司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社法第427条第1項の定款の定めの登記における「社外取締役」等

2015-07-30 13:20:50 | 会社法(改正商法等)
会社法
 (責任限定契約)
第427条 第424条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第911条第3項第25号において「非業務執行取締役等」という。)の第423条第1項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2~5 【略】

 この規定に関しては,平成26年改正会社法によって,責任限定契約を締結することができる範囲が,「社外取締役」→「取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)」,「社外監査役」→「監査役」と拡大されたものである。

 会社法上,責任限定契約を締結することができる範囲が拡大されたものであって,改正法施行前からこの定款の定めを設けていた株式会社が,改正法施行後も従来どおり「社外取締役」や「社外監査役」に範囲を限定したままであってもよいのはもちろんである。

 また,改正法施行後に新たに会社法第427条第1項の定款の定めを設ける場合であっても,責任限定契約を締結することができる範囲を「社外取締役」や「社外監査役」とすることが,定款自治として認められるのは当然のことである。

 しかしながら,一部の登記所において,この定款の定めを登記申請する際に,「社外取締役」や「社外監査役」では受理することができないとされる事件が頻発しているようである。

 これは,明らかに,誤解に基づくものである。

 登記記録例(法務省民商第14号平成27年2月6日依命通知)「第6 経過措置 2 会社に対する責任の制限の登記」(23頁)の施行前後の記録例を見比べるとよいであろう。左の見出し部分は,職権で「社外取締役等」→「非業務執行取締役等」と置き換えられるが,本文は,施行後においても「社外取締役及び社外監査役」のままである。これを見ても,一目瞭然であろう。

 現場で数多混乱が生じているようであり,会社法第427条第1項の規定に関する理解の周知が望まれる。
コメント (1)

ブランド品を爆買いして一括返品

2015-07-29 15:24:54 | 国際事情
NEWSポストセブン
http://www.news-postseven.com/archives/20150724_336752.html

 ブランド品のコピーを作るために,棚ごと爆買い。分解して,解剖した後に,組み立て直して返品。しかも真正パーツと模造パーツを組み合わせて,真正もどきを複数製作するのだという。

 恐るべし。
コメント

吉本興業が,資本金の額を1億円に減資

2015-07-29 13:22:12 | 会社法(改正商法等)
讀賣新聞記事
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150729-OYT1T50000.html?from=ytop_main2

 現在の資本金の額125億円を1億円にするらしい。

 記事中,「取り崩した約124億円は資本準備金に回し」とあるが,「資本準備金」ではなく,「その他資本剰余金」の間違いであろう。

 法人住民税の均等割を減らす効果もあるのだから。

cf. 平成27年4月1日付け「平成27年税制改正による法人住民税の均等割に係る改正」

と思ったが,そうではないらしい。


○ 資本金の額の減少公告
 当社は、資本金の額を124億450万円減少し1億円とすることにいたしました。また、減少する資本金の額は全額資本準備金とすることといたしました。
 効力発生日は平成27年9月1日であり、株主総会の決議は平成27年6月23日に終了しております。
 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
 なお、最終貸借対照表の要旨は下記のとおりです。

≪決算公告は省略≫


 貸借対照表の要旨を見ると, 「その他資本剰余金」は,既に「171億7400万円」が計上されているので,「その他利益剰余金」のマイナスの補填はこれで十分であるからのようである。
コメント

京都市,民間住宅に居住する生活保護受給者への代理納付制度の導入

2015-07-29 09:08:46 | 私の京都
民間住宅に居住する生活保護受給者への代理納付制度の導入 by 京都市
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000176661.html

 表立った公表はされていないようであるが,京都市も,平成27年度から制度を導入しているようである。

 代理納付制度とは,生活保護受給世帯が入居している民間の賃貸住宅の家賃を,京都市が生活保護受給世帯に代わって,賃貸人に対して納付するもの。
コメント

「会社法定款事例集(第3版)」

2015-07-28 21:47:18 | 会社法(改正商法等)
拙編著「会社法定款事例集(第3版)」(日本加除出版)
http://www.kajo.co.jp/book/40306000003.html

