新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

ひたすら職人のように頑張る日本人医師:同感です

2014-11-24 18:38:43 | 医療

もう一つ紹介します

 

医師と弁護士の「働き方」に未来はあるか? 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141123-00052977-toyo-soci&p=1

東洋経済オンライン 11月23日(日)6時0分配信

 今年、異色ともいえる企業の上場が相次ぐ。ひとつは医師向けに国内最大級のコミュニティサイトを運営するメドピア。もうひとつは、法律相談の大手ポータルサイトなどを運営する弁護士ドットコム(来月に上場予定)だ。両社の共通点は、国家資格を持つ社長が創業したということ。弁護士ドットコムの元榮太一郎社長は弁護士で、メドピアの石見陽社長は現役の医師である。
 彼らがベンチャー経営に挑む背景などについて聞いた前回記事に続き、今回は両社のビジネスモデルや、医者・弁護士の「働き方」「稼ぎ」について語ってもらった。
※前回記事:「続々上場! 弁護士、医師がなぜベンチャー? 」はこちら 

【詳細画像または表】

■ なぜ弁護士が有料でネット登録? 

 石見:メドピアは、医師であればすべて無料でサービス利用できる仕組みになっています。弁護士ドットコムは、弁護士さんが使用料を払うのですか? 

 元榮:はい、今、収益方法に3つの柱があり、ひとつが弁護士課金。もうひとつはユーザー課金。そして広告です。弁護士ドットコムを運営して8年間、弁護士さんから1円ももらわずにやってきたのですが、効果的にユーザーとつながるためのプランとして、昨年(2013年)の5月から弁護士の有料プランを始めました。

 石見:利用したい弁護士は、全員会員になるのですか。有料会員弁護士だけが大きく表示されて、優先的に紹介されやすくなっているとか? 

 元榮:「食べログ」が無料店舗会員と有料店舗会員の2階建てになっているのと同じように、無料弁護士と有料弁護士に分かれています。有料弁護士は得意分野ページというものを持てる。弁護士にはそれぞれ得意分野があるので、本当はそれに関する依頼を集中的に受けたいのです。あとは検索結果の上位表示です。

 石見:なるほど。弁護士ドットコムは競合のサイトがないから、有料会員が増えるでしょうね。

 ――今まで強力な競合は出てこなかったのですか? 

 元榮:私は弁護士とは協力関係にあると思っていますが、強いていえば「法テラス」でしょうか。日本司法支援センターという公的機関による運営です。あとはサイトではありませんが、リスティング広告ですね。「弁護士」と1度検索すると、ほかのサイトを見ていても弁護士事務所の広告が出てくるようになる、あれです。

 でもポータルサイトとしての類似サービスはいっさいいない。ほとんど儲からない、というより持ち出しでしたから。それで続けてきたところがなかったのだと思います。

■ 二極化する弁護士、世界的にも激務の医師

 石見:弁護士ドットコムに登録している弁護士さんのネットワークは、何人くらいいるんですか。

 元榮:今、約7000人なので、日本の弁護士の5人に1人が会員です。有料会員は先月1000人を突破して、毎月100人程度、増えています。

 石見:すごいスピードですね。

 元榮:おかげさまで月間600万人を超えるサイト訪問者数がありますから、本当にユーザーの方とはよくつながるようになっています。

 ――サイトを設立された頃と違い、近年はロースクール出身の弁護士が急激に増えて、弁護士間の競争が厳しくなっている印象があります。

 元榮:確かに、2000年代までは依頼者の方が、本当に一生懸命弁護士を探してくれたんですね。ひとりの弁護士と出会うまでの手間が大変だったので、ひとり見つかった後は相見積もりをとることもなく、「お願いします」という時代だった。でもその後、弁護士がずいぶん増えて、僕が弁護士登録した2001年に1万7000人だった弁護士が、2013年に3万5000人になりました。

 石見:今もそのくらいのペースで増えているんですか。

 元榮:ほぼそうですね。いまでも毎年1500人くらい新規参入しています。13年間で弁護士の数が倍になったので、さすがに競争が促進されている。やはりちょっと厳しくなってきたかなという感じはしますね。日弁連が発行している「弁護士白書」を見ても、マーケットは拡大していますが、弁護士1人当たりの売り上げが若干下がってきていますね。

