司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

担保権抹消登記の登記義務者の委任状の押印は,印影を印刷したものでよい?

2024-04-26 16:40:18 | 不動産登記法その他
 コメント欄御指摘のとおり,既に,「独立行政法人住宅金融支援機構が発行する不動産登記申請関係書類への押印の取扱いについて(依命通知)」〔平成21年11月2日付法務省民二第26411号〕があるとのこと。

 ん~,忘れてました。


「三菱UFJローンビジネス株式会社及びダイヤモンド信用保証株式会社が発行する担保権の登記の抹消に係る委任状への押印の取扱いについて(通知)」(令和6年1月24日付け法務省民二第57号法務省民事局民事第二課長通知)が発出されている。


「三菱UFJ ローンビジネス株式会社ならびにダイヤモンド信用保証株式会社が発行する不動産登記申請関係書類への押印の取扱いについて(照会)」

「三菱UFJ ローンビジネス株式会社(以下 「MULB」 という。) ならびにダイヤモンド信用保証株式会社(以下「DHC」という。)(以下両社を総称して 「弊社」という。)の業務に係る不動産登記事務につきましては、平素より格別の御指導、御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、不動産登記申請を行う場合に必要な書類には登記権利者(権利承継者を含む。)又は登記義務者の代表者印の押印が必要ですが、 弊社が保有する債権は2023年10月末現在で約74万件 (MULB 約 68万件、 DHC 約6万件)あり、 また、 そのうち担保権抹消登記だけでも年間約5万件 (MULB 約4万件、 DHC 約1万件)という膨大な量となるため、登記関係書類すべてに押印を行うのは事務手続上および体力上困難を極めるところです。
 つきましては、原則として、 弊社らが作成する不動産の担保権抹消登記のための委任状につきましては、 代表者印の押印に代えて、当該代表者印の印影を弊社らがそれぞれ業務上使用する電子計算機に登録し、この印影を当該担保権抹消登記用委任状に印刷したものを、貴管下法務局又は地方法務局に提出させていただく取扱いとして差し支えないか照会します。
 なお、差し支えない場合は、その旨を貴管下法務局及び地方法務局登記官に対して周知いただきますよう併せて依頼します。」

という照会に対して,

「貴見のとおり取り扱われて差し支えない。この旨法務局及び地方法務局に通知した。」旨の回答がされたようである。

 はて?

 現行法においては,抵当権等の抹消の登記義務者についても,登記済証が添付される場合,又は登記識別情報が提供される場合には,委任状に「署名」すれば,当該委任状への押印は不要である(規則第49条第1項第2号,第47条第3号参照)。

cf. 平成22年4月9日付け「不動産登記の申請において,押印を要しない場合」

 全ての委任状に「記名押印」したり,「署名」したりするのは,体力上困難を極める?

 本件のような取扱いを許容するぐらいなら,実印の押印及び印鑑証明書の添付を要するもの以外は,押印義務を廃止したらどうか?

 担保権の抹消の登記は,軽く考えられがちであるが,担保権者の権利保全の観点からは,安易に抹消がされるべきではなく,重要なステップが踏まれるべきものである。

 当然に,全ての金融機関や保証会社の担保権の抹消登記についても同様の取扱いがされるものではないようであるが,順次拡大されるのであろうし,委任状の偽造等の事故が起きないこと祈りたい(登記識別情報が提供されているから問題ないという問題ではないはずである。)。

 そういえば,15年くらい前に,保証会社の委任状で,こっそり印影が印刷されたものが出回ったことがあり,その際は,法務局から当然ダメ出しが出て,鎮静化したのであるが,今回は,お墨付きが出てしまった・・・。
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登記簿の附属書類閲覧のデジタル化

2024-04-23 09:15:30 | 不動産登記法その他
官報
https://kanpou.npb.go.jp/20240422/20240422g00100/20240422g001000003f.html

「不動産登記規則等の一部を改正する省令」(令和6年法務省令第32号)が,昨日(4月22日)公布された。

 登記簿の附属書類閲覧のデジタル化(登記簿の附属書類又は登記申請書等の閲覧について,現在は登記官の面前でのみ閲覧をすることができるとされているところ,ウェブ会議システムを利用した非対面での閲覧も可能とする。)等に関する改正である。

