以前書いたものを読み返してみて、正真正銘これは欠陥だらけの悪文だと思いました。書いた当時、悪文を書いているという自覚は全くありませんでした。在職中、メディカル・ライティングの業務に就いていた自負もあり、正直ショックを受けました。
私は断酒継続中のアルコール依存症者として、その時々の事実関係と、どのような症状であったのかを記録として残そうと思い立ち、このブログを始めました。出来るだけ正確に症状を記録することが目的で、読者に心情を共感してもらうことが目的ではありません。文芸作品のような技巧を駆使した描写をするつもりはありませんし、そのような技巧を持ち合わせてもいません。つまり、あくまでも “ありのまま” の記述を心掛けているつもりです。
私の書いたものが、経験した事柄の記録であるばかりでなく、文章そのものが記述時の思考プロセスを記録したものでもあることに気付きました。普通、読み返してみて何か変と違和感があれば手直しするのが当たり前ですし、当然、投稿当時も何度か読み返していたはずです。ここに挙げた文例は、そんな読み返しと推敲の手順を踏んでいたにもかかわらず、網の目をすり抜けていた事例です。
当時は、文章にどこか違和感があっても、どう手を入れたらよいか分からなかったのだと思います。注意力が散漫だったせいばかりでなく、思考プロセスにも問題があったのではないかと考えました。“思考プロセス障害” の参考例となれば投稿した甲斐があるというものです。
***********************************************************************************
【事例1】
トップ・バッターは断酒10ヵ月後の最初の投稿からです。(「ハイテンションになると危ない!」より)
「AAからの帰り道、一時的にひどく遣る瀬ない気持ち(やるせなさ:何かに向けたいけど何処に向けたらいいか分からない不穏な気分)に襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」
↓
「AAからの帰り道、一時的に胸がひどくザワザワした不吉で不穏な気持ちに襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」
不意に襲ってきた病的気分は、“胸騒ぎ” の感覚に近いながら、格段にひどく激しいものでした。その原因が何なのか、“めまい” に襲われたときにも似て意識をどこに向ければいいのか分からない心境でした。目当てとする的確な言葉がどうしても浮かばなかったので、上記の下線部分の表現、“遣る瀬ない” になってしまいました。“遣る瀬ない” が最も近いと感じたのです。ほぼ9~10ヵ月後になって、やっと浮かんで来た言葉が「不穏」、次いで「不吉」でした。焦がれた言葉にやっと出会えた気持ちでした。“胸騒ぎ” に近いのですから、もっと早く浮かんできてもよさそうなものです。参考のため浮かんで来た言葉の変遷を以下に示しておきます。
言葉の変遷:
○胸がひどくザワザワ→(原因あるいは由来を探るために)どこかに(意識を)向けたい
けど何処に向けたらいいか分からない→遣る瀬ない;(本来、“遣り場のない” が正し
い)
○極端にひどい胸騒ぎ(軽いときは空回り)→不穏→不吉で不穏
【事例2】
次の事例は、断酒10ヵ月後の2回目の投稿からです。(「私の底着き体験・断酒の原点」より)
「飲酒欲求が優しそうに変装した慢心や油断は思わぬ時に顔を現わしてきます。いつ何時現れてくるのか分かりません。」
↓
「飲酒欲求は慢心や油断の陰に隠れ、優しそうな姿に変装して思わぬ時に現われてくるそうです。いつ何時現れてくるのか分かりません。」
この時は、“慢心”、“油断”、“優しい” という言葉がランダムに浮かんで来たものと思われます。次いで “変装” を思い付いたのでしょう。これらの言葉に引き摺られた結果、上記の下線部分の表現になりました。一見文芸作品風の表現になってしまい、決して論理的な表現とは言えません。投稿時にも違和感があったとは思いますが、適切な表現が浮かびませんでした。元の文でもニュアンスは伝わるものの、柄でもないのでより説明文風に改めました。
【事例3】
3番目の事例は、断酒11ヵ月後の7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)
「入試直前の気の緩みから来るえもいわれぬ不安と、入試前夜に緊張で眠られなかったのが祟り、・・・」
↓
「気の緩みとその後ろめたさから、入試直前にはえもいわれぬ不安と緊張が募っていました。その挙句に(の)入試前夜、一睡もできなかったのが祟り、・・・」
“気の緩み” と “不安”、“緊張” との関係が曖昧になっています。元の文でもニュアンスは伝わるとは思いますが、これらの言葉の因果関係を交通整理して当時の心境を表現し直しました。助詞が “に” なのか “の” なのかについても、今でも迷ったりしています。
【事例4】
4番目の事例は、断酒11ヵ月後の同じ7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)
「坐ったまま思いっきり漕いでブランコから飛び離れ、危険防止のためにブランコを囲った鉄製の柵を飛び越えるという遊びもしました。」
↓
「坐ったままブランコを思いっきり漕いで勢いをつけ、そのまま飛び出して危険防止用の囲いの柵を飛び越えるという遊びもしました。」
受験当時の行動の順にそのまま記述した部分です。肝腎要の言葉 “勢い” が思い付かず、それを欠いているため未熟な印象となっています。さらに、後半の “柵” の修飾語が述語を含む節であることから、全体的に諄い印象となっています。投稿時どこか違和感があったのですが、肝腎要の言葉が欠けていることに気付かないままに投稿していました。“勢いをつけ” を補い、修飾語の節の部分を簡潔な句に改めてみました。やっと、思いの丈が伝わるようになりました。
***********************************************************************************
いかがでしたでしょうか? 思いを表現できないでいるヒゲジイのもどかしさをご理解いただけましたか? 想起障害は今でも悩みの種です。私のブログを読んで違和感を覚えた際は、元々文才がない上に想起障害も抱えているのだから・・・と、大目に見てやってください。
次回に続きます。
「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
http://blog.goo.ne.jp/19510204/e/9c6d1fc08d197902061b8e0ee33adb6a
ランキングに参加中。クリックして順位アップに応援お願いします!