 ――ものすごく稼ぐ弁護士さんと、厳しい状況に置かれた弁護士さんと、二極化していると言われます。

 元榮:感覚的にはそうですね。というのも国税庁の資料の中で、自由業に占める1億円プレーヤーの職業を見てみると、弁護士が圧倒的に1位なのです。プロ野球選手より絶対数も多いし、医師と比べても割合が多いんですよ

 ただ、昔は二極化の下のほうの層がいなかった。二極化する前はもうちょっと社会主義的な状況だったのが、下の層が生まれて、それが珍しいということでマスコミに取り上げられるようになったため、目立つだけではないでしょうか。

 

 ――お医者さんはどうですか。

 石見:OECDの調査によると、日本の医師は人口10万人に対して2人強しかいなくて、世界でも下から2番めか3番めくらいに少ないのです。本当に医師の数が足りない。日本はフリーアクセスといって気軽に病院に行けるし、入院日数も長い。だから医師はものすごく忙しいのです。それでもあまり医師を増やそうという動きはありませんね

 元榮:今、通常の保険診療に加えて保険外の自由診療も認める「混合診療」が経済成長戦略のひとつとして検討されていますが、実現したら医療の現場が変わったりしますか。

 石見:けっこう大きく変わる可能性がありますよ。今、大枠では混合診療の実施が決まって、反対派が最後の抵抗をしているという状況ですが、これが本当に運用されるようになると、かなり大きな改変になるでしょうね。

 元榮:今までは画一的な医療サービスだったのが、少し差別化ができるようになるとか。

 石見:そのはずですが、競争が激化することをおそれる一部の開業医が抵抗しているという話も聞きます。その先生方は戦々恐々としているでしょうけれど、患者さんにとっては選択肢が増えるわけです。「命が助かるならおカネはいくら払ってもいい」という人でも、極端に言えば生活保護の人と同じ最低限の医療しか受けられないということですから、そこは変わっていく流れにいなるのでしょうね

■ 医師、弁護士の結婚問題

 元榮:話はまったく変わりますけど、うちの妹は小児科の医師なんですよ。それで30歳独身なので兄としては心配なんですが、女性の医師ってモテますか? 

 石見:そうですね、「女子医大の法則」っていうのがあるんですよ。

 ――なんですか、それは? 

 石見:3分の1が既婚、3分の1が未婚、3分の1がバツイチ、というように大別できるという説です。つまりほかの職業に比べて未婚者や離婚経験者が多いという印象がある。経済的に自立しているから選択肢が多いということでしょうね。でも全体の3分の2は結婚を経験しているわけですから、モテないということはないと思います。だた、医師はとにかく忙しいですからね。ましてや妹さんのように小児科だと、患者さんとの出会いもない(笑)。

 ――患者さんとお付き合いするケースってあるんですね。

 石見:整形外科などでは、そういうこともあるみたいですよ。たとえば脚を骨折した患者などは、病気ではないので健康な人と同じようにコミュニケーションをとれる。入院していればいろんな話をする機会もあるでしょう。

 でもやっぱり医師は男のほうがモテますよ(笑)。でもそれは弁護士も同じじゃないですか。なんだか昼間っから夜の会話になってきましたね。

 元榮:えーっと(笑)。実際、一部の女性弁護士は婚活に苦労するみたいですよ。弁護士は司法試験に合格すると、司法研修所というキャンパスみたいなところで一同に研修を受けるのですが、女性弁護士はそこで相手を見つけられるかどうかに一生がかかっているという話があります。集合修習といって、埼玉県の和光市にある研修所で一同に集まる期間が3~4カ月あるのです。そこで出会った同士が結婚することもある。

