国も地方自治体もさまざまな情報を保有しています。当たり前ですが、そうした情報は税金を使って集めたり作成したものだから、国民や住民のもので請求されたら公開しなきゃならないというのが情報公開制度です。
情報公開制度では地方が先鞭をつけました。長洲知事率いる神奈川県などが先頭ランナーだったと言って差し支えないでしょう。40年以上前に、情報公開制度の第一人者を師匠として研究生活を送っていたので、私も半強制的に(笑)、この仕組み詳しくなりました。
もちろんお役所が持っている情報は公開せよといっても、個人情報とか営業秘密とか公開したら支障があるものは非公開になります。ただ非公開は例外なので、明らかにこういう支障があるというレベルじゃなきゃいけない。よく分からないけど先がどうなるか分からないからとりあえず非公開とか、嫌な市民や訴訟の相手方には情報を見せたくないからとか、そんなのはもちろん非公開の理由になりません。
情報公開制度はアメリカの情報自由法に倣ったものです。情報自由法には当初、今回の森友学園事件で問題になった存否応答拒否はありませんでした。請求された情報を持っていれば原則は公開、非公開事由にあたれば非公開です。持ってなければありません(不存在)と。
情報自由法のヘビーユーザーのひとつがマフィアだと言われていました。マフィアは内部に情報提供者(当局のスパイ)がいないか神経を尖らせています。具体的にはスパイが疑われる人物Xについて、情報公開請求をするのです。スパイの疑いが間違っていれば、当局にXの情報はないでしょうから不存在と回答があるでしょう。当局がXの情報を持っていても、当然個人情報などを理由に非公開になりますが、「Xはスパイの可能性高い」とマフィアはその目的の大部分を果たしたことになります。
これじゃマズいというわけで、情報自由法には、存否応答拒否が新設され、わが国も国・地方ともこれに倣いました。情報の存在を認めることが非公開情報の内容を教えることに等しいときは情報のあるなしを答えなくてOK!
この経緯から分かるように、お役所の情報は原則公開せよという情報公開制度からすれば、情報のあるなしすら答えない存否応答拒否は、きわめて例外的な取り扱いです。今回の大阪高裁判決は、そのことを明言したもので、当然でしょうが敬意を表します。
実は国の情報公開・個人情報保護審査会も、この事案について、存否応答拒否が許されるケースにあたらないという答申を昨年3月に出していたのに、無視し続ける財務省っていったい……(情報公開審査会は、文書の存否を答えたとしても、判明するのは財務省が何らかの文書を検察に任意提出した事実の有無にとどまる。具体的な捜査の内容などを開示するものとはいえない、と当然の判断理由を述べています)
私も師匠の弟子と思われているのか、いくつかの地方自治体で情報公開審査会の委員をやってきました。多くの自治体の職員は、よく制度を勉強されていて、今回の財務省のような無体な対応をめったにありません。
それでも最近、ある市の全部非公開というありえない対応について、全部非公開処分を取り消したうえで、制度の趣旨からすればあってはならないものであって、以後は情報公開条例の本旨に従った対応を望むというお小言を付けました。
国も地方自治体も、持っている情報は国民・住民のものだという制度の原点を忘れないでほしいと考えます。長々お付き合いいただきありがとうございました。
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