抵当権の効力の及ぶ範囲(1)従物 |
① 本件石灯籠および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり、本件植木および取り外しの困難な庭石等は右宅地の構成部分であるが、右従物は本件根抵当権設定当時右宅地の常用のためこれに付属せしめられていたものである。 ↓ ② そして、本件宅地の根抵当権の効力は、右構成部分に及ぶことはもちろん、右従物にも及び、この場合右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもつて、その構成部分たる右物件についてはもちろん、抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり、370条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である。 ↓ ③ 従ってXは、根抵当権により右物件等を独立の動産として抵当権の効力外に逸出するのを防止するため、右物件の譲渡または引渡を妨げる権利を有するから、執行債権者たるYに対し、右物件等についての強制執行の排除を求めることができる。 |
最判昭和44年3月28日 百選84事件
・本判決は、抵当権設定当時の従物について抵当権の効力が及ぶことを確認したものである。しかし、370条を援用して従物への効力の対抗要件は抵当権設定登記によって具備されるとした点に意義がある。但し、本判決は従物に対する効力がいかなる条項によって基礎づけられるかについては明言していないので注意(おそらく370条を根拠にしていると思われる)。
→ 従物に対する抵当権の「効力の対抗要件」が抵当権設定登記によって具備されるというのは、それが抵当権の「本来的効力の中にある」ということであり、このことは、従物に対する効力も抵当権の効力の範囲に関する条文で律せられることも意味するからである。