故あって、山乃手歌舞伎が上演予定【南部坂雪の別れ】の台本を清書した。
いつものことだが、役者が踊りやすい様にと、唸りながらワープロを打っていると
打ち終わった時には、ひと芝居すっかりと頭の中に入ってしまう・・。
南部坂あらすじ
お家断絶から八ヶ月、江戸、南部坂にある浅野家別邸では、内匠頭の妻瑶泉院が菩提を弔いながら、
戸田の局と共にひっそりと暮らしていた。
そこに、大石蔵之助が討入りの準備が整い明日決行すると伝えに来るのだが、
脇にいる腰元のお梅がスパイであると疑い、本当のことが云えず、
『元の起こりは御主君の御短慮より、其の為一家中は散り散りばらばら、
御主君が短慮さえ起こさねば、我に臣下も安穏に暮せたもの恨みこそあれ、
仇討ちなどとはもっての外、今日は、おいとま乞いに参りました。』
さらに、殿より預っている御用金を退職金代わりに頂いて大阪で小間物屋を始めるという・・・・・。
蔵之助はスパイのお梅がいるからと、必死で目配せするのだが、
瑶泉院はそれに気付かずブチ切れて
『蔵之助、面を上げえ、この位牌に覚えがあろう。
今は無き内匠頭が、我が手を借りて不忠の家来の成敗致す』
と位牌で蔵之助を打ちすえ、奥座敷へ入ってしまう。
(ン~、位牌で打ちのめすとは・・。すごいプライドと迫力だ。たしか、瑶泉院はこの時28歳、
現今の奥方たちが、こんなプライドを引き継いでいればもう少し違った世の中になったと思うのだが・・。
只、迫力だけは十二分に受け継いではいるが・・・。)
瑶泉院に真意が伝えられない蔵之助、
『これなるは道中筋で、名所旧跡を書きしたためて参った一巻、
何卒、御台様のお目にかけて下され』
と、道中日記(実は討入りの連判状)を、戸田の局に託して去る。
帰る途中、浅野邸の様子をうかがいに来た吉良家の清水一角にさや当てされ、
『お身は武士ではない、犬だ、犬だ、犬侍だ。馬鹿な侍だ。』
と喧嘩を吹っ掛けられた蔵之助、
大事の前の小事と必死に堪える蔵之助に、一角は、つばきをかけ上手へ入る。
『今に見よ、今に見よ清水一角、雪のあしたと諸共に、きっと恨みは晴らしてくれん!。』
(そうだ、そうだ、明日は吉良上野介と一緒に、あの憎たらしい「コ―チャ・・」じゃなかった『一角』を
ボコボコにしてやれ、と観客は一斉に拍手・・・。。)
そこへ寺坂吉右衛門、お梅を捕え下より出てくる。
『ありの穴よりつつみがくづるる、斬って仕舞え』
お梅を切って花道へ行きかける中、
ニ階障子を開け、瑶泉院
『これなる道中日記、嬉れしく拝見致したぞよ。首尾よう本懐・・・・』
『ハハッー』
《ヨシ、これで明朝、心おきなく討ち入ることができる。》
討入りの準備が万端整い、水を打ったようにこころが落ち着き、花道へと去って行く蔵之助の後を
寺坂が嬉々として六法を踏みながら追って行く・・。
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【忠臣蔵外伝、南部坂雪の別れ】
・・ん~、いい芝居だ。
だが、チョボがないから難しいぞこれは。。
山乃手のメンバーなら何とかこなすだろうが・・。