司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

株主名簿記載事項証明書

2004-09-30 21:33:38 | 会社法(改正商法等)
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平成21年6月4日付「商業登記全書/3 株式・種類株式」


 「『株主名簿記載事項証明書』のブランクフォーム等はどこかで発表されていますか? 」というご質問あり。

 未だ公表されたものはないように思うが、株主名簿の記載事項は商法第223条で法定されており、今回の改正で影響を受けていない。したがって、通常は、

①譲渡人である株主の氏名及び住所(同条第1項第1号)
②譲渡人である株主が所有している株式の種類及び数(同項第2号)
③譲渡人である株主が取得した年月日(同項第4号)

を記載し、末尾に「上記は当社の株主名簿に記載されている事項であることを証明する。」旨を付記して、証明年月日と代表取締役の記名押印を施せば足りる。


 問題は、株主名簿の名義書換が第三者対抗要件となった(改正第206条ノ2第1項)にもかかわらず、優先劣後を公的に証明する制度がないことである。株主名簿記載事項証明書の交付を受けて、株主であることを確認し、株式譲渡契約を締結して、会社に名義書換を請求した場合に、その「請求」が会社に到達した時点と二重譲渡による他の名義書換請求が会社に到達した時点との優先劣後を証明するのは当該発行会社の手に委ねられるのである。100%の公正は保てないであろう。有限会社にも同様の問題はあったのであるが、出資持分の譲渡がほとんど行われない有限会社と一律には論じられない。証明書の発行・受領、決済及び名義書換請求を同時に行うか、または、決済の前に名義書換の仮請求を行う等、発行会社に株式譲渡の事実を事前に認識させておくような手続が要求されるのではないだろうか?
 もっとも、(株券不発行の定めのある)株式譲渡制限会社であれば、取締役会の承認を得ての決済となるので、このような心配は不要であるのだが。
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株券不発行制度に係る商法改正の一部施行についての通達

2004-09-30 11:41:13 | 会社法(改正商法等)
 「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」の一部の施行に伴う商業・法人登記事務の取り扱いについての法務省民事局長通達(平成16年9月24日法務省民商第2629号)が出されている。

 要点としては、①株券不発行の定款規定は登記事項となる、②株券を発行していない会社(株券不発行の定款規定の有無を問わない)は、株券提供公告が必要な場合に通知で代替が可能、③新株発行の効力発生日が「払込期日」となる、の3点であるが、今般の通達は既報の内容と比して特段目新しいものではない。

 なお、9月末に刊行予定であった法務省民事局民事法制管理官始関正光編著「Q&A平成16年改正会社法」-電子公告制度・株券不発行制度-(商事法務)は、10月中旬以降にずれこむ模様。
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金太郎飴答案に拍車を懸念

2004-09-30 10:13:00 | いろいろ
司法試験順位開示「合格者にも」 東京地裁が国に注文 (朝日新聞) - goo ニュース

 情報公開の趣旨と個人情報保護の趣旨に鑑みれば、得点についても当然公開を是とすべきであるが、非開示とする理由は「合格者の科目別得点がわかれば、高い得点を得た受験生から集めた情報を下に予備校が答案解答例を作って受験指導をし、受験生の答案がますます画一化しかねない」である。俗に言う「金太郎飴」答案に拍車がかかるのを懸念しているようだが、情けない理由である。
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個人情報の保護に関するガイドライン

2004-09-30 08:21:41 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 「法務省が所管する分野における事業者等が取り扱う個人情報の保護に関するガイドライン」(案)に関するパブリックコメントが実施されている。10月20日(水)まで。

 これによると、「法務省関係事業者等」としては、必ずしも法に規定する「個人情報取扱事業者」に限られるわけではなく、施行令第2条において除外されている、個人情報によって識別される個人の数が過去6月以内の日に5千を超えない者も本ガイドラインの事業者等となる(第2条の説明1)、ということである。

 「法務省関係事業者等」とは、「法務大臣の監督権限の及ぶ事業者等」とあるので、司法書士もこれに該当し、本ガイドラインの適用対象となるように思われる。
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予防司法を考えるシンポジウム顛末記

