7月1日紀伊國屋サザンシアターで、シェイクスピア作「オセロー」を見た(演出:鵜山仁)。
ヴェニス公国に仕える将軍オセローは、元老院議員ブラバンショーの娘デスデモーナと愛し合い、
ブラバンショーの反対を押し切り、結婚する。
一方オセローの忠臣であるイアーゴーは、自分ではなくキャシオーが副官に任命され、オセローへ恨みを持っていた。
憎悪と嫉妬を抱くイアーゴーの巧妙な策略により、物語が複雑に絡み合い、オセローとデスデモーナは
破滅へと追い込まれていく・・・(チラシより)。
小田島雄志訳。
日本人がオセローを演じるのを見たことはほとんどない。
昔、テレビで尾上松緑主演のを一度見ただけ。
「オセロー」自体、何と20年ぶりの観劇。
今回は、何と言っても横田栄司さんが久し振りに舞台に復帰、しかも主演するというのが喜ばしい。
横田さん、おめでとうございます!待ってましたよ!
さて、天下の極悪人イアーゴーを浅野雅博がやるというのが、今回の最も意外なキャスティング。
さらに、彼に徹頭徹尾騙されてカモにされる哀れな男ロダリーゴーを石橋徹郎がやるというのもびっくり。
一体どうなるのか、恐る恐る見に行った。
まず冒頭、デスデモーナの父ブラバンショ―役の高橋ひろしがうまい!
声も演技も素晴らしい。
この役でこれほど感銘を受けたのは初めてかも。
舞台中央に四角い箱のような部分が設けられ、四方に扉の枠のみがある。
その扉を開けたり閉めたり、主にイアーゴーが忙しく動かす。
舞台奥と左右には透明な幕が揺れている(美術:乗峯雅寛)。
デスデモーナ役のsaraは顔も姿も美しいが、前半、緊張のせいか早口。
演出は、あちこちで笑わせるように仕掛けている。これは珍しい。
オセローがキプロス島に到着し、先に着いていたデスデモーナと再会した時の喜び方が異常。
将軍であり総督である彼が、獣のようにわめく。
美しくないし、第一威厳がない。
大勢の部下が見ているというのに。
ここの演出は、残念だし、腹立たしい。
(妻の浮気の)確かな証拠が欲しい、と言うオセローに、イアーゴーは「先日、夜(キャシオーと)一緒に寝ていると、・・」と言い出す。
その時、音楽が入り、舞台奥の背景が青だったのが前面赤に変わる。
<休憩>
デスデモーナが柳の歌を歌うシーンで、saraの歌声は澄んでいて、なかなか素敵。
後半のセリフもよかった。
エミリア役の増岡裕子がうまい!
この役は重要で、しかも演じ甲斐がある。
「ヴェニスの商人」に、「ユダヤ人には目がないか?・・・」というシャイロックの有名なセリフがあるが、
ここでエミリアが語る「亭主どもに教えてやるといいのですわ、女房だって感じかたに変わりはないって。ものは見えるし
匂いはかげる、甘い辛いの区別はつく、その点亭主と同じだって。・・・」は、それに匹敵する女性の人権宣言だ。
デスデモーナの死因は窒息なので、最近ではその後の彼女のセリフの部分はカットされることもあるが、今回は強行。
その後、驚いたことに死んだはずのデスデモーナがむっくり起き上がり、ベッドに腰かけてこちらを見ている。
部屋に入って来た人々が「何とむごたらしい光景!」とか言わなくちゃいけないのに、どうしてこんな演出をする?
エミリアも同様。
死後、デスデモーナと手を取り合い、見つめ合う。
もう一つ、嫌だったのは、オセローの最後のセリフが始まると同時に、穏やかで静かな音楽が流れたこと。
演出家がセリフの力を信じていないから、こんなことをする。
~~~~~~~ ~~~~~~~
横田栄司のオセローは、とにかくチャーミング。
彼のオセローを見ることができて嬉しかった。
彼はこれまでたくさんのシェイクスピア作品に出演して来たが、主演はこれが初めてだろう。
オセローは彼の初主演に最もふさわしい役だと思う。
イアーゴー役の浅野雅博は、これまで何度も見て来たが、一番印象に残っているのは2018年レイ・クーニー作「Out of Order イカれてるぜ!」
という軽いドタバタコメディで、政治家・加藤健一の無茶な注文に右往左往させられる気の毒な秘書の役だった。
見るからに真面目で有能な秘書という感じの彼が、客席を爆笑させてくれて、意外にコメディに向いているとわかった。
だから今回の配役には、始め戸惑いを覚えたが、演出家はこの戯曲の喜劇性に目をつけ、彼を使うと面白いんじゃないかと思ったのだろう。
彼のイアーゴーは従来と違う、言わば異色。
演出家の意図を受けて、随所にコミカルさを醸し出している。
(ちなみに、私がイアーゴーをやらせてみたいのは谷田歩か橋本さとし)。
ロダリーゴー役の石橋徹郎もベテランで、今や文学座の公演に欠かせない存在。
2015年に「ローゼンクランツとギルデンスターン」という二人芝居を浅野雅博とやった人で、やはり鵜山仁が演出していた。
だから演出家は、この二人には全幅の信頼を置いていてやりやすいのだろう。
いろいろ違和感はあったが、今回の演出は斬新で、この戯曲の意外な一面を見せてくれた。
終演後、ロビーで三谷幸喜氏とすれ違った!
