前に読んだ『生きる』ほか何冊かの著者の時代小説には深い感銘を覚えた。そして初の現代小説。終戦の復員列車で乗り合わせた男との僅かの出会い。その男を探す15年にわたる話は木地師の研究から古代史にと広がり、その後の生き方まで決めた。背景で描かれる戦後混乱期の御徒町界隈、時の経済も面白く読めたが一番は木地師のことだ。その昔、朝廷・幕府の許可を受け轆轤を用いて木工品を加工する彼らは、良質な材木を求めて数十年単位で山中を移住していたという。深い意味合いがあるタイトル、それに興味を持って手に取った本だが一読では簡単には踏破できない。今回は難路を迂回ルートで先を急いでしまったが、次は大きく連なるこの山脈を直登で踏みしめて歩きたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます