断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)。その一つ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。どんな時期にどんな箇所で躓いているかに関心があると思い、(その1)と同様に時間の経過に沿った掲載としました。
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【事例5】
5番目の事例は、断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。仕事で医師と面談するときの心構えを記述した部分です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その3)会社で生き残るための最初の本格的な仕事は・・・?」より)
「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。簡潔な話し方で要領よく相手の勘所を押さえなければなりません。全神経をそれに集中します。これに成功した後は10分ほどの時間で肝心の依頼ごとを誠実に伝え了解してもらいます。運がよければ30分~1時間ほどさらに時間をもらい、親しい医師の近況や、難しい医学的な不明点の相談、他社の治験薬の開発進行状況など様々な情報をじっくり聞き出すのです。やや前屈みになりながら出来るだけ和やかにゆったりと構える、その一方で一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めて行う会話、これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」
↓
「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。相手の勘所を押さえることに全神経を集中し、相手に合わせた話し方で簡潔に訪問目的を伝えます。これに成功した後は、10分ほどの時間で肝心の依頼事項を正確に伝え了解してもらいます。運がよければさらに30分~1時間ほど時間をもらえることもあります。そんなときは、親しい医師仲間の近況を報告したり、他社の治験薬の開発状況を聞き出したり、医学的に難しくて分からない点をじっくり相談したりするのです。やや前屈みの姿勢でゆったりと和やかに構えながら、そのくせ一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めての会話です。これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」
記述当時は、“相手医師のご機嫌”、“簡潔”、“誠実”、“前屈み”、“ゆったり”といったイメージでそれぞれの言葉がまずランダムに浮かんで来たものと思われます。これらの言葉は、医師と面談の際の心構えとしてとても大切なものです。読み返してみると、これらの言葉の繋がりを十分吟味しないままに、“話しことば”の順番で記述し始めた印象が強いです。
“話しことば”の順番とは、最初に最も伝えたい言葉から切り出すことを言います。ここでは“簡潔な話し方”がそれに当たります。“誠実”を使用したのは場違いですし、後半の「親しい医師の近況や・・・」の世間話部分では端折った表現が先立ち、微妙な動作や心情が表現できていません。
言葉同士の繋がりを“書きことば”のルール通りに整理し、特に後半の世間話の内容を分かりやすく説明するように改めました。“話しことば”を“書きことば”のルールへ変換するのが不十分だった事例です。
【事例6】
6番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。“思い入れ”による言葉に引き摺られた例3つをまとめて挙げてみました。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その5)成功は悪魔の囁き?」より)
「新剤型薬LAの承認・発売が表彰され、臨時の社長賞を貰いました。」
↓
「新剤型薬LAの承認・発売が、臨時の社長賞として表彰されました。」
“社長賞”と“表彰”の言葉の組み合わせ方に戸惑った末の1文です。結局、翻訳調のようなぎごちない表現になっています。どう書くのが最も相応しいのでしょうか?
「まさに業務の延長戦です。」
↓
「まさに正真正銘の正規の業務、気楽な(?)サービス残業などではありません。」
残業ではなく“延長”がまず浮かび、“業務の延長”のように引き摺られてしまいました。散々やらされた“サービス残業”の苦い思い出から、この言葉を是非とも活かそうと、敢えて諄い表現にしてみました。
「夢のような好物件に36倍の抽選で見事に当たったのです」
↓
「夢のような好物件に競争率36倍の抽選で見事に当たったのです」
“抽選”だけで十分伝わると思い込み、肝腎要の“競争率”を失念した想起障害の例と思います。当然ながら“競争率”を補いました。
【事例7】
7番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。これも言葉に引き摺られた例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「先行する治験成績と原案のセットを・・・中央委員会に諮り」
↓
「先行する治験成績と原案とをセットで・・・中央委員会に諮り」
“セット”の言葉に囚われ、その拘りから不自然な表現に気付いていません。“セットを”と“セットで”では、語感にこんなに違いが出るものかと知らされました。これも助詞の使い方に戸惑ったことが原因でしょうか?