 不動産登記規則第202条第3項,商業登記規則第32条第2項が新設された。以下については,準則,通達等に規定が置かれるものと思われる。

・ 請求人は、窓口又は郵送で登記申請書等の閲覧請求を行う。
・ 登記官は、ウェブ会議により請求人と面談して請求人の本人確認を行い、本人確認ができた場合には、端末のカメラを用いてウェブ会議の画面上に登記申請書等を映出し、請求人に閲覧させる。
・ 請求人は閲覧に際して、登記官の指示の下、録画等を行うことができる。


 施行期日は,令和6年6月24日(一部を除く。)である。
 
cf. 不動産登記規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=300080308&Mode=1

【改正後】
不動産登記規則
 (閲覧の方法)
第202条 地図等又は登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。第三項において同じ。)の面前でさせるものとする。
2 【略】
3 登記官は、法第百二十一条第三項又は第四項の規定による登記簿の附属書類の閲覧をさせる場合において、請求人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び請求人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって閲覧をさせることができる。

商業登記規則
 (閲覧)
第32条 登記簿の附属書類の閲覧は、登記官(その指定する職員を含む。次項において同じ。)の面前でさせなければならない。
2 登記官は、申請人から別段の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、電子計算機を使用して登記官及び申請人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によつて閲覧をさせることができる。
3 【略】
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所有権の登記名義人による法人識別事項(会社法人等番号等)の申出について

2024-04-15 18:07:20 | 不動産登記法その他
所有権の登記名義人による法人識別事項(会社法人等番号等)の申出について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00610.html

〇 法人識別事項を証する情報についての補足
「申出人が会社法人等番号を有する法人である場合において、現在の会社法人等番号によって、所有権の登記がされた日(その後に登記名義人の名称又は住所についての変更の登記がされている場合はその登記がされた日。以下「所有権の登記等がされた日」といいます。)以降の商業登記簿上の商号・本店の変更(移転)の経緯を登記所において確認することができないときは、その経緯を証する閉鎖事項証明書等を提供する必要があります。

 閉鎖事項証明書等の提供の要否は、各法人の商号・本店の変更の経緯や所有権の登記等がされた日等によって異なりますが、所有権の登記等がされた日が平成24年5月21日(外国会社にあっては平成27年3月2日)以降であれば、一般的に、閉鎖事項証明書等の提供は不要となります。

※ 平成24年5月20日(外国会社にあっては平成27年3月1日)以前の法人の登記においては、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合には、会社法人等番号が変更されていました。この変更前の会社法人等番号が記録された登記記録の確認が必要な場合においては、これを確認することができる閉鎖事項証明書等を提供する必要があります。」


 「会社法人等番号」を登記事項とする点については,かつて問題提起をしていたことが,実現することとなった。

cf. 平成27年8月11日付け「不動産登記において「会社法人等番号」を登記事項として追加してはどうだろうか」
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不動産登記のローマ字併記~申請人が通称を使用する場合には適用されない?

2024-04-09 21:47:52 | 不動産登記法その他
金勇秀さん
https://twitter.com/kimyongsoo1226/status/1777266686250668531

「不動産登記のローマ字併記問題、申請人が通称の場には適用されないとのことが法務局職員向けには既に民事局から示されている模様。」(上掲ツイート)

