発電所の整備で水路の水が止まると聞き、関係者に頼み込んで導水トンネルの中に入らせてもらった。コウモリのコロニーがまだ残っているか調べたかったのだ。
全長500メートル、懐中電灯の灯り以外は全く光がない暗闇の世界。
天井まで約3メートル、普段は2メートル位までは水が流れているので、残りの1メートルほどの半円形の空間が彼らの世界だ。
・・・あった!!。入り口から100メートルほど入ったところに、10センチくらいの黒い塊が数カ所点在。さらに100メートルほど行くと50センチくらいのコロニーがあった。暗くてよく判らないがとりあえずシャッターを押す。5・6回シャッターを押したら、音に驚いたのかコウモリが飛び始めた。まるで大きな蝶が飛び回っているようだ。
子供の頃、確か12・3才の頃だったか、暗闇に怯えながらここに探検に来たのを思い出した。50年以上も昔のことだ。あの頃は剥きだしの岩肌だったが、今はコンクリートが吹きつけてある。
この狭い空間を100メートル以上も飛んできて、ここに逆さまにぶら下がることができるのは、コウモリ以外にはいないだろう。トンネルの真ん中を少し過ぎたか、奥に出口が明るく見えてきた。
家に帰って写真を見ると、一番大きな塊は大小100匹くらいのコロニーのようだ。よく見ると足に標識環が付いているコウモリが3匹写っている。どこかで捕獲され付けられたのだろう。
蝙蝠というとあまりいいイメージはないが、暗闇を自由に飛び回り、岩肌に逆さまにぶら下がる、こんな特殊能力があれば、誰に気兼ねすることなく自分たちだけの世界で自由に生きることができそうだ。