 好評を博している「会社法定款事例集」の平成26年改正会社法に対応した改訂版。

 8月6日頃,書店に並ぶ予定です。お薦め。
コメント

「平成26年改正会社法商業登記 理論・実務と書式」

2015-07-28 19:16:24 | 会社法(改正商法等)
日本司法書士会連合会商業登記・企業法務推進委員会編「平成26年改正会社法商業登記 理論・実務と書式」(弁護士会館ブックセンター出版部(LABO))
http://www.amazon.co.jp/dp/4904497228/ref=cm_sw_r_tw_dp_a.IFvb040P772


 刊行されて未だ1か月。早くも増刷が決定したそうです。初刷が控え目とはいえ,出足好調。
コメント (2)

本人確認証明書と職務上請求用紙の使用の可否

2015-07-27 10:38:03 | 会社法(改正商法等)
 公的な見解が示されているわけではないが,私見は,次のとおりである。

Q.会社の代表者から,同人以外の者の取締役の就任の登記に関して,本人確認証明書の取得を依頼された場合,職務上請求用紙を使用して取得してもよいか?

A.商業登記規則第61条第5項の本人確認証明書が要求される趣旨としては,被選任者の実在性の証明及び就任承諾の真意の確認の二つの意味を有する。したがって,会社の代表者からの依頼で,同人以外の者の住民票の写し等の本人確認証明書を職務上請求用紙を使用して取得することは,不適切である。仮に手続を代行するとすれば,取締役に就任する者から別途委任状の交付を受けて,手続を行うべきである。

cf. 平成22年11月3日付け「取締役の就任承諾と株主総会議事録の記載の援用」

平成27年4月16日付け「商業登記規則第61条第5項書面に関するQ&A」
コメント

商業登記における旧姓併記

2015-07-27 10:03:06 | 会社法(改正商法等)
 平成27年2月27日施行の改正商業登記規則により認められるようになった,いわゆる婚姻前の氏の記録の制度であるが,いろいろなパターンが想定され得る。

 例えば,

1.A山花子は,婚姻によって氏を改め,B山花子となった。
2.B山花子は,その後離婚したが,民法第767条第2項の届出によって,B山花子と称した。
3.B山花子は,その後婚姻によって氏を改め,C山花子となった。
4.C山花子は,○○株式会社の取締役に就任した。

という場合である。同じような事実関係においても,

(1)業務上「A山花子」を使用し続けていた者が,取締役に昇進した。
(2)業務上「B山花子」を使用し続けていた者が,取締役に昇進した。

ということがあり得る。

 今回の改正の趣旨である「女性が輝く社会づくり」ということからすれば,取締役に就任した者(戸籍上の氏名が「C山花子」)について,「A山」「B山」のいずれについても婚姻前の氏であるとして,その記録の届出を認めるべきであろう。

 とすると,

1.A山花子は,婚姻によって氏を改め,B山花子となった。
2.B山花子は,その後離婚したが,民法第767条第2項の届出によって,B山花子と称した。
3.B山花子は,○○株式会社の取締役に就任した。

というケースにおいても,取締役に就任した者(戸籍上の氏名が「B山花子」)について,「A山」を婚姻前の氏であるとして,その記録の届出を認めるべきであろう。

 仄聞するところによれば,後者のケースで,「B山花子(A山花子)」の併記が認められた事例(本省了解)があるということである。

 ユーザー・フレンドリーな取扱いとして歓迎されよう。
コメント

神田秀樹「会社法入門 新版」

2015-07-27 09:28:02 | 会社法(改正商法等)
神田秀樹「会社法入門 新版」(岩波新書)
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1507/sin_k838.html

 第5章「会社法のゆくえ」は,読んでおくとよいと思います。
コメント

法律のことで気軽に相談したい・・・そんな窓口ってあります?

2015-07-25 11:09:04 | 司法書士(改正不動産登記法等)
あるよ。
コメント (1)

東芝第三者委員会報告書は,「せいぜい30点」

2015-07-24 19:02:06 | 会社法(改正商法等)
日経BPオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/072300045/

 手厳しいですね。
コメント

商業法人申請事件の8割方は補正?

