少年時代は「高杉春風」という名前だった高杉晋作。幕末時代を駆け抜けた志士の一人だが、再三ドラマ化される坂本竜馬ほど詳しくは知らない。そのNHK「竜馬伝」の中で、病をおして着流し・軍扇スタイルで戦いを指揮する姿を覚えている程度だ。この本では、幼少時代から27歳で最後を迎えるまでの短い生涯が魅力的に描かれていて勉強になった。上海で政府軍らに抵抗する美玲を助ける話なども興味深かい。晋作は、時代に翻弄される長州藩の中で脱藩を繰り返しながらも重用される才気と行動力を発揮、圧倒的な力の幕府軍との四境戦争をも勝利に導いた。“春風”は梅や桜をめでるだけでなく<春を呼ぶ嵐>にもなったのだ。作者は晋作が遺した最後の詩を引用しながら<まさに晋作の一生を表した絶唱だった。>と終えたが、心に留まる最終行だった。