運用されかねない」「思想や内心の自由を侵す」といった懸念がかねて指摘されている。衆院での審議でもこうした点はなお解消されておらず、国民が法案を理解しているとは言えないのが現状だろう。

国連特別報告者の懸念の表明もありますね。

「共謀罪」書簡の国連特別報告者 日本政府の抗議に反論
(東京新聞 2017年5月23日)

>「プライバシーや他の欠陥など、私が多々挙げた懸念に一つも言及がなかった」と指摘した。

安倍政権に近いところもある高橋洋一氏も冤罪の懸念を表明しています。

これまでの理解では、テロ等準備罪は実行着手に到る前の段階で捕まえるためのものに過ぎませんから、こういう懸念は考え過ぎではないかと思っていた訳ですが、悪いイメージはそう簡単には払拭できないですからね、もう一度調べてみました。

共謀罪(ウィキペディア)

>テロ等を含む組織的な犯罪は、綿密な計画の下に役割分担をして実行されるという特質を有し、ひとたび発生すると甚大な被害となることから、未然防止が要諦となる。実行に至る前に情報収集する必要性が高く、外国のように幅広い通信傍受や身柄の一時拘束などの特別権限、犯罪の実行に着手する前の段階の一定の行為を処罰の対象にする共謀罪が必要である。このような犯罪の共謀に限って捜査の対象にすることは、日本の刑事法の在り方とも整合的する。日本の現在の刑事法においても、一定の罪の予備・陰謀、あおり等を処罰の対象にしているのである。

賛成派の意見として以上の意見がでてきました。(賛成派)テロ対策にテロ等準備罪が必要!→(反対派)監視社会じゃぁぁぁ、という流れに、?・・・テロ等準備罪にそんなことは書いてないようだが?と思っていた訳ですが、賛成派が自ら情報収集を強化するかのようなことを言っていたみたいです。それで合点がいきました。

ウィキペディアの脚注を参照したところ、言っているのは平沢勝栄さん(元警察官僚の昔からの論客でテレビによく出ているため著名)みたいです。

>諸外国ではテロという合理的な疑いがある場合は令状なしに捜索・差し押さえ・身柄の拘束ができ、「他国では、日本では考えられないような権限が当局に与えられている。日本では、そういったことは絶対にできないが、外国と協調して犯罪を防ぐ、最大限のことをやろうということ」と、法案の必要性を説いた。(「批判の多かった防犯カメラも普及した」平沢勝栄議員がテロ等準備罪の必要性強調AbemaTIMES 2017.02.01 15:30)

こういうの読むと筆者も監視社会になるのかなと思いますが、まぁ別にそんなこともないでしょうね。テロ等準備罪は基本早めに捕まえるためにあって、通信傍受法や監視カメラの設置みたいな何か監視の強化になることは書かれていないからですが。こういう人の煽りを字義通りに捉えない方がいいと思うんです。「殺す」発言はほとんどの場合、殺人予告ではありません。平沢さんは諸外国のようにテロ対策を強化するぞの人で、それは必ずしも間違っているとは思いませんが、分かり易く導入の必要性を訴える過程で、こういう極論をぶっているだけだと思います。多分効果的なんでしょうね。無用な誤解も生んでいる気もしますが。筆者が見る限りでは、ウィキペディア共謀罪に令状なしに捜索・差し押さえ・身柄の拘束ができるなんてことは書かれていません。それもあるいは平沢さんの言う通り必要な可能性もあるかもしれませんが、基本的にテロ等準備罪には関係が無いのではないですか?それはそれ、これはこれでしょう。

続いてウィキペディア「共謀罪」から共謀の定義を考えてみます。

>共謀の定義の問題
共謀罪における共謀とは具体的には何か、ということも論点となっている。政府見解は、共謀罪における共謀と共謀共同正犯における共謀が同じものであるとする。それを前提として、既遂の犯罪における共謀共同正犯の認定と同様に実行行為の伴わない共謀を認定することがはたして妥当か、という議論でもある。

>反対派の意見
共謀共同正犯については謀議が存在すらしない場合にも成立するとされるように拡大解釈がすすみ、共謀の概念が広がりすぎている。わいせつ画像の投稿が行われた画像掲示板の管理者が通りすがりの投稿者との具体的なやりとりがないにもかかわらずわいせつ物公然陳列の共謀共同正犯であるとして有罪とされた下級審判例が存在し、また2003年の最高裁判例において暴力団組長について、武装護衛の組員の銃刀法違反に関して目配せすらないのに黙示の共謀が認められ共謀共同正犯が成立したとされる最高裁判例が存在する。共謀罪においてもこうした共謀概念の拡大はそのまま踏襲されることとなり、国会審議においても、目配せやまばたきが共謀となるとの政府答弁があった。このため、嘘の供述をもとに作られたストーリーで冤罪が起きる危険があり、それは犯罪行為が行われていない前提の共謀罪ではより深刻なものとなる。

