とあるコンビニでのことです。最近は店内にゴミ箱を置くコンビニが多いのに、この店では店頭にゴミ箱が置いてあり、道で拾ったゴミ屑を捨てようと立ち寄ったのです。ゴミ箱にゴミ屑を捨て、さて一服しようと少し離れた所にある灰皿の方に目をやりました。
灰皿の側には一人の老人が立っていました。歳は私より大分年上のようでした。首をうつむけ上体も前屈みになり始めたので何か変だと思った瞬間、そのまま顔から地面に倒れてしまいました。すべてはスローモション映像のようでした。
駆けよって助け起こそうとしたのですが、ぐったりした身体は一人では動かせません。額から出血しているのも見えました。アルコール臭は全くありませんでした。
これはイカンと思い、店内にいた店員を呼びました。女性店員が出て来て2人がかりでやっと助け起こすことができました。そのときやっと意識が戻ったようでした。
「救急車を呼んでください!」私がそう言ったので、もう1人の店員も来てくれて3人がかりで店内につれて行きました。そして私の方は、店外に残って一服することにしました。
しばらく経って、女性店員が私のところにやって来ました。
「救急車に断られてしまいました。電話しているとき、あの老人が “大丈夫” と大声で言ったんです。そしたら本人がそう言うのなら出動できませんて、・・・」
「えっ、そんなんで大丈夫なのかなぁ?」
「血が出ているのでトイレに行って鏡で見るよう勧めたんですが、・・・そのあとでも “大丈夫” を繰り返すばかりなんですよ。」
そこに件の老人が店から出て来ました。額の出血は一応止まっているようでした。
「どうもありがとうございました。“大丈夫” です。“大丈夫” ですから。」
そう言うと店頭に駐車していた車に乗り込み、何事もなかったかのように運転して去って行きました。車には枯葉マークが貼ってありました。私たちは、ただ呆然と見送るだけでした。
老人からアルコール臭がしていたのなら血管迷走神経反射による失神ということで、私にも何度か経験があります。そのアルコール臭がなかったということは、あるいは久々に吸ったタバコが効き過ぎての脳貧血だったのかもしれません。
いずれにせよあれは明らかに一過性脳虚血発作(TIA)であって、脳梗塞が近々起こる前兆であったことに間違いありません。本来は、直ぐにでもCTなど脳の精密検査を受けるべきだったのです。
それにしてもこんなケースの “大丈夫” は曲者です。客観的に見て危険が迫っている状況でもつい自分は “大丈夫” と思いがちですが、これを “正常性バイアス” と言うそうです。きっと彼の老人もこの “正常性バイアス” のワナに嵌まったのでしょう。
“正常性バイアス”、災害時に避難が遅れるケースの多くはこれが原因だと言います。彼の老人は、果たして無事に帰れたんでしょうか? やはりこんなときに大事なことは、周りの忠告を素直に受け容れることですね。
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これはイカンと思い、店内にいた店員を呼びました。女性店員が出て来て2人がかりでやっと助け起こすことができました。そのときやっと意識が戻ったようでした。
「救急車を呼んでください!」私がそう言ったので、もう1人の店員も来てくれて3人がかりで店内につれて行きました。そして私の方は、店外に残って一服することにしました。
しばらく経って、女性店員が私のところにやって来ました。
「救急車に断られてしまいました。電話しているとき、あの老人が “大丈夫” と大声で言ったんです。そしたら本人がそう言うのなら出動できませんて、・・・」
「えっ、そんなんで大丈夫なのかなぁ?」
「血が出ているのでトイレに行って鏡で見るよう勧めたんですが、・・・そのあとでも “大丈夫” を繰り返すばかりなんですよ。」
そこに件の老人が店から出て来ました。額の出血は一応止まっているようでした。
「どうもありがとうございました。“大丈夫” です。“大丈夫” ですから。」
そう言うと店頭に駐車していた車に乗り込み、何事もなかったかのように運転して去って行きました。車には枯葉マークが貼ってありました。私たちは、ただ呆然と見送るだけでした。
老人からアルコール臭がしていたのなら血管迷走神経反射による失神ということで、私にも何度か経験があります。そのアルコール臭がなかったということは、あるいは久々に吸ったタバコが効き過ぎての脳貧血だったのかもしれません。
いずれにせよあれは明らかに一過性脳虚血発作(TIA)であって、脳梗塞が近々起こる前兆であったことに間違いありません。本来は、直ぐにでもCTなど脳の精密検査を受けるべきだったのです。
それにしてもこんなケースの “大丈夫” は曲者です。客観的に見て危険が迫っている状況でもつい自分は “大丈夫” と思いがちですが、これを “正常性バイアス” と言うそうです。きっと彼の老人もこの “正常性バイアス” のワナに嵌まったのでしょう。
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