あっと言う間の出来事だったが、ドキドキ(笑)。
ヴェニス公国に仕える将軍オセローは、元老院議員ブラバンショーの娘デスデモーナと愛し合い、
ブラバンショーの反対を押し切り、結婚する。
一方オセローの忠臣であるイアーゴーは、自分ではなくキャシオーが副官に任命され、オセローへ恨みを持っていた。
憎悪と嫉妬を抱くイアーゴーの巧妙な策略により、物語が複雑に絡み合い、オセローとデスデモーナは
破滅へと追い込まれていく・・・(チラシより)。
小田島雄志訳。
日本人がオセローを演じるのを見たことはほとんどない。
昔、テレビで尾上松緑主演のを一度見ただけ。
「オセロー」自体、何と20年ぶりの観劇。
今回は、何と言っても横田栄司さんが久し振りに舞台に復帰、しかも主演するというのが喜ばしい。
横田さん、おめでとうございます!待ってましたよ!
さて、天下の極悪人イアーゴーを浅野雅博がやるというのが、今回の最も意外なキャスティング。
さらに、彼に徹頭徹尾騙されてカモにされる哀れな男ロダリーゴーを石橋徹郎がやるというのもびっくり。
一体どうなるのか、恐る恐る見に行った。
まず冒頭、デスデモーナの父ブラバンショ―役の高橋ひろしがうまい!
声も演技も素晴らしい。
この役でこれほど感銘を受けたのは初めてかも。
舞台中央に四角い箱のような部分が設けられ、四方に扉の枠のみがある。
その扉を開けたり閉めたり、主にイアーゴーが忙しく動かす。
舞台奥と左右には透明な幕が揺れている(美術:乗峯雅寛)。
デスデモーナ役のsaraは顔も姿も美しいが、前半、緊張のせいか早口。
演出は、あちこちで笑わせるように仕掛けている。これは珍しい。
オセローがキプロス島に到着し、先に着いていたデスデモーナと再会した時の喜び方が異常。
将軍であり総督である彼が、獣のようにわめく。
美しくないし、第一威厳がない。
大勢の部下が見ているというのに。
ここの演出は、残念だし、腹立たしい。
(妻の浮気の)確かな証拠が欲しい、と言うオセローに、イアーゴーは「先日、夜(キャシオーと)一緒に寝ていると、・・」と言い出す。
その時、音楽が入り、舞台奥の背景が青だったのが前面赤に変わる。
<休憩>
デスデモーナが柳の歌を歌うシーンで、saraの歌声は澄んでいて、なかなか素敵。
後半のセリフもよかった。
エミリア役の増岡裕子がうまい!
この役は重要で、しかも演じ甲斐がある。
「ヴェニスの商人」に、「ユダヤ人には目がないか?・・・」というシャイロックの有名なセリフがあるが、
ここでエミリアが語る「亭主どもに教えてやるといいのですわ、女房だって感じかたに変わりはないって。ものは見えるし
匂いはかげる、甘い辛いの区別はつく、その点亭主と同じだって。・・・」は、それに匹敵する女性の人権宣言だ。
デスデモーナの死因は窒息なので、最近ではその後の彼女のセリフの部分はカットされることもあるが、今回は強行。
その後、驚いたことに死んだはずのデスデモーナがむっくり起き上がり、ベッドに腰かけてこちらを見ている。
部屋に入って来た人々が「何とむごたらしい光景!」とか言わなくちゃいけないのに、どうしてこんな演出をする?
エミリアも同様。
死後、デスデモーナと手を取り合い、見つめ合う。
もう一つ、嫌だったのは、オセローの最後のセリフが始まると同時に、穏やかで静かな音楽が流れたこと。
演出家がセリフの力を信じていないから、こんなことをする。
~~~~~~~ ~~~~~~~
横田栄司のオセローは、とにかくチャーミング。
彼のオセローを見ることができて嬉しかった。
彼はこれまでたくさんのシェイクスピア作品に出演して来たが、主演はこれが初めてだろう。
オセローは彼の初主演に最もふさわしい役だと思う。
イアーゴー役の浅野雅博は、これまで何度も見て来たが、一番印象に残っているのは2018年レイ・クーニー作「Out of Order イカれてるぜ!」
という軽いドタバタコメディで、政治家・加藤健一の無茶な注文に右往左往させられる気の毒な秘書の役だった。
見るからに真面目で有能な秘書という感じの彼が、客席を爆笑させてくれて、意外にコメディに向いているとわかった。
だから今回の配役には、始め戸惑いを覚えたが、演出家はこの戯曲の喜劇性に目をつけ、彼を使うと面白いんじゃないかと思ったのだろう。
彼のイアーゴーは従来と違う、言わば異色。
演出家の意図を受けて、随所にコミカルさを醸し出している。
(ちなみに、私がイアーゴーをやらせてみたいのは谷田歩か橋本さとし)。
ロダリーゴー役の石橋徹郎もベテランで、今や文学座の公演に欠かせない存在。
2015年に「ローゼンクランツとギルデンスターン」という二人芝居を浅野雅博とやった人で、やはり鵜山仁が演出していた。
だから演出家は、この二人には全幅の信頼を置いていてやりやすいのだろう。
いろいろ違和感はあったが、今回の演出は斬新で、この戯曲の意外な一面を見せてくれた。
終演後、ロビーで三谷幸喜氏とすれ違った!
あっと言う間の出来事だったが、ドキドキ(笑)。
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