 ええっ? 不動産登記規則第158条の31第1項柱書からは,そのような例外があるようには・・。

「申し出なければならない」ではなく,「申し出るものとする」と例外を認める余地がある文言であるのは,そういうことか・・。

 特別永住者等の在日外国人の方には,通称を使用している方も多いが,この場合には,例外を認めるということか。

 シンプルに考えれば,「本国名(カタカナ)+ローマ字併記に加えて,通称併記も認める」というのが合理的であると思うのであるが。


不動産登記規則
 (ローマ字氏名の併記)
第百五十八条の三十一 次の各号に掲げる登記を申請する場合において、当該各号に定める者が日本の国籍を有しない者であるときは、当該登記の申請人は、登記官に対し、当該各号に定める者の氏名の表音をローマ字で表示したもの(以下この款において「ローマ字氏名」という。)を申請情報の内容として、当該ローマ字氏名を登記記録に記録するよう申し出るものとする
 一 所有権の保存若しくは移転の登記、所有権の登記がない不動産について嘱託によりする所有権の処分の制限の登記、合体による登記等(法第四十九条第一項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。) 所有権の登記名義人となる者
 二 所有権の登記名義人の氏名についての変更の登記又は更正の登記 所有権の登記名義人
2 前項の規定による申出をする場合には、当該ローマ字氏名を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
3 第一項各号に定める者が同項各号に掲げる登記の電子申請をするに際し同項の規定による申出をする場合において、その者が第四十三条第一項第一号に掲げる電子証明書(登記官が当該ローマ字氏名を確認することができるものに限る。)を提供したときは、当該電子証明書の提供をもって、前項の市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
4 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、当該ローマ字氏名を登記記録に記録するものとする。
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「法定相続人情報」にアクセスしてきた相続人に対する情報提供

2024-04-09 17:43:50 | 不動産登記法その他
 長期相続登記等未了土地に関する所有者調査の成果として,「法定相続人情報」が作成され,当該土地の登記記録に「法定相続人情報の作成番号」が記録されている場合がある。

 たまたま当該土地の所有権の登記名義人の法定相続人の一人が,「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」と関係なく登記情報を取得して,「法定相続人情報の作成番号」が記録されていることに気付き,「法定相続人情報を出力した書面」の提供を申し出ることがあるであろう。

 このような場合に,登記所は,当該相続人に対して,同一の「法定相続人情報の作成番号」が記録されている全ての土地に関する情報(所在及び地番のみでもよい。)を提供して,相続登記の申請を促すべきではないだろうか。

 しかしながら,どうもそのような運用ではないようだ。

 せっかく「法定相続人情報」にアクセスしてきた相続人に対して,当該相続人等が漏れなく相続登記の申請をすることができるように,然るべき情報提供をすべきであろう。

 これは,同一の「法定相続人情報の作成番号」が記録されている複数の土地の一部について,「相続人申告登記」の申出がされた場合も同様である。

 なお,「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」には,最近は,同一の「法定相続人情報の作成番号」が記録されている全ての土地に関する情報が記載されているらしい。
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尼崎市「相続登記費用及び遺言書作成費用に係る補助金」

2024-04-09 16:43:58 | 不動産登記法その他
尼崎市
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/kurashi/sumai/1021364/1036465.html

 こちらは,空き家対策事業によるもので,「相続登記を行った者」「遺言書を作成した者」が対象である(その他,収入等の要件あり。)。

〇 補助対象事業
相続登記に要する費用
次に掲げるものとする。ただし、相続登記に課される登録免許税は除くものとする。
・ 登記事務に係る司法書士又は弁護士に支払う報酬及びその他の費用
・ 相続人の特定のために必要となる戸籍謄本等の発行に係る手数料及び通信料

遺言書の作成に要する費用 
次に掲げるものとする。
・ 公正証書作成に係る手数料
・ 司法書士、弁護士又は行政書士に支払う報酬及びその他の費用
・ 相続人となるべき者の特定のために必要となる戸籍謄本等の発行に係る手数料及び通信料

〇 補助金の額
補助対象経費の3分の2に相当する額(上限:10万円)
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相続登記補助金制度

2024-04-08 05:17:37 | 不動産登記法その他
北海道中川郡池田町
https://www.town.hokkaido-ikeda.lg.jp/kurashi/jutaku/joseijigyo/10994.html

 全国に拡がれ~,とは思わないけれど,すごいな。池田町では,それだけ相続登記の未登記物件が多いということか。

 釧路地方法務局帯広支局管轄なので,釧路司法書士会ですね。


「令和6年4月1日から相続登記が義務化されたことに伴い、池田町では下記のような相続登記補助金制度を設けていますので、是非ご活用ください。」

○  補助対象
 ●相続によって発生した町内に所有する土地・家屋で年度内に所有者になる場合
 ●相続による所有者移転・未登記家屋の登記にかかる手数料や委託料等の経費
 ●交付申請書提出日より前に支払った経費は除く

