題 バス停にて
この相談室へ勤務する日は、たいてい8時少し過ぎのバスに乗ります。
乗車するそのバス停では、道路の先に岩手山が望めるので、晴れた日など朝の清々しさを感じられますが、一方、心が引っかかることが少しありました。
それは、そのバス停には毎回通勤と思われる決まった人たちがいつも並びますが、どなたとも会釈すら交わすことがないままでいたことです。
今の社会、特に都会では、とある団地やマンションのように治安の点から「あいさつ無用論」があったり、無関心なことは、むしろ心地良いことと言われたりもします。
けれど、ここは、自然に親しみ人との付き合いを大切にしたい地方都市、岩手、盛岡です。
私もあいさつは大事にしたいと思ってましたが、最初の声掛けの時を逸してしまったため、これまでなんとなくあいさつが出来ずにおり、バスを待つ無言でいる数分間がとても長く感じられていました。
二三日前のことです。
「おはようございます。」と若い女性が列に加わりました。その声をきっかけに、皆それぞれに答えたり、会釈をしたりと一気にその場が和みました。
そうそう、この空気感なのです。
自分がやれなかったことを省みて、今度こういう場に居合わせたら、思い切って声掛けしようと気持ちを新たにしたことはいうまでもありません。
そして、声を発したのが自分よりずっと若い女性だったことで、地域の未来を託すべき若い次世代への安心感と期待が大きく膨らんだ出来事でもありました。