信号機のある交差点は歩道・車道を問わず吸い殻のポイ捨てが多いところです。国道の交差点を渡りきった歩道側でそんなポイ捨てゴミを拾っていると、マスク姿のオバさんが声をかけてきました。私は首にタオルを巻き、鮮やかグリーンの作業用ベストを羽織っていました。
「あっち側の道に衣類らしいのが落ちていたよ!」と車道側の方向を指差しています。車の騒音もあってちょっと聞き取れなかったので、
「えっ、なに? どこですか?」と聞き返してみると、オバさんは顔からマスクを外して
「衣類のようなの。あっち方向の二番目・・・。」と向かい側を再び指差しました。マスクを外した顔を見れば私より大分年上でした。向こう側の歩道なら、ついさっき見回ったばかりで何も落ちてないはずですが・・・。
「二番目? ひょっとして車道ですか?」どうやら私をプロの清掃員と思い込んでいたようです。
「車道なら清掃車じゃないとできませんよ。国交省の管轄ですかね。私がやっているのは歩道だけで、生憎ですが車道は無理です。」
「そうぉ? せっかくだから教えてあげた方がいいと思って・・・。」
オバさんは、せっかくの善意が無にされたとでも言いたげな、幾分誇らしげだった顔が気分を削がれた表情に変わって行きました。
心ある人であれば、道でゴミが目障りなら自分で拾って始末するとか、自分の手に余るようなら役所に連絡するとか、ゴミに始末を付けてやるのが筋なのです。年寄りならそれぐらいの心配りは当たり前のはずなのに、呆れたことに昨今の年寄りは見て見ぬ振りを決め込むばかり。そんな人任せの風潮が嘆かわしくてゴミ拾いを続けている私なのですが・・・。
件のオバさんは、清掃員に教えてあげた(?)つもりなのですからまだマシなのかもしれません。私の方と言えば、清掃員姿が板に付いてきたのでしょうか、本職並に見られたことに少し複雑な気持ちなのでした。
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