司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

代表取締役の住所の非表示措置に関する愛知県弁護士会会長声明

2024-05-16 18:43:59 | 会社法(改正商法等)
愛知県弁護士会「商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)における代表取締役等住所非表示措置に関し、弁護士による職務上請求の措置等を求める会長声明」
https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2024/05/post-109.html

「特に、昨今、国際ロマンス詐欺やSNS投資詐欺等の詐欺商法が多数発生して社会問題化しており、被害金の振込先等で、会社名義の預金口座等が多数悪用されている状況にある。会社名義の預金口座等が悪用される等の方法により被害が発生した場合、被害者において、代表取締役等への送達や役員責任追及、保全のため、迅速に、代表取締役等の住所を把握したいというニーズは、実務上、極めて高い。」(上掲記事)

 上記のとおりであり,非表示措置を導入する必要があるとは思えないが。
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M&A仲介の罠

2024-05-09 09:42:00 | 会社法(改正商法等)
朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/ASS4G3VPBS4GULFA00YM.html?iref=comtop_ThemeLeftS_01a

 事業承継(株式譲渡)後,新オーナーから会社の現預金を詐取されて,倒産に追い込まれたというお話である。

 特異なケースだとは思うが,新オーナーからの

「現預金は本部で預かるので、まずはA社に移してもらう。お金が必要になったら、そのつど入金するから」(上掲記事)

という話の時点で,おかしいと気付くべきだったであろう。

 仲介業者も,買主を紹介するだけで,「後は当事者の責任」と開き直っているのは,何とも・・・。
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5月1日は,会社法の施行記念日

2024-05-01 10:35:22 | 会社法(改正商法等)
 5月1日は,会社法の施行記念日。平成18年施行です。毎年,この日になると,当時の喧騒が懐かしく思い出されますね。
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剰余金の配当に関する決議の取消しと受領金の返還

2024-04-30 10:10:04 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG084C10Y4A400C2000000/

 個別具体的事案によると思うが,国税当局は,「税負担は生じない」と回答し,株主から会社へ受領金の返還がされたようである。
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会社法等の研修会

2024-04-26 09:19:31 | 会社法(改正商法等)
 今後の講師等の予定。

 5月21日(火)京都司法書士会会員研修会(京都市)※改正犯収法関係(実質的支配者等)
 5月22日(水)近司連企業法務研究会(京都市)※会社法
 6月29日(土)某会会員研修会(新潟市)※法人登記
 7月 6日(土)オンデマンド研修収録(東京)※倫理関係
10月11日(金)某会某支部会員研修会(岐阜市)※会社法
10月21日(月)オンデマンド研修収録(東京)※会社法
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昭和41年商法改正

2024-04-24 03:53:23 | 会社法(改正商法等)
商法改正の問題点(シンポジウム)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shiho1949/1964/26/1964_26_136/_pdf/-char/ja

「日本私法学会私法」昭和39年4月号に掲載された「商法改正の問題点(シンポジウム)」。昭和41年商法改正前夜の議論が紹介されている。大隅健一郎先生や鈴木竹雄先生が登場されており,興味深い。


 ちなみに,

「昭和41年改正の内容は,

・ 昭和25年改正で確立された株式の自由譲渡性の絶対的保障の原則を修正して定款による株式譲渡制限の制度を設けたこと
・ 記名株式の譲渡方法について株券の裏書または譲渡証書を添付して株券を交付する方法に代えて株券の交付のみで足りるとしたこと,それに伴い株券不所持制度を設けたこと,
・ 株主の請求による額面株式と無額面株式の相互転換の制度を設けたこと
・ 複数の議決権を有する株主についての議決権の不統一行使の制度を設けたこと
・ 第三者に新株引受権を与えて行う新株発行について一般に株主総会の特別決議が必要であった規定を特に有利な発行価額で発行する場合にのみ総会の特別決議が必要であるとしたこと
・ 株主の新株発行差止請求権の行使の機会を確保するため新株の発行に関して必要な事項の公示の規定を設けたこと
・ 新株引受権の譲渡を明文で認め譲渡方法を規定したこと
・ 株主名簿の閉鎖期間内でも転換社債の転換請求をすることができるようにしたこと

である」(後掲戸川)

cf.  戸川成弘「昭和41年商法改正(1)」(富山大学経済論集昭和42年2月号)
https://toyama.repo.nii.ac.jp/record/1762/files/42-2_01-07_Page339to366_Togawa.pdf
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商業・法人登記関係の主な通達等の英語併記バージョン

2024-04-24 03:21:10 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記関係の主な通達等
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 主な通達等の「英語併記バージョン」が掲載されている。
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会社法第128条の存在意義

