晴耕雨読、山

菜園・読書・山・写真…雑記

たどりついた先には…、『冬の旅』

2013年09月03日 | 読書

石原裕次郎の「北の旅人」は「たどりついたら 岬のはずれ~」という歌詞で始まる、北を旅する男の抒情たっぷりの歌謡曲だ。しかし、この旅はひと時のやすらぎさえ追いたてるように過酷な出来事が続く。最初の就職の躓きから始まった転落は新興宗教、阪神大震災、失踪、ホームレス、留学生、治験、異常犯罪など社会の断面が織り込まれ、ひとりの人生の過酷さを超える。そして最後、出所したばかりの刑務所に舞い戻るという運命。だが、今度は極刑が待っているというのに、これまで<あれよあれよと流されるままに生きてきたが、いまは違う><生きる気力が身内から湧いてくるのを覚えた>。長かったこの旅にも、先が見えてきた。