仁君の『今しか出来ん』との提案で
区民総出で、2月27日に、お宮の舞台や芝居道具を片付けた後、
『これで何も思い残すことはない』と言っていた仁君は、僅か十日後、3月10日、
急に持病が悪化し、あっけなく黄泉の客となってしまった。
安達三の貞任、大蔵卿、大高源吾、太十の操、どんどろのお弓、
寺子屋のよだれくり、・・・
二枚目が任だったが、何でも踊った、いい役者だった。
お宮の舞台から、豊橋文化会館、芸文センター、NHKホール・・・
今にして思えば夢舞台。
若い頃は、一杯呑めば何でもできた、何処でも行った。
長年、新城歌舞伎の代表として頑張ってきた仁君は、
三途の川も、花道を架け、六方を踏んで渡りたかったのだろう。
享年73歳、ご冥福をお祈りします。
急な旅立ちで、未だに信じられん。
まだ、まだ、やり残したことがあるので、
共に行くことはできないが、
いずれ皆んなで踊るのを楽しみに、
浄土に小屋掛して、師匠と一緒に待っていてくれ。
浄土の初幕は、やっぱり太十だな・・・。