にほんブログ村 アルコール依存症
↓ ↓
私は断酒継続中のアルコール依存症者として、その時々の事実関係と、どのような症状であったのかを記録として残そうと思い立ち、このブログを始めました。出来るだけ正確に症状を記録することが目的で、読者に心情を共感してもらうことが目的ではありません。文芸作品のような技巧を駆使した描写をするつもりはありませんし、そのような技巧を持ち合わせてもいません。つまり、あくまでも “ありのまま” の記述を心掛けているつもりです。
私の書いたものが、経験した事柄の記録であるばかりでなく、文章そのものが記述時の思考プロセスを記録したものでもあることに気付きました。普通、読み返してみて何か変と違和感があれば手直しするのが当たり前ですし、当然、投稿当時も何度か読み返していたはずです。ここに挙げた文例は、そんな読み返しと推敲の手順を踏んでいたにもかかわらず、網の目をすり抜けていた事例です。
当時は、文章にどこか違和感があっても、どう手を入れたらよいか分からなかったのだと思います。注意力が散漫だったせいばかりでなく、思考プロセスにも問題があったのではないかと考えました。“思考プロセス障害” の参考例となれば投稿した甲斐があるというものです。
***********************************************************************************
【事例1】
トップ・バッターは断酒10ヵ月後の最初の投稿からです。(「ハイテンションになると危ない!」より)
「AAからの帰り道、一時的にひどく遣る瀬ない気持ち(やるせなさ:何かに向けたいけど何処に向けたらいいか分からない不穏な気分)に襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」
↓
「AAからの帰り道、一時的に胸がひどくザワザワした不吉で不穏な気持ちに襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」
不意に襲ってきた病的気分は、“胸騒ぎ” の感覚に近いながら、格段にひどく激しいものでした。その原因が何なのか、“めまい” に襲われたときにも似て意識をどこに向ければいいのか分からない心境でした。目当てとする的確な言葉がどうしても浮かばなかったので、上記の下線部分の表現、“遣る瀬ない” になってしまいました。“遣る瀬ない” が最も近いと感じたのです。ほぼ9~10ヵ月後になって、やっと浮かんで来た言葉が「不穏」、次いで「不吉」でした。焦がれた言葉にやっと出会えた気持ちでした。“胸騒ぎ” に近いのですから、もっと早く浮かんできてもよさそうなものです。参考のため浮かんで来た言葉の変遷を以下に示しておきます。
言葉の変遷:
○胸がひどくザワザワ→(原因あるいは由来を探るために)どこかに(意識を)向けたい
けど何処に向けたらいいか分からない→遣る瀬ない;(本来、“遣り場のない” が正し
い)
○極端にひどい胸騒ぎ(軽いときは空回り)→不穏→不吉で不穏
【事例2】
次の事例は、断酒10ヵ月後の2回目の投稿からです。(「私の底着き体験・断酒の原点」より)
「飲酒欲求が優しそうに変装した慢心や油断は思わぬ時に顔を現わしてきます。いつ何時現れてくるのか分かりません。」
↓
「飲酒欲求は慢心や油断の陰に隠れ、優しそうな姿に変装して思わぬ時に現われてくるそうです。いつ何時現れてくるのか分かりません。」
この時は、“慢心”、“油断”、“優しい” という言葉がランダムに浮かんで来たものと思われます。次いで “変装” を思い付いたのでしょう。これらの言葉に引き摺られた結果、上記の下線部分の表現になりました。一見文芸作品風の表現になってしまい、決して論理的な表現とは言えません。投稿時にも違和感があったとは思いますが、適切な表現が浮かびませんでした。元の文でもニュアンスは伝わるものの、柄でもないのでより説明文風に改めました。
【事例3】
3番目の事例は、断酒11ヵ月後の7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)
「入試直前の気の緩みから来るえもいわれぬ不安と、入試前夜に緊張で眠られなかったのが祟り、・・・」
↓
「気の緩みとその後ろめたさから、入試直前にはえもいわれぬ不安と緊張が募っていました。その挙句に(の)入試前夜、一睡もできなかったのが祟り、・・・」
“気の緩み” と “不安”、“緊張” との関係が曖昧になっています。元の文でもニュアンスは伝わるとは思いますが、これらの言葉の因果関係を交通整理して当時の心境を表現し直しました。助詞が “に” なのか “の” なのかについても、今でも迷ったりしています。
【事例4】
