さて、今日は最後の予定です。
先程、さらっと流し読みしていたらこのような記事がありました。
すでに何人ものブロガー医師が書いていそうな気がしますが、あえて書きます。
夕張市立診療所:自殺図った男性の救急受け入れ拒否 「外来に対応」 /北海道
6月2日11時10分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100602-00000033-mailo-hok
夕張市は1日、市立診療所が先月、自殺を図り心肺停止状態になった市内の50代男性の救急受け入れを断っていたと発表した。昨年9月にも同様のケースがあり、市は同診療所の村上智彦医師から事情を聴いた。
市の説明では、5月19日午前8時前、「首をつり、自殺を図った男性がいる」という119番通報があった。救急隊員が駆けつけると、男性は心肺停止状態で、診療所に受け入れ要請したが、外来患者診療のため、対応不可能として断られたという。男性は市内の別の医療機関で死亡が確認されたという。
村上医師は「首つりと聞いて検案(死亡確認)のケースと判断した。緊急性が低く、自分は外来もあったため、他の医療機関で対応してもらいたいと伝えた」と話している。
同診療所は昨年9月27日夜、同様に首をつった状態で見つかった男子中学生の受け入れを断った。市と診療所は、二度と同じような事態が起きないようホットラインを設けるなどしている。藤倉肇市長は「誠に遺憾という思い。市立診療所の開設者として総括が必要だ」と話した。【吉田競】
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首をつり亡くなられた方には申し訳ありませんが、優先順位という話になります。
救命救急という形でやるのであれば、スタッフ数もそれなりにいて…受け入れられるところがやるしかないです。
ここで村上先生が受け入れれば、村上先生の外来は止まっていたでしょうし、そこに救急対応の必要な患者さんがいたら
「村上医師は救命の可能性の低い患者さんを受け入れたために、救急対応が必要だった患者さんを死に至らしめた」
と書かれるのだと思います。
僕も先日受け入れを断った患者さんがいます。
90代の認知症で施設に入られている方が「肺炎」のような症状で、救急要請があったものです。
最初に大学病院から当たっていただいた救急隊の方々にも様々なお考えがあったのだと思いますが、申し訳ありませんが断りました。
何でも受け入れていたら、ひとつ前の記事にも書きましたが「大学病院で必ず診なくてはならない患者さん」の受け入れが不能になるからです。
一応、救急隊の方には
「僕が受け入れてもよいのですが、ここで受け入れるということはその分、大学病院で診なくてはならない状況の患者さんが受け入れられなくなる…ということだけ理解していただければと・・・・」
と言ったら
「夜中にすいませんでした。二次救急を当たります」
と、おっしゃっていました。
高齢者の肺炎は死亡率も高い。僕が2次救急の当直医なら診たと思います。何故なら二次救急だからです。
先日、うちの大学病院の院長先生が「救命救急センター以外は二次救急」とおっしゃったそうですが、それで二次救急並みに何でも受け入れていたら「血液内科」で鉄欠乏性貧血のある肺炎…も診ることになりますし、神経内科では今回の「認知症のある肺炎」を診なくてはならないということになります
しかし…それをやっていたら「急性白血病はどうなる?」「ALSなどの診断、MSなどの治療・・・神経内科の専門医が手掛けている分野はどうなる?」ということになります。
大学病院と診療所では状況は異なりますが、「どこまで診るの?」ということには共通点があります。
「専門医」として動くのであれば、「ここで診なくてはならない患者さんか?」ということが一つのポイントになってきます。そんなことを言っても「一般の方々」に理解してもらうのは大変だと思うのですが、「専門医療機関」であれば・・・・・・それを考えなかったら、ここで必要な患者さんを見捨てなくてはならないことになります。
逆に「二次救急の医師」として救急現場に立つのであれば、とりあえず救急要請があればある程度は受け入れますよね。
自分の立ち位置でやはり動きは変わってきます。
そして・・・一人ですべてを切り盛りする状況であればトリアージするしかないのです。
「助けられない患者さんは黒」
そう判断しなくてはならない。
それは「医師不足」の状態である夕張ならば、逆に当然の対応でなくてはなりません。
何でも受け入れていたら「助けられる可能性のある患者さんを助けられなくなる」からです。
医師数が不足しているから「トリアージ」の結果、受け入れは不可能と判断(黒タッグ)した・・・という状況なのだろうと考えています。
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トリアージをしなくてはならない状況を放置している「夕張市長」に関しては責めを負うのは仕方がないかもしれませんが、状況判断は的確であったと僕は考えます。
それでは明日もまた忙しくなりそうなのでここらへんで失礼します。