>賛成派の意見
共謀罪の基礎には昭和三十年代の暴力団紛争において(後に、映画化され極道映画ブームの元になった一連の抗争事件)、犯罪実行に自ら加わらない暴力団の組長など「黒幕」処罰を目的として確立された共謀共同正犯という判例理論があり、当時、学会から、拡大処罰の可能性がある、連座制の復活だ、近代刑法の基本原則たる個人責任を没却する、との批判があったが、半世紀後の今日にわたるまで、そのほとんどが暴力団にのみ適用されてきている。今日、共謀罪反対派の反対論は、当時の批判に類似している。反対派のいう黙示の共謀の判例については、もともと、組員を支配して手足のように使いながら犯罪の実行には自ら加わらない組長を逮捕する法理として共謀共同正犯が発展してきた事を思えば、不当な拡大解釈とはいえない。それに、暴力団における、組長と組員の強固な事実上の支配関係を前提とした法理である事から、一般人への拡大は半世紀ほとんど行われていない。

共謀罪における共謀と共謀共同正犯における共謀は同じもののようですが、反対派は共謀共同正犯は拡大解釈されてきたと説きます。なるほど危険ですね・・・。対して賛成派は、昭和30年代の暴力団紛争において犯罪実行に自ら加わらない暴力団の組長など黒幕処罰を目的として確立した共謀共同正犯という判例理論は、当時学会から拡大処罰の可能性があるなどと批判されたが、結局一般人への拡大解釈はおこっていない、暴力団における組長と組員の強固な事実上の支配関係を前提とした法理だと説きます。歴史って重要ですね。まぁ必要性も無いのに無理な拡大解釈なんてものはそうそう起こらないのではないかと。警察も意味も無く一般人を捕らえては寧ろ存立の危機に晒されます。テロ等準備罪は、犯罪組織の計画を察知したら、実行着手に到る前に捉えるために設けられる、これでOKだと思います。共謀共同正犯が暴力団以外の一般人への拡大は半世紀ほとんどされていないように、犯罪組織の定義が拡大されて一般人に適用されることはほとんどないと思います。計画が拡大解釈されたとして問題があるようにも思えません。というのも犯罪が行われる予定であるということを説得できなければ、弁護側が勝つに決まっているからです。実行準備段階の拡大解釈も同じですね。ほとんどって万一の場合があったらどうする?と思われるかもしれませんが、そのために三審制がある訳です。誤審の可能性はゼロではないかもしれませんが、リスクゼロを求めていては何も出来ないと言うしかありません。

反対派は立法事実を言いますが、逆に導入が進んでいる海外でどんな弊害があったのか教えてほしいです。これは先進的な取り組みではありません。新しい取り組みに失敗はつきものですが、テロ等準備罪は海外で一般的な罪の導入に過ぎませんから、これは安パイだろうと筆者は思います。それも海外より非常に抑制的にやっているらしいことはこれまでの議論から明らかでしょう(賛成派はそれを主張しますし、反対派はそこを否定しません)。前にも書きましたが、オリンピックテロを察知した時、オリンピックまで待つつもりなんですかねぇ・・・反対派は。これまでそれなりに機能してきた司法システムを信頼しても良いのではないかと思った次第です。

インタビュー受けて互いの認識の溝が深まったら世話ない

2017-05-25 08:09:12 | 日記
韓国紙、自民・石破茂氏が「納得得るまで日本は謝罪を」と述べたと報道 本人は「謝罪」否定(産経ニュース2017.5.24 23:29)

>記事は、石破氏が日韓合意に反する発言をしたと受け取られかねないが、石破氏は24日、産経新聞の取材に「『謝罪』という言葉は一切使っていない。『お互いが納得するまで努力を続けるべきだ』と話した」と述べ、記事の内容を否定した。ただ、抗議はしない意向という。

朝起きて産経ニュースを確認したら、目立つところにこのニュースを見つけました。昨日産経ニュースを見た時には分かりませんでしたが、ちょうど入れ替わりぐらいで掲載されていたのかもしれません。

「慰安婦合意はお互いが納得するまで努力をすべき」というなら、韓国は慰安婦像の撤去を含む合意履行の努力をすべきだが、日本も更なる努力をすべきという趣旨になります。日本はお金を出しましたし、大体進めたんだと思います(だから日本が履行を促している)が、あたかも日本の努力が足りないという日本人政治家が与党にいるという印象を与える記事は、韓国に誤ったメッセージを送るだけでしょう。韓国が勝手に日本の情報を利用して捏造するのは防げませんが、政治的に敏感なインタビューを受けるなら、誤解を深めないよう念押しするべきですし、誤解が深まったなら、きっちり抗議するべきです。

インタビュー受けて互いの認識の溝が深まったら世話ないですよ。情報に弱い日本人らしいと言えば日本人らしいかもしれませんが、首相になろうという方がそんな認識では困ります。