司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

改正相続法における預貯金債権についての仮分割の仮処分(新家事事件手続法第200条第3項)に関する経過措置

2019-06-30 18:01:04 | 民法改正
 いよいよ,明日(令和元年7月1日),改正相続法の原則施行期日を迎えますね。


 ところで,遺産分割前における預貯金債権の行使(新民法第909条の2)については,施行日前に開始した相続に関しても,新法が適用されるものとされている(改正附則第5条第1項)。


改正後の民法
 (遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

改正附則
 (遺産の分割前における預貯金債権の行使に関する経過措置)
第5条 新民法第909条の2の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に預貯金債権が行使されるときにも、適用する。
2 施行日から附則第1条第3号に定める日の前日までの間における新民法第909条の2の規定の適用については、同条中「預貯金債権のうち」とあるのは、「預貯金債権(預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権をいう。以下同じ。)のうち」とする。


 この点,預貯金債権についての仮分割の仮処分(新家事事件手続法第200条第3項)に関しては,特段の経過措置は設けられていなかったが・・。


改正後の家事事件手続法
 (遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
第200条 【略】
2 【略】
3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。
4 【略】

改正附則
 (家事事件手続法の一部改正に伴う経過措置)
第11条 第3条の規定による改正後の家事事件手続法(以下「新家事事件手続法」という。)第3条の11第4項の規定は、附則第1条第5号に掲げる規定の施行の日前にした特定の国の裁判所に特別の寄与に関する処分の審判事件(新家事事件手続法別表第二の十五の項の事項についての審判事件をいう。)の申立てをすることができる旨の合意については、適用しない。
2 施行日から第3号施行日の前日までの間における新家事事件手続法第200条第3項の規定の適用については、同項中「民法第466条の5第1項に規定する預貯金債権」とあるのは、「預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権」とする。


 しかし,法務省HPの経過措置に関する解説によると,「家事事件手続法第200条第3項の規律については,明文の規定はないが,当然に新法適用(法附則第2条の適用はない。)」と解されているようである。

cf. 経過措置について
http://www.moj.go.jp/content/001297949.pdf?fbclid=IwAR2OkvQ8ij9mOEQCjmAp_vwNtLXvE4gElA-VrvcccW906TjwYnZ4ctFj560

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

 ん~,附則第2条で,施行日前に開始した相続については「なお従前の例による」(旧法主義)ことを明らかにしながら,「明文の規定はないが,当然に新法適用」は苦しいように思われるが・・。

「一問一答」にもない論点であり,突然現れた感も・・。

 実務的には,新法適用が望ましいと考えられるので,歓迎すべきともいえるが。

 とまれ,実務上重要な点であるので,御留意のほどを。
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詐欺商法に利用されたバーチャルオフィスの契約に関して提供された本人確認書類提供者の責任

2019-06-27 15:04:37 | 会社法(改正商法等)
バーチャルオフィス契約・電話利用契約に関する本人確認書類提供者の責任 by あおい法律事務所
https://aoi-law.com/article/s_fund_27/

 詐欺商法に利用されたバーチャルオフィスの契約に関して提供された本人確認書類提供者の責任を認めた東京高裁平成28年1月27日判決の評釈である。

「近時,組織的詐欺商法においてはバーチャルオフィスやレンタル電話が利用され,加害組織の実態は表には出てこず,これに対する責任追及が極めて困難な状況にあるが,これに犯罪利用ツールを取得するに当たって必要な本人確認資料を安易に提供する者が後を絶たないという現状がこのような事態を深刻化させている。本人確認資料を提供した者の責任を追及する訴訟が,全国で少なくない件数提起されている所以である。」(上掲記事)

 というわけで,商業登記において,「本店」にバーチャルオフィスやコワーキングスペースを利用した登記がされないような仕組みが必要なのではないだろうか。
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起業の費用,いくら必要?