【事例8】
8番目の事例は、事例7と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。簡潔な表現が思い付かず、説明的で諄い表現になった例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「このような医師の方々の信頼を得るためには研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料)は正確でかつ要点が分かり易く、概ね2時間という短時間で検討を済ますことが出来るように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料作成に如何に注力しなければならないかがお分かりいただけると思います。」
↓
「このような医師の方々の信頼を得るためには、研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料や治験成績)は正確かつ要点が分かり易く、検討に要する時間は概ね2時間以内となるように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料を目標に、いかに工夫をこらして作成したかがお分かりいただけると思います。」
前半の“要点が分かり易く”は“簡潔で”の方が良いのかもしれません。その後に続く部分は翻訳調の修飾語のため回り諄い表現になっています。後半は、“資料作成”と“注力”の言葉に引き摺られ、説明すべき言葉を端折った表現になっています。下線部分のように改めてみました。
【事例9】
9番目の事例は、事例7、8と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「業界情報と現状とをシッカリ把握した上で大胆に改革・拡充しようという気概など・・・」
↓
「業界情報や臨床開発現場への関心が薄く、大胆に改革しようという気概など・・・」
“現場”に近似の言葉として“現状”を代用したため、続く言葉が“把握した”と一人歩きしてしまいました。結果的に説明不足で、実態のないニュアンスだけの表現となっています。“改革”に続いて、改革の中味となる“拡充”という言葉を畳み掛けており、必要以上に諄い表現になっています。
【事例10】
10番目の事例は、断酒を始めて満1年の時期のものです。これも目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その7)嫉妬は酒の肴のツマのような・・・?」より)
「大規模なデータが相手では、簡潔で明瞭な資料提示の要求にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」
↓
「大規模なデータが相手では、一目瞭然で簡潔な資料の要請にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」
“一目瞭然で”に近似な言葉“明瞭な”が先ず浮かび、これを代用したため翻訳調の表現となったと思われます。以下のように言葉の変遷がありました。
言葉の変遷:(言いたい本音は)一目で分かるようにしなければならない→“簡潔”、
“明瞭”、“提示”、“要求”のイメージ→ “一目瞭然で簡潔な”、“要請”
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次回も続きます。
「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
http://blog.goo.ne.jp/19510204/e/9c6d1fc08d197902061b8e0ee33adb6a
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【事例5】
5番目の事例は、断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。仕事で医師と面談するときの心構えを記述した部分です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その3)会社で生き残るための最初の本格的な仕事は・・・?」より)
「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。簡潔な話し方で要領よく相手の勘所を押さえなければなりません。全神経をそれに集中します。これに成功した後は10分ほどの時間で肝心の依頼ごとを誠実に伝え了解してもらいます。運がよければ30分~1時間ほどさらに時間をもらい、親しい医師の近況や、難しい医学的な不明点の相談、他社の治験薬の開発進行状況など様々な情報をじっくり聞き出すのです。やや前屈みになりながら出来るだけ和やかにゆったりと構える、その一方で一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めて行う会話、これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」
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「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。相手の勘所を押さえることに全神経を集中し、相手に合わせた話し方で簡潔に訪問目的を伝えます。これに成功した後は、10分ほどの時間で肝心の依頼事項を正確に伝え了解してもらいます。運がよければさらに30分~1時間ほど時間をもらえることもあります。そんなときは、親しい医師仲間の近況を報告したり、他社の治験薬の開発状況を聞き出したり、医学的に難しくて分からない点をじっくり相談したりするのです。やや前屈みの姿勢でゆったりと和やかに構えながら、そのくせ一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めての会話です。これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」
記述当時は、“相手医師のご機嫌”、“簡潔”、“誠実”、“前屈み”、“ゆったり”といったイメージでそれぞれの言葉がまずランダムに浮かんで来たものと思われます。これらの言葉は、医師と面談の際の心構えとしてとても大切なものです。読み返してみると、これらの言葉の繋がりを十分吟味しないままに、“話しことば”の順番で記述し始めた印象が強いです。
“話しことば”の順番とは、最初に最も伝えたい言葉から切り出すことを言います。ここでは“簡潔な話し方”がそれに当たります。“誠実”を使用したのは場違いですし、後半の「親しい医師の近況や・・・」の世間話部分では端折った表現が先立ち、微妙な動作や心情が表現できていません。
言葉同士の繋がりを“書きことば”のルール通りに整理し、特に後半の世間話の内容を分かりやすく説明するように改めました。“話しことば”を“書きことば”のルールへ変換するのが不十分だった事例です。
【事例6】
6番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。“思い入れ”による言葉に引き摺られた例3つをまとめて挙げてみました。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その5)成功は悪魔の囁き?」より)
「新剤型薬LAの承認・発売が表彰され、臨時の社長賞を貰いました。」
↓
「新剤型薬LAの承認・発売が、臨時の社長賞として表彰されました。」
“社長賞”と“表彰”の言葉の組み合わせ方に戸惑った末の1文です。結局、翻訳調のようなぎごちない表現になっています。どう書くのが最も相応しいのでしょうか?