○ 補助金額
 事業対象経費の額の2分の1 限度額:5万円
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「法定相続情報証明制度」について

2024-04-03 14:13:35 | 不動産登記法その他
「法定相続情報証明制度」について
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html

「令和6年4月1日から,登記申請書の添付情報欄に法定相続情報番号を記載していただくことで,法定相続情報一覧図の写し(証明書の原本)の添付を省略できるようになりました。」
※ 法定相続情報番号とは,法定相続情報一覧図の写しの右肩部分に記載される,法定相続情報を識別するための番号をいいます。

 登記官の手間が増えて,事件処理が遅くなるだけなので,わざわざ添付省略にしなくてもよいと思うが。
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オンラインによる職権登記に係る申出の手続

2024-04-03 14:01:25 | 不動産登記法その他
オンラインによる職権登記に係る申出の手続
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html#a06

 相続人申出等,ローマ字氏名併記の申出及び旧氏併記の申出に基づいて職権登記がされる場合の手続である。

 これらの申出がオンラインによってされる場合,その申出情報及び代理権限証明情報には電子署名を要しない(不動産登記規則第158条の8第2項等を参照)。

 ただし,司法書士が委任を受け作成した相続人申出等情報等については,司法書士法施行規則第28条第2項の電子署名を要するものと解されている(相続人申告登記に関する質疑事項集 問6)。書面申出の場合も同様に職印の押印を要する(同 問7)。

 ん~,面妖な。電子署名がなくても,受理はされるということか。

cf. 職権登記に係る申出におけるいわゆる別送方式について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00555.html

 別送方式による場合に必要な手続は次のとおり。

(1)各添付情報につき書面を提出する方法によるか否かの別をも申出情報の内容としてください(添付情報の表示として「相続人であることを証する情報(別送)」とするなど。なお、申出情報の送信の段階で添付書面の提出方法が決まっている場合には、その区分により「持参」又は「送付」と記録してください。)。
(2)申出の受付の日から2日以内に添付書面を提出してください(初日は算入せず、かつ、期限が日曜、土曜、祝日等の行政機関の休日に当たるときは、その翌日が期限となります。送付の方法により提出する場合には、郵便事情等のやむを得ない事情がある場合を除き、期限内に登記所に到着するようにして送付してください。)。
(3) 添付書面を送付の方法により提出するときは、書留郵便等によって送付してください。また、添付書面を入れた封筒の表面に添付書面が在中している旨を明記してください。
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土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置

2024-04-02 14:05:37 | 不動産登記法その他
土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf

特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_02.pdf

 令和6年税制改正による租税特別措置の延長である。
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令和3年民法・不動産登記法改正関係のおまとめサイト

2024-04-01 12:03:42 | 不動産登記法その他
法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00501.html

 関係法令,通達等のおまとめサイトである。
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改正不動産登記法に対応した登記申請書の記載例

2024-03-30 04:23:57 | 不動産登記法その他
令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00589.html

 申請書の記載例等が公表されている。

1 法人を所有権の登記名義人とする登記の申請について
2 海外居住者(自然人・法人)を所有権の登記名義人とする登記の申請について
3 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請について
4 その他
・ 海外に住所を有する法人(外国法人)を所有権の登記名義人とする登記の申請について
・ 海外に住所を有する外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請について
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「改正不動産登記法(令和6年4月1日施行)について~相続登記の義務化等~」

2024-03-28 07:40:15 | 不動産登記法その他
 昨日(3月27日),京都司法書士会洛央支部会員研修会で,「改正不動産登記法(令和6年4月1日施行)について~相続登記の義務化等~」についてお話。

 「外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し」も含めて,「義務化以外」の部分も横断的に整理。通達等もほぼ出揃ったので,タイミングよしでした。

 なお,日司連研修総合ポータルの「研修ライブラリ」に,令和6年2月9日に開催された日司連研修会「令和3年不動産登記法改正について」(講師 森下宏輝法務省民事局付)が掲載されており,その資料がわかりやすくまとまっているので,目を通しておくとよいと思います。お話もわかりやすいです。
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租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の考え方