2019-06-27 10:49:31 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46491180U9A620C1XQD000/

「一般には起業経験は複数回あるものではなく、定款の作成、登記など煩雑な手続きなどの慣れない作業は大きな労力を必要とする・・・「法律の専門家の目でチェックしてもらう方がよい」と考えた・・・「司法書士は法律上のトラブルを未然に防ぐことを常に意識して業務を行っている」と話す。「会社設立時だけでなく、運営する中でも、司法書士は相談相手として力になれる」と、起業家が司法書士事務所と接点を持つことの利点を説明する。」(上掲記事)

ということですよね。

「お手軽に入力するだけで登記申請書ができちゃう」と謳うサービスが跋扈しつつある昨今であるが,起業家にとっての上記の観点を全く考えていないのである。
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民事法制をめぐる現状と課題~通常国会の閉幕を受けて

2019-06-26 03:17:56 | 民法改正
 通常国会が本日閉幕することを受けて,「民事法制の現状と課題」を再整理してみました。


1.2019年の通常国会で成立した法律
(1)民事執行法等の改正(令和元年法律第2号)
 施行期日は,公布の日(令和元年5月17日)から1年を超えない範囲内において政令で定める日である。

cf. 令和元年5月22日付け「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律について」


(2)戸籍法の改正
 原則施行期日は,「公布の日から起算して20日を経過した日」(令和元年6月20日)である。

cf. 戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)について by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html


(3)民法(特別養子縁組制度関係)の改正
 施行期日は,公布の日(令和元年6月14日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日である。

cf. 民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)(令和元年法律第34号)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00248.html


(4)変則型登記解消特例法の制定
 原則施行期日は,公布の日(令和元年5月24日)から6月以内の政令で定める日である。

cf. 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第15号)について
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000027.html


(5)「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年法律第37号)

 原則的な施行期日は,公布の日から起算して3月を経過した日(令和元年9月14日)である。

cf. 令和元年6月7日付け「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立



2.これから改正される法律関係
(1)民法・不動産登記法の改正
 現在,法制審議会で議論がされている。中間試案のパブコメを経て,来年秋の通常国会に改正法案が上程される方向である。

cf. 法制審議会民法・不動産登記法部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00300.html


(2)親子法制の見直し
 ちょうど法制審議会に諮問されたところである。

cf. 令和元年6月23日付け「民法(親子法制)の見直しに関する法制審議会への諮問」

嫡出推定制度を中心とした親子法制の在り方に関する研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/cyakusyutsusuitei


(3)会社法制(企業統治等関係)の見直し
 法制審議会から改正要綱が答申されたが,通常国会への上程が先送りとなっており,おそらく今年秋の臨時国会に上程されるものと思われる。

cf. 法制審議会-会社法制(企業統治等関係)部会
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00297.html


(4)民事裁判手続のIT化
 民事訴訟法の改正について,来年2月にも法制審議会に諮問される方向である。

cf.民事裁判手続等IT化研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/saiban-it


(5)担保法制の見直し
 動産譲渡及び債権譲渡を中心とした譲渡担保に関する法制の見直しに着手するようである。

cf. 動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会
https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/dou-tanpohousei


(6)商業登記法の改正
 印鑑届出の義務付けの廃止に関して,秋の臨時国会に改正法案が上程される方向であるといわれている。

「令和3年2月目途で、定款認証及び設立登記を含めた全手続のワンストップ化、設立登記における印鑑届出の任意化、一定の条件の下で全国での定款認証及び設立登記のオンライン同時申請を対象にした24時間以内に設立登記が完了する取組及び完全オンライン化による添付書類のペーパーレス化を開始する。この際、印鑑届出のオンライン化を検討する。」

cf. 令和元年6月5日付け「令和3年2月目途で,定款認証及び設立登記を含めた全手続のワンストップ化」
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「商業・法人登記申請手続」の新元号対応

2019-06-25 12:45:41 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記申請手続
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html

 とりあえず株式会社のみについて,新元号対応がされた(併せて微修正がされた?)ようである。

 とまれ,懇切丁寧な解説である。
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非上場企業の株式の評価,相続税で130億円の申告漏れ?

2019-06-25 08:55:53 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46489590U9A620C1CN8000/?n_cid=TPRN0011

 中央出版株式会社の創業者の死亡による相続税の申告にあたり,1株の価値を18円と算定して申告したところ,国税局は,1株の価値を55円と認定して,全体で130億円の申告漏れが指摘されたそうだ。現在も係争中。
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引き取り手のない不動産に関する問題への対応

2019-06-25 08:43:29 | 不動産登記法その他
財政制度等審議会第47回国有財産分科会(令和元年6月14日開催)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_national_property/proceedings_np/material/zaisana20190614.html

「引き取り手のない不動産に関する問題への対応」が検討されている。

cf. 令和元年6月14日付け「相続人がいない土地を国有化しやすくする制度の創設」

財政制度等審議会 国有財産分科会第4回ワーキングチーム(平成30年11月28日開催)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_national_property/proceedings_np/material/zaisana301128.html
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経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019

