「FY16も埼玉県立近代美術館の展示は絶好調 (中編)」のつづき、先週末の埼玉県立近代美術館(MOMAS)見聞録の完結編です。
「御八歳」にして写真
に魅入られたジャック=アンリ・ラルティーグですが、
60年以上の間、外部に写真を発表したのは数えるほど、自分の楽しみのために写真を撮っていたラルティーグがアメリカ、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で写真家としてデビューを飾ったのは、69歳のときでした。(図録より)
そして、
アメリカで初めて紹介されたその写真を見た人々が驚嘆したのは、輝かしい、しかし既に失われてしまった20世紀前半のフランス、そして、確かに生きていた人々の姿でした。
だそうです。
二種類あるこの展覧会のフライヤー
からも引用
いたしますと、
幸せな瞬間がすぐに目の前から消え去ってしまうのを幼いころから恐れていたラルティーグは、そうした瞬間を残していけるカメラという新しい“魔法の機械”に夢中になり、生活のあらゆることを毎日写真におさめました。なかでも、スポーツやジャンプ、自動車、飛行機といった様々な動きをとらえることへのひときわ高い関心や、心霊写真のような写真ならではの表現へのあくなき探究心は、ユニークで鋭い視点の作品を生みだしました。また、家族や友人、恋人の幸せに満ちたすがたを愛情深くとらえた作品も多くのこしています。
とあります。
展覧会のタイトルそのままに、家族や友人、恋人の「幸せ」に満ちた「瞬間」をとらえた写真を観るのは、「御同慶の至り」というか、こちらもニコニコしてしまいます。
で、私のお気に入りになった作品をご紹介
まずは、一押ししたいこちらの作品
「ラルティーグの家族と自動車『イスパノ・スイザ』 ルルー通り、パリ 1922年」という作品です。
写っている自動車「イスパノ・スイザ」は、現代の感覚からすればクラシック・カーですが、この写真が撮影された当時は、最新式の高級車
その辺の時代感覚がグシャグシャになる感じが、めまいのように頭の中をかき混ぜる
のも、ある意味、快感でした。
人や動物が空中に止まっている「瞬間」だけでなく、こんなスナップ写真も、時代の「瞬間」を切り出しているんじゃなかろうか…
そういえば、上に引用した図録のからの文章に、
輝かしい、しかし既に失われてしまった20世紀前半のフランス、そして、確かに生きていた人々の姿
というのがありましたっけ…
例えば、「101匹わんちゃん」のクルエラを連想してしまう、こちら
「『アンナ・ラ・プラドヴィナ』」と呼ばれたアルレット・プレヴォ、連れている犬はシシとゴゴ」という長いタイトルのこの写真は、1911年1月15日にパリの「ブローニュの森通り」で撮影されたのだとか。
もう一丁、
1911年6月23日にパリのオートゥイユ競馬場で撮影されたそうですが、「マイ・フェア・レディ」の一場面みたい
ちなみに、時代としてはほぼ一致しています。
そして最後に紹介するのは、カラー写真。
妙に惹かれてしまいました。
数人目の奥様、フロレットを撮った作品です。
うん、うん、良い…
ところで、「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」を観ていて、ふと頭に浮かんだのは、植田正治さんの作品群でした(こちらの記事をご参照方)。
基本的に「アマチュア・カメラマン」を通したこと、家族を撮り続けたこと、スナップではなく意図を持った写真を撮ったこと、そして、またまたMISIA「Escape」のジャケ写を連想したことなど、なんとなく共通点が多いような気がしたのです。
そして、「ラルティーグ」「植田正治」でググってみると、、、あれま
、2013年11月~14年1月にかけて、東京都写真美術館で「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ-」が開催されていました
知りませんでした…
それはともかく、企画展「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」は5月22日まで開催されていますから、もう一度行ってみたいと思っています。