ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

断酒継続の科学

2016-12-02 07:38:32 | 病状
【要約】
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 ●  “意地でも” 最初の一杯(一口)を口にしない
 ●  抗酒薬(シアナマイド、ノックビン)や精神安定薬(ジアゼパム)の助けを借りて
   でも、なりふり構わず断酒を実践する

 ●  不規則でだらしない生活習慣を改め、自律的で規則正しい生活リズムに切り替える
 ●  遅発性の急性離脱後症候群(PAWS)について教育を受ける
 ●  飲酒時代の体験や断酒後に気づいた病状の変化を日付と共に記録しておく
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 「アルコール依存症は、決して意志が弱いから成ったのではありません。誰でも成り得る病気です。」
専門クリニックで耳にタコが出来るぐらい聞かされた言葉です。この言葉の “意志が弱い” の部分が私の闘争心に火を付けたようです。

 断酒を続けるためには意志の強さが不可欠です。
“意地でも” 最初の一杯(一口)を口にしない 」を貫き、SLIP(再飲酒)を防ぐのです。自分を甘やかしては未来はないと覚悟すべきです。

 断酒を始めた最初の段階では医療が有用です。
抗酒薬(シアナマイド、ノックビン)や精神安定薬(ジアゼパム)の助けを借りてでも、なりふり構わず断酒を実践するのみです。(ただし、ジアゼパムには依存性がありますから、早めに止めることをお勧めします。)意欲の回復にビタミンB1の点滴補充も欠かせません。そんな努力を重ねれば、必ずアルコールは完全に抜け切ります。アルコールが完全に抜け切れるまでは意志の強さの問題です。アルコールが完全に抜け切れたら、そのときは間違いなく抜けたと自覚できるものです。飲まないでいることが自然で楽と思えるようになります。

 断酒に3年と言われていますが、それに要する期間は人それぞれだろうと思います。私の場合は、アルコールが完全に抜け切れるまで10ヵ月かかりました。35年以上酒漬けだったわけですから、10ヵ月というのは意外に短いと思えるぐらいです。アルコールが完全に抜けた今だからこそエラそうに言えるのですが・・・。

 もう一つアルコール専門医療が必要な訳は、アルコール毒性について行う教育にあります。特に、
遅発性の離脱症状 ― 急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)についての教育が大切だと考えています。

 アルコールが切れるとすぐに現れる急性離脱症状は比較的よく知られていますが、その後しばらくして現れるPAWSについては、ドライドランクを始めほとんど知られていないのが実態です。断酒で不安に駆られがちな患者にとって、しばらく経ってどんな遅発性離脱症状(障害)に襲われるのか知っておくことは重要です。敵の正体を十分に知っておけば、それだけ不安にならずに済みます。それには教育を受けるしかありません。

 教育には最適な時期というものがあります。断酒を始めて3ヵ月以内は、体調が回復途中で心身とも不安定な時期です。特に、脳はまだアルコールから醒め切っていません。私が受けた専門クリニックの教育プログラムでは、この時期、臓器障害の病態説明と共に、アルコールがもたらす精神的障害についても多くの時間を割いていました。ある意味、飲酒時代には知らずに経験していたアルコールによる精神的障害の概論であり、精神に及ぼす飲酒の怖さを教育する入門編としては止むを得ないものだったと思います。しかし残念ながら、この時期に教えられた精神的障害の知識はPAWS対策にほとんど役に立ちませんでした。

 継続断酒3~6ヵ月頃から、多くの患者仲間が “先行き不安” あるいは “先取り不安” を時に口にします。頭がモヤモヤしたままの状態に得体の知れない不安が湧いて来ることを意味しているようです。私はこれもPAWSの一つ、情動障害の現れと考えています。断酒を始めたのはいいけれど、この先どんな障害が待ち受けているのか分からない、そのことを象徴的に表現したものと考えています。敵の正体が分からなければ不安が募るのももっともです。

 PAWSには最も危険な情動障害の他、記憶障害、想起障害、思考プロセス障害、認知障害などがあります。そのどれもが日常生活でストレスを増幅させ、再飲酒へと向かわせる危険が大きい障害ばかりです。体調が落ち着いて来る断酒3~6ヵ月目ぐらいから、知らず知らずに現れてくるのがPAWSです。

 PAWSについての教育は、症状が出始めるこの頃からが相応しく、より具体的な内容に多くの時間を当てるべきだと思います。そうして少しでも患者の不安を和らげてほしいものです。私がPAWSを具体的に知ったのは継続断酒10ヵ月過ぎのことです。“言語化” がPAWSの障害の克服に有用だと知ったのも同時期のことでした。もっと早めに敵の正体とその対策を知っていたなら、違った対処の仕方があったのかもしれません。

 医療に頼るばかりでなく、自分の意志でできることがあります。
日々の行動を自律的に変えることです。行動の7割は習慣化したもので、意志によるものは3割と言われています。その3割を徹底的に鍛え上げれば自律した行動に変えられます。後のことは身体に染みついた行動パターンが引き継いでくれます。習慣化という行動パターンは強力です。これにお任せすれば、一切ご心配には及びません。

 まず、不規則でだらしない生活習慣を改め、自律的で規則正しい生活リズムに切り替えることをお勧めします。これがどんな薬よりもよく効きます。手始めに早寝早起きから始めるのが良いと思います。自律神経のバランスの回復には毎日一定以上の距離を歩くことが最も効くそうです。教育プログラム付きの毎日通院は、自律的生活リズムの導入の意味でも理に適ったものでした。

 自助会ミーティングに出席することも行動を変えるのに打って付けです。徐々に行動の幅を拡げられれば、それが “空白の時間” 対策にもなります。不義理をするのも是非お勧めしたい行動(?)です。飲酒環境に近づかないよう距離を置くことがこれに当たります。すなわち、飲み友達から離れること、行きつけの飲み屋や酒売り場に近づかないこと、結婚披露宴や葬式への出席を辞退すること、時節柄忘年会が御法度なのは絶対です。

 もう一つだけ習慣付けてもらいたい行動があります。病状の記録を残すことです。忘れない内に、
飲酒時代の体験や断酒後に気づいた病状の変化を日付と共に記録しておくことをお勧めします。教育プログラムのお復習いになるばかりでなく、アルコールで傷めつけられた脳のリハビリ “言語化” に最適です。この作業をこつこつ続ければ、PAWSの障害にも早めに気づけ、心構えも変わって来ると思います。

 以上が私のお勧めする「断酒継続の科学」です。継続断酒3年の間、専門クリニックの医療システムや、仲間の体験談と私の経験を分析した結果を基に導き出された方法です。科学的とは再現性があることを意味します。「△の科学」と謳っている新興宗教とは違います。私がお勧めするこれらの方法は、高い再現性があるものと自負しております。断酒に秘策などありません。是非とも「断酒継続の科学」をお試しください。


飲まないでいることが自然と思えるようになったなら、次の「回復の科学」の過程にお進みください。
底着きは2度ある ― 再び“精神的底着き”について」(2016.9.16投稿)も合わせてご参照ください。



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