2024-03-28 06:33:39 | 不動産登記法その他
 一部につき第1項の適用がある場合においても,「課税標準たる不動産の価額」は影響を受けず,「160万円」であるというのがポイントである。

 理に適った考え方であるが,どうやら「登記研究901号」の質疑応答で,「第2項の適用がある」とするものがあったということで,今回の事務連絡に至ったようである。

cf. 「登記研究901号」の質疑応答に関する参考
https://ebina-asuhare.com/20230425-sozeitokubetusotihou/


○ 租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の考え方について(令和6年3月19日付け法務省民事局民事第二課赤間補佐官事務連絡)

 租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「租特法」という。)第84条の2の3第2項では「登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下」であるときは、相続による所有権の移転の登記を受ける場合の登録免許税を課さないと規定されているところ、先般、一部の法務局から、下記1の事例において同項の適用を受けられるのかとの問合せがありました。
 これについては、下記2のとおりと考えられますので、御留意願います。


1 被相続人Xが所有権登記名義人となっている固定資産税評価額が160万円の土地について、Xの死亡後に死亡したAと存命のBが法定相続分(2分の1)により相続登記をする。この場合の登録免許税について租特法第84条の2の3第2項が適用されるか。

2 登録免許税法(昭和42年法律第35号)第10条第1項では「不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による」と規定されているところ、ここでいう登記の時における不動産の価額とは、相続登記の申請時における不動産の固定資産税評価額であり、上記1の事例においては160万円が不動産の価額となります。また、この場合の登録免許税額は、160万円に税率千分の四を乗じた額(6,400円)となります。

 上記1の事例においては亡Aと存命のBとの法定相続分による相続登記であるところ、亡Aについては、租特法第84条の2の3第1項の「当該個人(死者)を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」に該当するため、登録免許税は課されないこととなります。そのため、上記の登録免許税額から亡Aが所有権の移転を受ける持分に相当する部分(2分の1部分)に係る登録免許税額を控除した額(3,200円)が、上記1の事例においてBが納付すべき登録免許税額となります。

 この場合において、存命のBが納付すべき登録免許税については、課税標準たる不動産の価額が80万円となるので、租特法第84条の2の3第2項の適用を受けられるのではないか、との問合せをいただいたところですが、上記のとおり、租特法第84条の2の3第1項の適用によって、亡Aが所有権の移転を受ける持分に相当する部分に係る登録免許税額が控除されるのみであり、登記の対象となる不動産の課税標準に影響を及ぼすものではなく、上記1の事例については措特法第84条の2の3第2項は適用されません。

 なお、「共有持分の相続に係る所有権の移転の登記の場合における租特法第84条の2の3第2項の適用の可否の判断をするに当たっての不動産の価額は、登録免許税法第10条第2項の持分の割合を乗じて計算した額とするのが相当」とした平成31年の質疑応答(登記研究851号139頁)がありますが、当該質疑応答は被相続人が共有持分を有する場合の事例であり、上記1の事例とは趣旨が異なるものですので、申し添えます。
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改正犯収法と不動産登記

2024-03-26 23:36:06 | 不動産登記法その他
 令和6年4月1日から改正犯収法が施行されるにあたって,「犯罪収益移転防止法に関するQ&A(暫定版)」(平成20年2月18日付け日司連発第1776号)をおさらいしておきましょう。

Q.抵当権付の宅地又は建物を買い受ける際、その抵当権の抹消登記申請の代理は、特定業務に該当しますか?
A.抵当権を抹消しなければ売買の決済には至らず、その所有権移転登記申請の前提として行われる抹消登記であっても、売買そのものに関して行うとまでは言えませんので、特定業務には該当しません。

Q.宅地又は建物を買い受けるための住宅ローンにかかる抵当権設定登記申請の代理は、特定業務に該当しますか?
A.買主が融資を受けなければ売買には至らず、売買による所有権移転登記申請の後件として行われる抵当権設定登記であっても、売買そのものに関して行うとまでは言えませんので、特定業務には該当しません。


 したがって,上記に関して,銀行や信用金庫等の実質的支配者については,問題にならない。
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