この2月に亡くなった戦後の日本を代表する俳人の著者、長く朝日俳壇の選者でもあった。選ばれた句とともに読む氏の選評には骨太な自由人としての姿勢が感じ取れた。戦争を憎み、さらに福島原発事故を広島・長崎の原爆被害と同様の悲劇と断じていた著者が遺したメッセージである。日銀に入行して僅か3日で海軍に入り、南方のトラック島に。補給路を断たれた戦場で死は日常、それも著者がいちばん多く見たのは米軍戦闘機に撃たれた死ではなく餓死。その無念の思いを「水脈の果て炎天の墓碑置きて去る」という句にこめた。捕虜生活を経て日本に帰る船から遠ざかる島を見て作ったものである。今後の生き方を決めた著者は日銀に復帰するが、求めていた俳句の世界に出会う。その前衛俳句を通して社会の現実、自分自身を見極め続けてきた著者は今を<きな臭い世の中になってきた>と。あの太い毛筆の「アベ政治を許さない」の揮毫も快く引き受けた著者。森友・加計学園はじめとして問題噴出する安倍政権の政治姿勢を今も糾弾し続けているに違いない。
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