2015-07-24 08:34:01 | 会社法(改正商法等)
法務局の業務に関するQ&A
http://blog.livedoor.jp/houmu4180/archives/52209652.html

「体感的に、申請事件の8割方は補正があるような気がしています」

 過去にも御紹介したことがあるが,法務局の職員の方が開設しているらしいブログである。

 単純に,本人申請を約40%とみて全件補正と考えても,司法書士による代理申請の約3分の2は補正・・・。

 これはいくら何でも多過ぎであるし,「本人申請のうち約80%は補正」という趣旨なのであろうと考えたい。

 とまれ,事件処理が遅延気味であることからすれば,推して知るべしである。
コメント

不適切な郵便切手管理についてのお詫び(東京地方裁判所)

2015-07-23 09:42:38 | いろいろ
不適切な郵便切手管理についてのお詫び by 東京地方裁判所
http://www.courts.go.jp/tokyo/vcms_lf/07212015.pdf

讀賣新聞記事
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150721-OYT1T50137.html

 現今のところ,着服等の報道はなく,「保管したままになっていた」ということであるが・・。
コメント

成年後見人が,成年被後見人の推定相続人である兄弟姉妹に係る戸籍謄本等の請求をすることの可否

2015-07-21 18:10:48 | 家事事件(成年後見等)
 戸籍時報2015年6月号(日本加除出版)に,実務相談「成年後見人である司法書士から,成年被後見人の生存中に,同人の推定相続人である兄弟姉妹に係る戸籍謄本等の請求があった場合について」が掲載されている。
http://www.kajo.co.jp/magazine/index.php?action=magazineshow&code=31001003506&magazine_no=1

 筆者は,東京法務局民事行政部戸籍課岡田智辰氏。

 「可」とする解説である。要旨は,以下のとおり。

○ 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法
「成年被後見人○○の推定相続人を特定するため戸籍の記載事項を確認する」

○ その利用を必要とする事由
「成年被後見人死亡後の後見の計算(民法870条)や相続人への財産の引渡しを速やかに行うために推定相続人をあらかじめ把握しておく必要がある」

という場合には,成年被後見人である司法書士が,成年被後見人の法定代理人として,戸籍謄本等の第三者請求を行うというケースであり,成年後見人は,成年被後見人に係る財産を管理する権限を有しているので,斯かる調査を行うことは,一般的には,正当な理由があると考えられ,本件の請求をすることができるものと考えられる。

 実務に与える影響は大きいものと思われる。

 詳細は,上記戸籍時報の解説を御覧ください。
コメント

重要な業務執行に関する解釈指針

2015-07-20 11:05:08 | 会社法(改正商法等)
「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/

 政府は,上記において,取締役会の決議を要する「重要な業務執行」に関する解釈指針を作成し,公表する方針を示している。

 とまれ,各社の個別具体的事情による部分が大きいので,画一的な基準を設けることは困難であり,社外取締役を一定数選任する等,ガバナンスが適切に機能しているか否か等によることになりそうである。


コーポレート・ガバナンスの強化
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai2_3jp.pdf
※ 43頁以下

○ 中長期的な企業価値を向上させるため、会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの策定といった近年の制度整備等を踏まえ、コーポレートガバナンスの実践を後押しする環境整備を行うことが重要である。このため、以下の点に関する会社法の解釈指針(具体的な事例集を含む。)を作成し、公表する。

・ 取締役会の監督が実効性の高いものとなるよう、取締役会に上程することが求められる事項の範囲、社外取締役が行った場合に社外性を失う「業務執行」の範囲等について
・ 経営陣が適切なリスクテイクを行うことができるよう、会社補償(役員が損害賠償責任を追及された場合に、会社が当該損害賠償責任額や争訟費用を補償する制度)について 等

○ あわせて、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう金銭でなく株式による報酬、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整備等を図る。
 さらに、経営経験者が異業種の社外取締役に就任すること等によりそれまでに培ってきた知識・経験を幅広く活用できるよう、国内外の具体的事例の収集・普及促進を通じて、独立社外取締役となる人材の確保を推進する。
コメント (1)