「まさに業務の延長戦です。」
↓
「まさに正真正銘の正規の業務、気楽な(?)サービス残業などではありません。」
残業ではなく“延長”がまず浮かび、“業務の延長”のように引き摺られてしまいました。散々やらされた“サービス残業”の苦い思い出から、この言葉を是非とも活かそうと、敢えて諄い表現にしてみました。
「夢のような好物件に36倍の抽選で見事に当たったのです」
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「夢のような好物件に競争率36倍の抽選で見事に当たったのです」
“抽選”だけで十分伝わると思い込み、肝腎要の“競争率”を失念した想起障害の例と思います。当然ながら“競争率”を補いました。
【事例7】
7番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。これも言葉に引き摺られた例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「先行する治験成績と原案のセットを・・・中央委員会に諮り」
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「先行する治験成績と原案とをセットで・・・中央委員会に諮り」
“セット”の言葉に囚われ、その拘りから不自然な表現に気付いていません。“セットを”と“セットで”では、語感にこんなに違いが出るものかと知らされました。これも助詞の使い方に戸惑ったことが原因でしょうか?
【事例8】
8番目の事例は、事例7と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。簡潔な表現が思い付かず、説明的で諄い表現になった例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「このような医師の方々の信頼を得るためには研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料)は正確でかつ要点が分かり易く、概ね2時間という短時間で検討を済ますことが出来るように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料作成に如何に注力しなければならないかがお分かりいただけると思います。」
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「このような医師の方々の信頼を得るためには、研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料や治験成績)は正確かつ要点が分かり易く、検討に要する時間は概ね2時間以内となるように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料を目標に、いかに工夫をこらして作成したかがお分かりいただけると思います。」
前半の“要点が分かり易く”は“簡潔で”の方が良いのかもしれません。その後に続く部分は翻訳調の修飾語のため回り諄い表現になっています。後半は、“資料作成”と“注力”の言葉に引き摺られ、説明すべき言葉を端折った表現になっています。下線部分のように改めてみました。
【事例9】
9番目の事例は、事例7、8と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)
「業界情報と現状とをシッカリ把握した上で大胆に改革・拡充しようという気概など・・・」
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「業界情報や臨床開発現場への関心が薄く、大胆に改革しようという気概など・・・」
“現場”に近似の言葉として“現状”を代用したため、続く言葉が“把握した”と一人歩きしてしまいました。結果的に説明不足で、実態のないニュアンスだけの表現となっています。“改革”に続いて、改革の中味となる“拡充”という言葉を畳み掛けており、必要以上に諄い表現になっています。
【事例10】
10番目の事例は、断酒を始めて満1年の時期のものです。これも目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その7)嫉妬は酒の肴のツマのような・・・?」より)
「大規模なデータが相手では、簡潔で明瞭な資料提示の要求にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」
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「大規模なデータが相手では、一目瞭然で簡潔な資料の要請にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」
“一目瞭然で”に近似な言葉“明瞭な”が先ず浮かび、これを代用したため翻訳調の表現となったと思われます。以下のように言葉の変遷がありました。
言葉の変遷:(言いたい本音は)一目で分かるようにしなければならない→“簡潔”、
“明瞭”、“提示”、“要求”のイメージ→ “一目瞭然で簡潔な”、“要請”
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次回も続きます。
「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
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私も「病院へ行くと、病気になる。」というブログを書いています。
よく、酒飲みの話は諄いと言いますが、話した端から忘れている所為なのかもしれません。記憶機能へのアルコール毒性はハッキリしているようです。
リズム感に乏しい文章の言い訳でもありますが、回復期のアル症の病状記録として読んでもらえるとありがたいと思います。
貴台のブログも拝読しました。
私の父もアルコール中毒でして、一緒にとても苦労しました。
親子の葛藤という深層心理が原因かもしれません。
幼少期に受けた心のトラウマでしょうか。
同じ道を辿らず、よく踏ん張られておられると思います。