4番目の事例は、断酒11ヵ月後の同じ7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)
「坐ったまま思いっきり漕いでブランコから飛び離れ、危険防止のためにブランコを囲った鉄製の柵を飛び越えるという遊びもしました。」
↓
「坐ったままブランコを思いっきり漕いで勢いをつけ、そのまま飛び出して危険防止用の囲いの柵を飛び越えるという遊びもしました。」
受験当時の行動の順にそのまま記述した部分です。肝腎要の言葉 “勢い” が思い付かず、それを欠いているため未熟な印象となっています。さらに、後半の “柵” の修飾語が述語を含む節であることから、全体的に諄い印象となっています。投稿時どこか違和感があったのですが、肝腎要の言葉が欠けていることに気付かないままに投稿していました。“勢いをつけ” を補い、修飾語の節の部分を簡潔な句に改めてみました。やっと、思いの丈が伝わるようになりました。
***********************************************************************************
いかがでしたでしょうか? 思いを表現できないでいるヒゲジイのもどかしさをご理解いただけましたか? 想起障害は今でも悩みの種です。私のブログを読んで違和感を覚えた際は、元々文才がない上に想起障害も抱えているのだから・・・と、大目に見てやってください。
次回に続きます。
「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
http://blog.goo.ne.jp/19510204/e/9c6d1fc08d197902061b8e0ee33adb6a
ランキングに参加中。クリックして順位アップに応援お願いします!
にほんブログ村 アルコール依存症
↓ ↓
読者登録をしてまだ月日が経ってないので、ヒゲジイ(失礼)さんのブログを全部読んだわけではありませんが……
ヒゲジイさんはアル症で入院はなさいましたか?
断酒5年目、私と同じですね。
最初、一般病院を強制退院させられたとき、
私の場合も精神病院への入院を勧められました。
ところが、アルコール病棟はどこも満杯で、
やむを得ず外来だけの専門クリニックとなりました。
今振り返ると、毎日欠かさず外来通院したことが
回復に最も効果的だったと考えています。
その意味で、私は幸運でした。
歩けなくなり、ウンコ漏らして病院変えて入院ですね。
そこは良かった。「入院」というシステムも良かったんでしょうが、病院の有りようが良かったのかな……
もちろん家族の理解が1番の薬になってます♬
生活リズムの立て直しと “空白の時間” 対策を
治療方針の二本柱としています。
ですから診察などは形式的なもので、
むしろ教育プログラムの方に大きく時間を割いています。
毎日決まった時間に通院したお陰で、
半年ほどで見事に生活リズムが戻り、体調も回復しました。
ただし、これだけでは本格的な回復には不十分で、
やはり同じ思いを共有できる断酒中のアル症仲間との交流が
どうしても欠かせないようです。
それで私も断酒6ヵ月目からAAのミーティングに参加し始めました。
以来、昼間だけですが週2回のミーティングを欠かしていません。
家族の協力も大事ですね。
ウチでは無関心を装うぐらいの適度な距離をおいてくれています。
ひとつ訂正ですが、
私の断酒は満5年が過ぎ、現在6年目に入っています。
このブログ投稿も回復プロセスに効いているようですよ。
退院してから、いわゆる「飲酒欲求」が全く起きません。
どういうわけか同窓会、飲み会に行っても、全く飲む気にならないのです。
入院する前の惨状……あのおぞましい日々がストッパーになってるのか……
退院し、ちょっと経ってバイクに10年ぶりに復活したっていうのもあるかもしれません。
ただ「治った」なんてことは言いません、あり得ません。
諸先輩方のスリップエピソード、2年目の壁、3年目、5年目…そして10年目。散々聞きました(その『あぁ、たまらなく飲みたいぞぉの壁』も未経験。訪れませんでした) 。絶対に油断はしません。
頑張りましょう。
私も全く同じです。
私の場合は、“空白の時間” が一番の難問と思っています。
気が向いたらいつでもやれることがある、
これが “空白の時間” の特効薬だと考えています。
この意味で、貴兄のバイクと私のゴミ拾いは共通しているのかもしれません。
自助グループに馴染むのには時間がかかりますし、
自助グループを居場所と思い込むのも危険です。
ナラティブセラピーというのは初耳ですが、
言語化の実践道場として有意義なところです。
あくまでも “キョウイクとキョウヨウ“ の一環として
気楽に参加されてはいかがでしょう。