秋田県立近代美術館に行ってきました。
この美術館は、秋田自動車道の横手ICからすぐの場所にあるのですが、私はもっぱら横手ICは通過するばかりで、これまで一度も行ったことがありませんでした。
というのも、コレクションにそれほど魅力を感じなかったこと、クルマで行ける夏休みのタイミングで観たいと思うような企画展が開催されていなかったこと、といったことが背景にありました。
こんな私が、高速料金が安いとは言え、横手まで足を伸ばすことになったきっかけは、昨夜TVで見たローカル・ニュースです。
ほぉ~、中村征夫さんの写真展をやっているんだ、行ってみようか、ということで、母親を誘ってみたところ、間髪を入れずに「行ってみたい」。
そんなわけで、やってきました、秋田県立近代美術館
この写真の奥に見える直方体を組み合わせたような巨大な建物が、美術館です。
どうしてこんな形なのでしょうか? 展示室は5階と6階の2フロアだけで、1~4階の「柱」が何のために存在するのか、訳がわかりません。
調べてみると、この美術館を含む「秋田ふるさと村」が竣工したのは1994年春のこと。ということは、この一帯が企画されたのはバブル期だったわけで、なるほどなぁ…です。
それでも、美術館の前には、直に触れて楽しめる彫刻がいくつも並んでいて、なかなかの雰囲気が漂っています。
たとえば、バリー・フラナガンのこの作品。
バリー・フラナガンの作品は、今年2月に仙台に行った際、宮城県美術館でも観ましたっけねぇ。
また、黒川晃彦さんのこの作品。
このSaxを吹くおっさんの像は、違うポーズの像が呉の美術館通りにありました。ほら。
この他にも、「素敵なんだけど、ほかの美術館でも同じシリーズの作品を観たなぁ」という作品がいくつかありました。
そんな秋田県立近代美術館の前庭で観た作品の中で、一番気に入ったのが、これです。
安藤泉さんの「好奇心」と題する鉄板で作られたキリンです。
遊びに来ていた子どもが、このキリンの足を叩いたら、パ~ンパ~ン
と金属音が響いておりました。
んで、これが前庭の全景です。
さて、肝心の「中村征夫写真展 命めぐる海」。
いやぁ~、きれいだった、すごかった
、みごとだった
、そして、たのしかった
被写体になったさかなたちにとって、中村さんは「突然現れた得体のしれない生物」ではなく、旧知の友人に思えたのではないでしょうか。
被写体とカメラマンとの間に、信頼感がなければ、あんな写真は撮れないのではなかろうか、と思うような作品の連続でした。
特に、「海中顔面博覧会」 ほとんどのさかなは無防備な素顔をカメラに向けていて(ウツボを除く)、「おや、。こんにちは。ご機嫌はいかが?」とでも言っているようです。
一方で、ボロボロの体になりながら産卵するテカギイカとか、クラゲを食べようとするイソギンチャクとか、オニカサゴに襲いかかるウツボとか、東京湾の底に沈む空き缶に棲みついたハゼとか、生きることの過酷さも写真から伝わってきます。
そして思うのは、人間の勝手で海を壊してはならないということ。
ほんと、楽しい写真展でした。多くの人に、観て、楽しんで、考えてもらいたいものです。
最後におまけ。
帰りに遅い昼食をとった「道の駅」の立体看板です。
この辺りは、後三年の役(1087年)の古戦場なんだそうで、源義家が雁が飛び立つのを見て、敵が潜んでいることを察したという故事があります。
これが本当の出来事なのか、伝説なのかわかりませんが、兵法書の古典「孫子」にこんなくだりがあります。
鳥起者、伏也、獣駭者、覆也
(鳥が飛びたつのは伏兵である。
獣が驚き走るのは奇襲である)
[孫子 行軍篇 六]
と、まぁ、いろいろ感じ、勉強した一日でした。
【追記】秋田県立近代美術館の建物について修正しました。(09/08/16 19:25)