ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「イェヌーファ」

2016-05-15 22:44:55 | オペラ
3月11日新国立劇場オペラパレスで、ヤナーチェク作曲のオペラ「イェヌーファ」をみた(演出:クリストフ・ロイ、指揮:T. ハヌス、オケ:東響)。

チェコの閉鎖的な寒村を舞台に、未婚で身ごもったイェヌーファ、彼女を守ろうとするあまり赤子を殺してしまう継母コステルニチカを巡る悲劇と
愛の物語。

イェヌーファは従兄弟のシュテヴァの子を妊娠しており彼に結婚を迫るが、取り合ってもらえない。一方シュテヴァの異父兄ラツァは彼女を愛している。イェヌーファは秘密裏に出産し、彼女の継母コステルニチカはシュテヴァに彼女と結婚するよう頼むが拒否される。イェヌーファがラツァと結婚できる
よう、コステルニチカは赤ん坊を川へ捨て、子供は病死したとイェヌーファに嘘をつく。二人の結婚式の日、川から赤ん坊の死体が見つかる。すべて
の真実が明らかになった後、イェヌーファとラツァは互いの愛を確認し、苦難を乗り越え共に生きていくことを誓う。

人物関係がいささか錯綜している。原作のタイトルは「彼女の養女」だという。確かに養女イェヌーファと自分の名誉を守るために嬰児殺しを
してしまうコステルニチカと呼ばれる女性こそ、この話のキーを握る人物だ。むしろタイトルロールのイェヌーファと同じ位重要な役だと言えるだろう。

本であらすじを読んだ時は、単純にこのおばさん(コステルニチカ)が悪い、と思ったが、今回演出家自身が書いたあらすじを読んで、ようやく
腑に落ちた。これは2012年のベルリンドイツオペラ公演プログラムに載せられた文章だというが、あらすじと言うにはあまりにも詳しくて、
まるで大河ドラマのように長くて驚かされる。というのも、このオペラの言わば前史から説き起こしているからだ。これを読めば、コステルニチカ
の本名がペトローナで、彼女がどのような経緯でイェヌーファの継母となったのか、その後どうしてコステルニチカと呼ばれるようになったのか
が分かる。2幕ラストの「コステルニチカは…死が自分に掴みかかろうとしているのを感じる」という表現が詩的で感動的。

この作品は旧弊な社会の重苦しさ、人間の弱さ、一途な愛、追い詰められた人間の心理を見事に表している。
特に、継母が、ラツァに対して口走った自分の言葉のために、赤ん坊を何とかしなければ、と思いつめるくだりは説得力がある。
その後、目の前で二人が婚約して安心した途端に、風が吹いて窓が異様にバタバタと開くので、脅えるシーン。
この一連の緊迫したシーンが素晴らしい。
全幕を通して演出が冴えている。
ヤナーチェクの音楽は、予想通り独特で魅力的。圧倒的な面白さだった。またぜひ見たい。

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