2004-09-27 01:01:48 | いろいろ
 9月25日(土)13:00~17:10、東京弁護士会館にて開催されたシンポジウム「21世紀の公証人制度を考える」に参加した。参加者は115名(主催関係者を含む。)。日本公証人連合会からもパネラー2名ほか多数参加されており、両方の立場から激論が交わされた。日公連からの「弁明」は、鋭い刃を突きつけられてのかなり無理筋という感じであった。

 9月26日(日)13:00~16:40、京都アバンティホールにて「予防司法を考えるシンポジウム」を開催した。参加者は99名(主催関係者を含む。)。公証人会からの参加はなく、東京に比較すると穏やかなシンポジウムであり、会場からの発言も含め、実のある議論がなされた。

 ドイツ公証人が証書作成法第17条に基づき負う教示義務は、

①本人確認をすること。
②当事者の意思を探求すること。
③事実関係を解明すること。
④法的射程を教示すること。
⑤証書を明瞭に作成すること。

であるが、これらはすべからく法律関係職能が明文の規定はなくても職務内在的に負っている義務というべきであり、司法書士ももちろんそうである。私も日常履践しているつもりではあったが、明確に定義付けできたという意味で、非常に意義深いシンポジウムとなった。

 パネラーの今瞭美弁護士の「法律家は自分が無知であることを知るべきである。そして、依頼者に分かりやすい言葉で話すべきだ。」旨の発言、また、公証人トーマス・ミルデ氏が最後に語られた「法律家は誠実であるべきだ。」との発言は、いずれも実感のこもった重みのある言葉であった。

 基本中の基本である①の本人確認については、実は裁判所及び弁護士がもっとも甘く、両シンポ参加の弁護士ですら、ほとんど履践していないのが実状である。いわんや一般の弁護士をや、である。本人確認は、なりすまし防止の「いろはのい」であるから、ぜひとも実践していただくように切に要望したい。

 最後に、公証人トーマス・ミルデ氏夫妻、小田司日本大学法学部助教授、河野聡弁護士、今瞭美弁護士、小寺敬二司法書士を始め、東京のみならず京都までお付き合いいただいた日弁連消費者問題対策委員会の先生方等、関係者各位に厚く御礼申し上げたい。ありがとうございました。
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株券不発行制度に係る商法改正の一部施行は10月1日から

2004-09-24 18:25:01 | 会社法(改正商法等)
 「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」の一部の施行期日を定める政令(政令第265号)が9月8日に公布され、施行期日は平成16年10月1日と定められている。併せて商法施行規則の一部を改正する省令(法務省令第62号)も同日公布された。

 また、商業登記規則の一部を改正する省令(法務省令第63号)が本日公布された。

 別表第七株式・資本区の項中「発行済株式の総数並びに種類及び数」を「発行済株式の総数並びに種類及び数、株券を発行しない旨の定め」に改める。

 すなわち、株券不発行の定めは登記事項なのである。取引の安全のためには当然公示されるべきであるから、然るべき措置。関係通達もどうやら出た模様。
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総合相談センター「みちしるべ」開所式

2004-09-24 10:06:27 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 昨日、京都司法書士会総合相談センター「みちしるべ」の開所式を行った。

cf. 京都新聞本日付
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004092300092&genre=O1&area=K40

 丹波町及び瑞穂町は10月2日(土)から、日吉町は10月10日(日)から、いよいよスタート。

 なお、岡口基一裁判官のボツネタでもご紹介いただいた。ありがとうございました。
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予防司法を考えるシンポジウム

2004-09-22 23:38:21 | いろいろ
 9月26日(日)に開催予定の予防司法を考えるシンポジウムについて、町村泰貴先生(南山大学法化大学院教授)吉永一行先生(京都産業大学法学部専任講師)のブログでご紹介いただいた。また、棚瀬孝雄先生(京都大学法科大学院教授)、服部利幸先生(立命館大学政策科学部助教授)には、ゼミのMLでご紹介いただいたとのこと。

 先生方のご好意に厚く御礼申し上げます。

 なお、当日の登壇者は、トーマス・ミルデ公証人、小田司日本大学法学部助教授、河野聡弁護士(大分)、小寺敬二司法書士(静岡)、今瞭美弁護士(釧路)の先生方と、西山慶一司法書士、古田義幸司法書士(いずれも京都)である。
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「証券化のリーガルリスク」