 みんな司法試験に合格して、長いトンネルを抜けたばかりなので「浮かれている」という表現がぴったり。大学1年生みたいな、ハイな感じになってますね。

 ――医師も弁護士もハードワークだと思います。知人に弁護士と医者の夫婦がいて、2人とも忙しいのですが、どちらかと言うと弁護士のほうがまだ時間の融通は利くようです。

 元榮:そうですね。弁護士はまだ時間のやり繰りができます。でも医師は完全にシフト制ですものね。

 石見:医師はやっぱり当直があるので。たとえば僕は心臓の内科医だったのですけど、命に危険のある方がいれば駆け付けなければいけない。女子医大病院に勤めていたときは、医局からうちのマンションの部屋が見えたので、照明がついていたら呼び出されることもありました。弁護士さんは基本的に昼間の仕事ですよね。

 元榮:そうですね。誰か逮捕されたりすると、夜間でも接見に行くことはあります。でもそう滅多にはない。

石見:弁護士報酬って、自由に設定していいんですよね。だから時間当たりの生産性は弁護士のほうがいい。当然、人気があるかどうかも関係あると思いますけど、生産性は弁護士のほうが断然高いですよ。

 医師はだいたい当直をすると時給1万円なんですね。あとは「寝当直」といって、病院で寝るだけの当直は1泊3万円。あとは土日ですごく忙しい場合は20万円弱。でもいくら高くてもそこが天井ですね。すごく腕のいい医師になればメチャクチャ稼げるかというと、そんなことはない。保険診療の範囲が決まっているから、たとえば僕が切っても、ゴッドハンドを持った医師が切っても同じ点数なんですよね

 元榮:報酬を自由化しようという動きはないのですか。

 石見:ないですね。本当にやるなら、完全に自由診療にしないといけない。だから今のところ、どんなに技術を研鑽しても給料は変わらない。それなのに、ひたすら職人のように頑張っている日本の医師を尊敬していますし、みなさんにそのことを知ってほしいと思っています

 ――医師の皆さんは、そのことに不満の声を上げたりしないんですか。

 石見:日本人の国民性かもしれませんが、あまりそこに不満を感じないんですよね。弁護士さんはどうかわかりませんが、やっぱり自分が治療することで、目の前で死にかけている人が元気に帰っていくことの喜びに比べれば、おカネは二の次になるんですよ

 元榮:患者さんはめちゃくちゃ感謝してくれますからね。経済的なこと以外に、ご褒美があるということですよね。

 ――弁護士は感謝されますか。

 元榮:弁護士は一般的に弁護士資格を取ると、まずは先輩弁護士の弁護士事務所で働くことが多いのですが、何年かキャリアを積めば独立したり、企業内弁護士になることもできる。でもいったん働き始めると、ほかの選択肢を考えないことが多い。依頼者からとても感謝いただけて非常にやりがいがあるので、それに夢中になってしまうのだと思います。

 石見:自分は今、週1回だけ診察をやっているんですよ。僕の場合は患者さんと直接、触れ合うことで、サイトにいい影響があると思っているので。やっぱり患者さんから「先生ありがとう」と言われると、非金銭的なインセンティブがありますね。(次回に続く)

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実際、今日もバックアップということですぐ駆けつけられる体制でおりますが(要するに妻の実家にはいかない)、自分の知識や・腕その他を高めようというのは患者さんのためであり、自分自身のためでもあります。

僕は急変対応が好きと人から言われます(別に急変してほしいとはかけらも思っていません)が、そこがおそらく自分の全身管理の技術を見せられる(あと、その経験を得られる)からではないかと思っております。患者さんの救命に僕がいるといないで差が出るといわれるのが(看護師さんにとりあえず呼ばれるとかも頼りにはされているという解釈にしています)、ちょっとしたプライドになっているのだろうと・・・。別に夜中の急変でも普通に呼ばれれば行きますし、苦痛でもなんでもないですし、呼ばれたからって「時間外手当をよこせ」とかいったことはないですが、多分・・患者さんや家族からの感謝と自分自身のプライドがあるからそういうことをかけらも思わないのだろうと思っています

 

ただ、本当にどんどん新しい知識が増えていって、本当に追いつけなくなりつつあることにも危機感を覚えていますけど・・・

 

多くの医師は自分自身がいることで患者さんや家族に有益であれば駆けつけようと思っていると思います。しかし、今の医師数ではいろいろ難しいところがあると思います。上にも書きましたが、知識は増えていって本当にアップデートが追い付かなくなりつつあり、「専門医」と「総合医」に分かれても今の医師数では足りないのではないかと思います。

