R 05.08.14 柿 NO.3928
柿が実る季節になると思い出す。 戦時疎開をしていた田舎には柿の実が
たわわに実っていた。 でも、誰も疎開者にはそれをくれなかった。
疎開先に邪魔者扱いにされているばあちゃんがいて、あるときに、私を物陰に
呼び寄せて1個の柿をくれた。 疎開モンにそんなことをすると村八分される
ような雰囲気だったから、私は遠くの地に行って物陰にかくれてそれを食った。
皮も剥かずにそのまま食べたから、その時の味は忘れている。
戦争が終わって成長すれば、いつか彼の地を訪れて、ばあちゃんに一言、その時
のお礼をしたいと思っていたが、果たせぬ夢となってしまった。