「鵺(ぬえ)の鳴く夜は」
つい今し方、ちょうどブログを更新し終わって一息吐いていると、
開け放した窓の下で何とも、この地方の方言で言う「いなげな」(「異気
」と書く) 獣の絶叫する鳴き声がした。それを字にすると、
「ギィヤャァウワァァ――ッ!ギィャャャウァ――ッ!ガワアァァ――オ!」
と、とても書き表せないが、その断末魔の叫びは何度も繰り返された。
私は、始めはネコの喧嘩でも始まったのかと思って関わらずに居たが、
その、恰も何者かに不意打ちを食らって今まさにこの世から消え去ろう
とするかのような無念を訴える叫びに動揺して網戸を開けて窓の下を
覗いた。その声は決してネコやカラスなどの鳴き声ではなかったが、そ
れでは他にどんな生き物が斯くも大きな声で泣き喚くことが出来るだろ
うか?しかし、窓から漏れる明かりは限られていて闇夜全体を覗うこと
は叶わず、その鳴き声は更に凄みを増して続いていたが確かめることは
出来なかった。しばらくすると絶叫は止み、絶命したのだろうか、再び夜の
静寂が戻った。そして、固唾を飲んで鳴りを潜めていた蛙たちが何事もな
かったように一斉に聞き飽きた恋の唄を奏で始めた。
ああ、我々が寝静まった後の与り知らない真夜中の世界の片隅でも、
今しも、生きとし生けるものたちは何時如何なることで自らの命を落とす
かもしれない恐怖と抗いながら、それでも闇の中を本能に追い立てられ
て生殖や捕食のために身を忍ばせて種を繋ごうとしている。いったい何
の為だろうか。それらすべての生きとし生けるものたちに定められた天
命は儚く、やがて全うしたものはその屍さえも晒さずに未練なく何と見事
に消え去ることか。
それにしても、あの絶叫はいったい何の鳴き声だったのか?昨日、
辺り一面を草刈りしたのでそれが何ものかを巣穴から追い出したの
か?
「気になる」
あっ、ホトトギスが鳴いている。
「一編書けたか?」
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