2019-06-25 08:37:11 | 空き家問題&所有者不明土地問題
令和元年第4回経済財政諮問会議・第29回未来投資会議合同会議
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0621/agenda.html

「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019」が閣議決定されている。

〇 自助・共助・公助の役割分担の見直し(55頁)
 休眠預金等や所有者不明土地など未活用資産をこれまでにない方法で利活用する取組を推進する。

〇 新しい時代に対応したまちづくり(64頁)
 空き家等の流通・利活用に向け、地方自治体・不動産団体等の先進的取組や活用・除却への支援、情報の充実等を促進するとともに、所有者不明土地等の解消や有効活用に向け、基本方針等に基づき、新しい法制度の円滑な施行を図るとともに、土地の適切な利用・管理の確保や地籍調査を円滑かつ迅速に進めるための措置、所有者不明土地の発生を予防するための仕組み、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み等について2020年までに必要な制度改正の実現を目指すなど、期限を区切って対策を推進する。あわせて、遺言書保管制度の円滑な運用に向けた取組を進めるほか、登記所備付地図の整備を推進するため、筆界特定制度の新たな活用策等についても検討を進める。
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民法(親子法制)の見直しに関する法制審議会への諮問

2019-06-23 12:35:35 | 民法改正
法制審議会第184回会議(令和元年6月20日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500034.html

諮問第108号
 児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて民法の懲戒権に関する規定等を見直すとともに、いわゆる無戸籍者の問題を解消する観点から民法の嫡出推定制度に関する規定等を見直す必要があると考えられるので、その要綱を示されたい。
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旅券(パスポート)の別名併記制度について

2019-06-21 18:24:10 | 国際事情
旅券(パスポート)の別名併記制度について by 外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/pss/page3_002789.html

「日本の旅券は,ICAO(国際民間航空機関)文書第9303号に準拠して作成され,旅券面の氏名は,戸籍に記載されている氏名を記載することとしています。ただし,旅券申請者からの申出を受け,外務大臣又は領事官が,公の機関が発行した書類等により戸籍に記載されている氏名以外の氏及び(又は)名を確認し,申請者の海外渡航や外国での生活等の便宜から特に必要と判断した場合に,戸籍に記載されている氏名に加えて併記を認めることがあります。この場合,戸籍上の氏名に続けて,括弧書きで氏及び(又は)名(注)が記載されます。」
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東京都議会,選択的夫婦別姓の法制化を求める請願を可決

2019-06-21 18:22:29 | 民法改正
弁護士ドットコム
https://www.bengo4.com/c_23/n_9781/

「同時に地方から国会に夫婦別姓を求める声を届けようと、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」などの呼びかけにより、地方議会に働きかける活動が広まっている。」(上掲記事)

 法改正につながるでしょうか?
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「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」第3回会議

2019-06-21 16:48:22 | 会社法(改正商法等)
令和元年6月17日(月),「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」第3回会議を開催しました。by 法務省
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00682.html

「成年年齢を引き下げる上では,消費者被害の拡大の防止施策や,若年者の自立を促す施策などの環境整備が必要であるとの指摘がされており,本連絡会議は,このような指摘を踏まえ,関係府省庁が連携し,政府全体として総合的括効果的な取組を推進することを目的とするものです。
 今回の会議では,若年者の消費者教育・消費者保護,若年者の自立支援,改正民法の周知等の施策に関する関係府省庁のこれまでの取組状況や,今後の目標が説明され,それらを反映した施策の工程表が改訂されるとともに,引き続き,関係府省庁が連携して,環境整備のための施策を着実に推し進めることが確認されました。」
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法務省企画官級ポスト(民事局民事第二課地図企画官)の公募

2019-06-21 13:33:33 | 不動産登記法その他
法務省企画官級ポスト(民事局民事第二課地図企画官)の公募
http://www.moj.go.jp/jinji/shomu/jinji05_00035.html

 重要なポストですが,公募するんですね。
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大分県司法書士会調停センター

2019-06-19 10:03:56 | 司法書士(改正不動産登記法等)
かいけつサポート
http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/jigyousya/ninsyou0165.html

 かいけつサポート第165号として 「大分県司法書士会」 が認証された。

 現在,159のかいけつサポートが活動しているようである。
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法制審議会民法・不動産登記法部会第4回会議

2019-06-19 10:00:33 | 民法改正
法制審議会民法・不動産登記法部会第4回会議(令和元年6月11日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900451.html

 第4回会議の部会資料等が公表されている。

「相隣関係規定等の見直し」について議論されたようである。
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