日本人を父とする子(母は外国人)の日本国籍取得に関して、父母が結婚していない場合、父が子を認知する時期で差を設けていた国籍法の規定を、最高裁判所は法の下の平等に反して違憲と判断し、その子どもたちに日本国籍を認めました。この規定が違憲であることについては12-3、(新たな立法を待たずに)判決で国籍を認めるべしとする判断については10-5の多数決でした。
理屈で考えれば、父親があることをしたりしなかったりで子の運命が左右されるのは「親の因果が子に報い」式の仕打ちであって許されない。しかし、不埒な男性が結婚もしないで外国人女性に産ませた子だから仕方ないという国民感情は、本音としてはありうるでしょう。また、国籍は主権の根幹に深くかかわるだけに、裁判所は介入に慎重な領域でした。これまで、一般に政府の立場を気遣い少数派に冷たいと言われてきた最高裁としては画期的判決と思います。
ご存じのようにわが国は国籍について属人主義(日本人の子は日本人)を採っています。アメリカ合衆国は属地主義(米国で生まれた子には米国籍)を採るので一概に比較できませんが、今回の判決は彼の地の最高裁に比べても血も涙もあるものではないでしょうか。
米国人男性が海外で現地人女性に産ませた子の米国籍取得に関して、母が米国人である場合より制約があるという男女差別について、世紀をまたいだ2つの判決(1998年のミラー判決と2001年のグェン判決)で合衆国最高裁は、真っ二つに分裂しました。しかし結局、グェン判決で多数派裁判官は、こうした子への米国籍付与に否定的な判断を示しました。寡聞にして、わが国の最高裁が彼の地の最高裁より人権に関して進んだ判決を下した例は知りません(逆は枚挙に暇がありませんが)が、今回は脱帽です。
長い間、私たち憲法学者と最高裁の憲法解釈には、深くて越えられない河がありました(本当です、笑)。しかし、3年前の在外国民が選挙で投票できないことを違憲と断じた判決あたりから少し流れが変わってきたように思います。その合理性に疑問ありとしながら、非嫡出子の法廷相続分が嫡出子の半分であることを容認した13年前の合憲判決も、今だったら違う判断の可能性もあります。
ともかく、最高裁から出てきたところで喜ぶ母子の満面の笑顔が印象的で、法律家の端くれとしてうれしかったです。
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