2004-09-22 19:31:30 | 会社法(改正商法等)
渋谷陽一郎著「証券化のリーガルリスク」(日本評論社)

 証券化の実務をリーガルリスクの観点から体系的に分析した書。実務家の観点からコンパクトにまとめられている。

 「リーガルエンジニアリング」という言葉が目新しい。曰く、「金融の機能的効率性を実現するため、法律等の枠組みを利用し、一定の仕組みを構築する技術」という定義だそうで、最近金融工学の分野で用いられている言葉のようだ。

 著者の渋谷氏は、司法書士の傍ら、新生銀行NBFS本部次長とのこと。
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会社法制の現代化

2004-09-22 19:04:56 | 会社法(改正商法等)
 「会社法制の現代化」作業については、9月15日(水)に会社法(現代化関係)部会で「第3次案」の審議が行われた模様である。7月28日(水)の「第2次案」の審議後はいろいろ情報が流れたが、今回は聞こえてこない。今後の日程は、10月6日(水)に「第4次案」の審議が行われ、10月27日(水)には「要綱案」がまとめられる見通し。
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「消費者機構日本」設立

2004-09-21 17:14:41 | 消費者問題
 法制化が検討されている消費者団体訴訟制度(内閣府は、来年の通常国会への法案提出と2006年度の制度開始を目指している。)の受け皿として、日本消費者協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、日本生活協同組合連合会の3団体が消費者機構日本を設立した。

 新組織の会長は、時の人根来泰周氏(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー)。

 なお、京都弁護士会主催のシンポジウム「新立法 団体訴権の使い方」が、9月25日(土)13:30~、京都弁護士会館にて開催される。
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「詳解個人情報保護法と企業法務」

2004-09-21 14:55:15 | 会社法(改正商法等)
弁護士菅原貴与志著「詳解個人情報保護法と企業法務【第2版】」(民事法研究会)

来年4月1日施行予定の個人情報保護法に関する概説書。

 個人情報保護法第2条第3項第4号に基づく施行令第2条によれば、個人データの量は5000人分が区分の基準とされている。すなわち、司法書士等であっても顧客名簿等個人データが5000人分を超える場合、「個人情報取扱事業者」として個人情報保護法の規制を受けることになるのである。司法書士は、もとより守秘義務が課せられているのであるが、本人からの開示請求への対応(同法第29条)等、より慎重な対応が要求されるので、充分な検討が必要である。

cf. 経済産業省ガイドライン
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登記申請書のA4横書きの標準化

2004-09-21 10:18:13 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 なぜかしら先延ばしとなっていた「登記申請書のA4横書きの標準化」であるが、どうやら本年11月1日から実施される見込みである。司法書士にとっては、登記済証の表紙や封筒等をすべてB5からA4サイズに切り替えねばならず、結構切実な問題である。社会の大半がA4化している中で一人法務局のみがA4対応が遅れていたのも、登記情報のシステム変更に莫大なコストがかかるということ以外に、収容スペース等の物理的問題も大きな理由の一つであったといわれているが、オンライン申請実施を前にようやく重い腰を上げたというところか。
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新登記情報システムに関するパブコメ

2004-09-20 22:09:39 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 法務省が登記情報システム「業務・システム見直し方針(案)」及び「業 務・システム最適化計画(案)」策定に関する意見募集を実施。

 例によって(?)what's new? には出さず、密かにパブリックコメントのサイトに出現している。期限は10月8日(金)であるが、内容が膨大で、果たしてすべてに目を通して意見を付すことができるのかという感じである。

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国史跡の古墳が競売へ

2004-09-20 15:18:47 | 司法書士(改正不動産登記法等)
抵当権買い取り交渉決裂、国史跡の古墳が競売へ 大阪 (朝日新聞) - goo ニュース

 債権者(抵当権者)の本人確認及び弁済の確認をきちんとせずに抹消登記を行うとこういうことになるという典型例。関与した司法書士の損害賠償責任も必至であろう。

cf. はざみ山古墳事件(藤井寺市議会議員田中光春氏のHP)
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