2024-04-23 09:57:24 | 会社法(改正商法等)
会社法
 (株券発行会社の株式の譲渡)
第128条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。


 そもそも,株券発行会社が例外的な存在となっている現在,会社法第128条は存在意義を有しないのではないだろうか。

 株券発行会社において,株式譲渡の譲受人は,株券を手中にしていれば,譲受人単独で譲渡承認請求をすることができ(会社法第137条第1項),また譲受人単独で株主名簿記載事項の書換えの請求をすることができます(第133条第1項)。しかし,譲渡人と共同で手続をするのであれば,いずれも株券の提示は要しない(第133条第2項,第137条第2項)。株券が現実に発行されていることの実益は,この単独請求の可否程度ではないかと。本来は,株主であることの証拠的機能を有したわけであるが,株券不発行会社においては,株主名簿記載事項証明書で代替されているわけであるし,株券に拘る意味もないかと。

 株券発行会社であっても,現実に株券を発行している株式会社は少ないという事情に鑑みれば,端的に株券の授受がなくても株式の譲渡は有効である,という取扱いにするのが合理的であるように思われるのだが。

 会社法第128条を前提にすると,現状追認として株券の授受がないケースを有効と取り扱おうとする場合に,「誰が利益を受けるか考慮せず,違法な行為を一律に有効と解するのはおかしい」(江頭憲治郎「株式会社法(第8版)」(有斐閣)234頁))という議論にならざるを得ないという問題もある。
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株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡の効力

2024-04-22 09:12:01 | 会社法(改正商法等)
最高裁令和6年4月19日第2小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92912

【判示事項】
1 株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない
2 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができる

「会社法128条1項は、株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じないと規定しているところ、株券の発行前にした譲渡について、仮に同項が適用され、株券の交付がないことをもって、株券発行会社に対する関係のみならず、譲渡当事者間でもその効力を生じないと解すると、同項とは別に株券発行会社に対する関係に限って同条2項の規定を設けた意味が失われることとなる。また、株券の発行前にした譲渡につき、上記原則を修正して譲渡当事者間での効力まで否定すべき合理的必要性があるということもできない。以上によれば、同条1項は、株券の発行後にした譲渡に適用される規定であると解するのが相当であるというべきである。」

「株券発行会社の株式の譲受人は、株券の発行前に株式を譲り受けたとしても、当該株式に係る株券の交付を受けない限り、株券発行会社に対して株主として権利を行使することができないから(会社法128条2項)、当該株式を譲り受けた目的を実現するため、譲渡人に対して当該株式に係る株券の交付を請求することができると解される。そうすると、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文(平成29年法律第44号による改正前のもの)により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができると解するのが相当である。」

「そして、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使する場合、株券発行会社に対し、株券の交付を直接自己に対してすることを求めることができるというべきであり(大審院昭和9年(オ)第2498号同10年3月12日判決・民集14巻482頁、最高裁昭和28年(オ)第812号同29年9月24日第二小法廷判決・民集8巻9号1658頁参照)、株券発行会社が、これに応じて会社法216条所定の形式を具備した文書を直接譲受人に対して交付したときは、譲渡人に対して株券交付義務を履行したことになる。」

cf. 事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2023/jiangaiyou_04_1266.pdf
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米国会社を他州に移転するには?

2024-04-20 11:31:58 | 会社法(改正商法等)
MARK RESEARCH
https://www.markresearch.com/how-to-transfer-corp-forn-another-state/

 上掲記事によると,州法にもよるが,単純に本店移転登記はできないことが多いらしい。

 方法として,

(1)B州に新しい法人を同名で登記,B州にA州法人との合併登記を申請し,A州法人を閉鎖する。
(2)B州に新しい法人を設立した後にA州の法人を閉鎖する。
(3)B州にA州法人の州外法人(支店)を登記する。A州法人はそのまま残す。

の3つの方法があるのだとか。

 とすると,日本における不動産登記においては,

(1)の場合,合併による所有権の移転の登記
(2)の場合,事業譲渡による所有権の移転の登記

を経ることになる。(3)の場合は,変更なしである。

 そして,所有権の移転の登記の際に,所有者の「法人識別事項」として「設立準拠法国 アメリカ合衆国B州」の登記をすることになる。

cf. 令和6年4月18日付け「テスラ,会社本店を登記上も移転へ」

 ん~,一筋縄では行かないお話。
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財務省,新たなマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策に取り組む方針を表明

2024-04-18 20:29:44 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182ZR0Y4A410C2000000/

「財務省は18日、新たなマネーロンダリング(資金洗浄)対策に取り組む方針を表明した。金融庁や警察庁、法務省などが連携して、金融機関などが保有する企業の実質的支配者の情報に、捜査当局がアクセスできるシステムの構築を検討する。」