 

医師数に関しては僕は基本的には不足と思っています。ただ、募集人員が増えたのに教官数が変わらないためか、若干質が低下しつつあるかもしれないと思う今日この頃です。どうすれば教官数を増やして、よい教育環境下で医師を増やせるのか・・・。だからまずは大学改革から始めないといけないのでしょうけど・・・

 

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大野事件をふと思い出す

2014-11-24 18:23:03 | 医療

少し前の記事ですが、ちょっと紹介します

 

吉村泰典氏、産科最大の危機を乗り切る 背景にあった医師不足

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141124-00000522-san-pol

産経新聞 11月24日(月)17時15分配信



 今は内閣府の少子化危機突破タスクフォースで少子化対策の提言をまとめたり、「少子化社会対策大綱案」を作る会議に参加したりしています。内閣官房参与というとわかりにくいですが、国の少子化対策や子育て支援についてのさまざまな政策立案に参加するのが仕事です。

 産婦人科医である私が政治に興味を持ったのは、日本産科婦人科学会の理事長として周産期医療の危機に対応したことがきっかけでした。

 〈平成19年に理事長となり、産科最大の危機と言っても過言ではない壁に向き合った。16年に福島県立大野病院で帝王切開した妊婦が失血死し、産科医が業務上過失致死と医師法違反(届け出義務違反)容疑で逮捕された事件の裁判が進んでいたのだ〉

 妊婦が亡くなられたことは大変悲しい出来事でしたが、医師の医療行為は正当でした。それなのに被告となってしまった医師には、「われわれも一緒に戦うから」と伝え、8人の刑事事件専門の弁護団を形成して裁判に臨みました

 心強かったのは、外科系を中心に多くの学会が応援してくれたことです。外科医は「こういう状況ではメスを握れない」、産科医は「もう分娩(ぶんべん)はできない」と、現場に共通の危機意識が芽生えていました。判決が近づくにつれ学会に届くメールも増え、1日400通を超えたこともありました。現場の若い産科医からは「理事長は生ぬるい」「ストライキをしてでも、私たちの置かれた厳しい状況を訴えるべきだ」と怒りの声も寄せられました。判決が出る前の1週間は、胃がキリキリと痛む毎日でした。

 〈20年8月、福島地裁で無罪判決が出た〉

 もし有罪判決が出ていたら、日本の周産期医療は崩壊していたと思います。ただでさえきつく、訴訟リスクが高い現場。あの無罪がなければ、今の産科の姿はなかったでしょう。

 検察が控訴すればまた戦いが始まります。私たちは全ての医学会の会長に手紙を書き、応援をお願いしました。これに応え、日本医師会や日本外科学会など多くの団体が、控訴断念を求める声明を出してくれました。結局、検察の控訴断念で無罪が確定しましたが、この問題が医学会、特に周産期医療に与えた影響は大きいものでした。大野病院の医師が逮捕された後、奈良県で妊婦のたらい回しが2件起きました。そして20年には東京でも妊婦受け入れ拒否が起きた。これらはまさに、日本の周産期医療の危機的状況の縮図だったと思います。

 〈事件の背景には、産科医不足があった〉

 病院を退院するとき、「お大事に」ではなく「おめでとうございます」と言えるのは産科だけ。日本の妊産婦死亡率は米国の3分の1と実に優れています。ところが、それゆえに「無事に生まれて当たり前」という安全神話ができてしまい、妊婦が死亡したり死産だったりすると医療ミスが疑われ、医療訴訟になってしまう。その結果、産科医のなり手がいなくなってしまっていたのです。(聞き手 道丸摩耶)

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実際に多分、あれで有罪判決が出れば急性期医療をやっている医師たちがみんな手を引いたと思います。そうすれば日本の医療崩壊として、多くの人に認識されていたかもしれません

 

まぁ、一回崩壊したら再生するまでは大変な時間がかかっていたのでしょうけど。

 

僕も一度ブログを書くのを止めましたが、大野事件を契機に再開しました。多くの医療従事者にとって衝撃的な事件だったと思います。

 

ふとこの記事を読んで、それを思い出しました。

 

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緩和ケアに関して:治療方針選択の基準はどこ?

