東京新聞の社説(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041402000144.html)とカラム「筆洗」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013041402000143.html)。
東京新聞は本当にまともな新聞だ。読売や産経は置いといて、朝日なんて足元にも及ばない。「日本の食卓を地道に支えてきた農家が、ばっさり切り捨てられる恐れがあるTPP参加だ。「国益」という言葉は、早のみ込みするには、余りに危険なシロモノだ」、全く同感。FECこそ。
『●「「希望はTPP。」なのか」『週刊金曜日』(2013年4月12日、939号)』
『●TPP、米韓FTAという先達に学ばないと・・・・・・』
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041402000144.html】
【社説】
週のはじめに考える 攻めの農業と言う前に
2013年4月14日
環太平洋連携協定(TPP)の不安をかき消すように“攻めの農業”が叫ばれます。だがその前に、農家と消費者が守るべきものがあるはずです。
愛知県半田市の北村真也さん(24)は、一年間の研修期間を終えて、間もなく地元で就農します。
サラリーマン家庭の長男。祖母が家庭菜園で育てた野菜を食べて「おいしい」と感じたのをきっかけに、市内の農業高校から東京農大へ進み、有機野菜を育てるサークル「緑の家」に所属した。四年生になる前に一年間、南ドイツの農場で働いて、「大丈夫、農業で食べていこう」と決めた。
◆必要とされる存在に
研修に通うのは、同じ愛知県の江南市にある佐々木正さん(66)の農園です。
佐々木さんは元教師。四十五歳で専業農家に転じ、十五年ほど前から新規就農希望の研修生を受け入れて、農薬や化学肥料を使わない有機農業の栽培技術を教えています。「自立すること。現場で工夫することを教わりました。もう何も不安はありません」と北村さんはこの一年を振り返る。
農林水産省の青年就農給付金などを元手に、近所のつてで二反(二十アール)の畑を借りられるめどがついています。一年に何度も収穫できる軟弱野菜(葉物)から始め、五年後には一町歩(一ヘクタール)に広げ、法人化をめざす。できた野菜は宅配します。
身の丈を超えた大規模化には反対です。一人で一町歩耕して百二十世帯に売るよりも、二人で五反ずつをよく活用して、百四十世帯によいものを届けるべきだと考えます。
日常に食べられるものを作る。地域に必要とされる存在になる。安全安心を求める地元消費者と結び付く。地域の農業者同士がネットワークを結んで支え合う-。これが、北村さんの“農業”です。
「今農業に必要なのは、人づくり。そして、消費者との関係づくり。人のつながりを強くして地域の農業を守ること。攻めの農業? あまりピンと来ませんねえ」と、佐々木さんは苦笑します。
畑の隅でブロッコリーが黄色い小さな花をつけ、ミツバチとモンシロチョウがとまったり、離れたり。穏やかな春の午後でした。
◆救世主にはなれない
そもそも、“攻めの農業”って何だろう。まず例に挙げられるのが輸出です。農水省の資料には、こうあります。
<今後十年で倍増が見込まれる世界の食市場に、日本の農林水産物・食品が評価される環境を整備し、日本の「食文化・食産業」の海外展開と日本の農林水産物・食品の輸出促進を同時に推進する>
政府は、例年五千億円前後で推移している農林水産物の輸出額の倍増を考えました。もちろんそれ自体、容易ではありません。
一昨年の輸出額四千五百十一億円のうち約半分が加工品、四分の一が盆栽や真珠といった非食料品でした。食料品の多くは、サケ、マスなどの水産物が占め、純粋な農産物は百八十億円分しかありません。農業の救世主とは言い難い。
農地を集約し、経営の大規模化を図るにしても、地平線のかなたまで続く大農園に飛行機で種をまくような国々に、結局は太刀打ちできません。
TPPという名の黒船は、こと農業に関して言えば、成長至上主義の終焉(しゅうえん)を告げに来たのかもしれません。
作り手は規格にあった品物を効率良く育てて淡々と送り出す。買い手の側は値段の安さをひたすら求め、消費する。その繰り返しでは農業の持続可能性が、もう保てないということを。
二月の終わり、第七十二回中日農業賞授賞式のあいさつで、審査委員長の生源寺真一・名古屋大学教授が言いました。
「世界一鋭敏だった日本人の食べる力、味わう力が、衰えているような気がします」
農学者が消費者の心配をしています。
◆持続可能性の問題だ
食べる力、良いものを選ぶ力が弱まれば、食べ物を作る力も衰える。埼玉県の面積に等しい耕作放棄地があることは、よく知られるようになりました。それを除いても農地の利用率は約九割にとどまっています。
手入れのよい水田や畑がつくり出す景観美は、確実に衰退しています。
勇ましく海外へ打って出るのもいいでしょう。だがその前に守りを固める必要がありそうです。
環境、防災、水循環、それにエネルギーなど食料生産以外の機能も含め、地域に不可欠な農業という価値をどうやって維持していくか。総合的には持続可能性が実現できるかどうか、に帰着するでしょう。農家、消費者それぞれに、考え直す時なのです。
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【http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013041402000143.html】
【コラム】
筆洗
2013年4月14日
ボクシングの試合になぞらえれば、こんな感じだろうか。さぁ殴り合いと思ったら、まず相手から注文が付いた。「ちょっと君の右のパンチ強すぎるから、グローブはとりあえず、もう少し重いものを使って」「…」▼「うーん、君の左のガードがある辺り、こっちが打ちたいと思っているところなんだよね。邪魔だからガード下げて…うん、いい感じだ。さて、正々堂々と殴り合おうじゃないか」▼これで、本当にまともな勝負になるのか。首を大きくかしげざるをえないのが、環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に向けた日米の事前合意だ。だが、安倍首相は、よほど前向きな人なのだろう。「合意は国益を守るもの」「本当の勝負はこれから」と言った▼米国が日本からの輸入車にかける関税は、当面維持されることになった。他国も「米国に倣え」となれば、日本の自動車産業にどんな利点が見込めるのか▼かんぽ生命保険ががん保険に参入することは、政府が当面認めないとの約束もさせられた。米国系保険会社が強い分野だからだ。この調子だと米国は、日本が誇る国民皆保険制度にも手を出すのではないか。そんな危惧を持った人も多かろう▼日本の食卓を地道に支えてきた農家が、ばっさり切り捨てられる恐れがあるTPP参加だ。「国益」という言葉は、早のみ込みするには、余りに危険なシロモノだ。
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