 ふむふむ。

「資金洗浄対策を強化するため、財務省は株式会社に自社の株主となる実質的支配者の情報を法務局へ提出するよう求める仕組みを構築する案を説明した。」
「資金洗浄対策を審査する国際組織の金融活動作業部会(FATF)は勧告で各国に、法人の実質的支配者の最新情報を公的機関が保有するよう求めている。」

 本来,こうあるべき。

「起業時に公証人が、定款について創業者の意思を面会して確かめる手続きで、法務省は動画やシステム上で会社設立の意思を確認できれば、オンラインを含めた面会による確認を省略できるよう見直すと明らかにした。」

 ええっ。動画やシステム上での確認とは??
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テスラ,会社本店を登記上も移転へ

2024-04-18 14:56:09 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN016G80R00C24A2000000/

 米国のテスラが,会社登記上も,デラウェア州からテキサス州に移転するらしい。

 このようなケースで,不動産登記においては,「本店移転」による変更の登記の申請のみならず,「法人識別事項」の変更の登記の申請もする必要がある。各々付記登記がされることになる。

 各別に申請すべきものと考えられる。

登記の目的  所有権登記名義人住所変更
登記原因   年月日本店移転
変更後の事項 本店
       アメリカ合衆国テキサス州(以下略)

登記の目的  所有権変更
登記原因   年月日設立準拠法国変更
変更後の事項 法人識別事項  設立準拠法国 アメリカ合衆国テキサス州

 登録免許税は,2倍かかることになるが,致し方なしか。

【追記】
 という単純な話ではないようだ。

cf. 令和6年4月20日付け「米国会社を他州に移転するには?」
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議事録の電子化と電子署名の有効性の検証等

2024-04-18 09:43:22 | 会社法(改正商法等)
株式会社リーガル
https://www.atpress.ne.jp/news/391625?s=09

 日本全国の公証役場が,リーガルの 「電子認証キットPRO」と「RSS-VC」を導入するらしい。

 ところで,商業登記電子署名の有効性の検証には,「電子認証キットPRO」が便利なのだが,そもそもセッティングが面倒くさいというか,難儀である。

 有料のAdobe acrobat を導入する必要があるし(現在は,買取りではなく,サブスク契約が必要。),法務省のシステムとの関係で,今時なぜか32bit 版をダウンロードして利用しなければならない。

 その上で, 「電子認証キットPRO」の調整だが,リーガル社のHPの説明だけでは到底セッティングは完了できない。私の場合,同社の担当の方から電話で誘導してもらって,ようやく完了した。

 とまれ,セッティングさえ完了すれば,有効性の検証は容易であるので,今後議事録の電子化が普及すれば,司法書士の必須アイテムか。
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代表取締役等住所非表示措置について

2024-04-16 19:50:17 | 会社法(改正商法等)
代表取締役等住所非表示措置について by 法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html

 早速周知のためのサイトが開設されている。

※注意※
「代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法(平成17年法律第86号)に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。」

 市区町村まで(東京都においては特別区まで,指定都市においては区まで)記載される。
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代表取締役の住所の非表示措置に関する「商業登記規則等の一部を改正する省令」が公布

2024-04-16 12:42:13 | 会社法(改正商法等)
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20240416/20240416g00096/20240416g000960010f.html

 本日,代表取締役の住所の非表示措置に関する「商業登記規則等の一部を改正する省令」が公布された。

cf.  「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=300080305&Mode=1


 資格者代理人が関与しない場合であっても、本店の実在性及び実質的支配者を証する書面の添付は必要。
※ 規則第31条の3第1項各号からは,そのようには読めないが・・・。


「住所非表示措置をした場合、会社の印鑑証明住所書に、代表取締役の住所が記載されるようにすべきである」を仮に実現する場合には、大規模なシステム改修が想定される。

13
 住所が記載された書面を閲覧することについて法律上の利害関係を有する者については、登記簿の附属書類の利害関係を有する部分として閲覧をすることにより代表取締役等の住所の確認が可能。

17
 第31条の3第4項に第3号を加え、修正。

18
 施行日は,令和6年10月1日。

32
 第三者からの情報提供を契機として登記官が代表取締役等住所非表示措置を終了することも想定されるが、詳細については通達において明らかにすることを予定。

36
 今回の改正による代表取締役等住所非表示措置については、申出と併せての登記の申請によって記録される住所に限って講じられるものであり、閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本に記載された住所を含め過去の住所については対象外。
※ 債権者としては,非表示措置が終了される前であっても,閉鎖事項証明書&住民票の写しを取得することにより,代表取締役の住所を捕捉することが可能ということになる。
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