2014-11-24 15:44:46 | 研修医、医学生さん向け

こんにちは

 

先程まで病棟でバックアップしておりました。今日は夜勤の看護師さんが14時過ぎまでいて(というか、僕が先に帰りました)、日勤看護師も昼食とらずにやっているという・・・

 

もちろん研修医も食べていませんし、僕も・・先程食べました(笑

 

思わず、「労働基準法はどこに行ったのやら(笑」と思いました。医師はともかく看護師さんの数が増えて、こんな勤務状況でなければよいのだがと思います。

 

さて、今日はちょっと「緩和ケア」に関して、書けるほどの経験値もないのですが少し書きたいと思います。あくまでどういうときに緩和ケアを考えて、どういった医療を提供するのかを「研修医」の先生たちの参考になればと思い書いてみたいと思います。

 

あくまで血液内科ですので、血液内科を例にして書いていきたいと思います。

 

恐らくどの疾患の患者さんでも診断直後というのがあると思います。

診断して年齢とか合併症とか、様々な情報がを加味して「積極的な治療を行えるかどうか」を普通は考えると思います。手術でも同様だと思いますが、手術に耐えられるのかどうか。血液内科領域では「抗癌剤治療に耐えられるのか」「抗癌剤治療のデメリットを超えるメリットがこの患者さんにあるかどうか」などを考えます。

 

積極的な治療ができないとなるとBSC (Best suppotive Care)が主体になります。

 

積極的な治療を行っていて病気が治ればよいですよね。標準的な治療を行ったものの治らなかった場合、「治しに行く」のか「共存」を主眼とした治療を行うのか、それともBSCかというところではないかと思います。

 

完治を狙う・・・急性白血病などでは移植は治療選択肢になります。急性白血病なら再発した患者さんでも再寛解導入療法を行い、移植を目指すのが普通です。仮に再発ではなくて難治(寛解に入らない)であっても移植はオプションになります。On disease(白血病が寛解に入っていない状況)で移植を行っても、完治する可能性は10%程度です。まぁ、最近の報告は多少上がっていますが、それでもそういう確率です。移植後の早期再発となれば、さらに確率は低くなります。移植しても生き残ってすぐ再発してくる腫瘍細胞が敵ということですから。

 

それでも患者さん本人がそれを目標にすると決めた場合、血液内科医が緩和ケアをしましょうとは言わないと思います。0%ではないからです。実際、うちの患者さんも移植後1年以内の再発ですが2回目の移植で5年以上無病生存している患者さんがいます。統計的に確率が低いとは言えますが、個人個人では神様ではないので可能性が0というのはありませんので。

 

また、悪性リンパ腫や骨髄腫ならば、寛解に入ればいい状況ですが、抗癌剤抵抗性の患者さんの場合、方針は非常に難しくなります。高齢者が増えるのもありますが抗癌剤抵抗性だと標準治療の自家移植が行えない。そうすると移植をするのか、共存を目標に治療に行くのか…という話になります。

 

共存を狙う治療…と言っても、治しに行かないから積極的な緩和治療と言ってよいかもしれません。僕も外来で内服抗癌剤で頑張ってひっぱりながら日常生活を送っていただいている患者さんたちがいます。悪性リンパ腫であれば輸血が要らなければ月1回程度でなんとか行けますが、白血病の患者さんだと輸血が必要になります。外来で引っ張るのも無理ではないですが、結構大変です。ある一定の効果があればそれでも引っ張れることがあります。

 

実際奇跡的な話としては急性骨髄性白血病の緩和ケアでしたが、1年くらい生きた人と1年半生きた患者さんがいらっしゃいます。二人とも一時的に内服抗癌剤なのに輸血フリーになるという奇跡的なことが起きた(一人は調べてないので知りませんが、1年もった患者さんは完全寛解に入ってました)ので、一時的ではありましたがよい状況を作れました。それ以外の患者さんだと数か月(2~8か月くらい)が急性白血病では限界かもしれません。抗癌剤は多少は効いても副作用が大きいので(というか骨髄抑制はきつくて、途中で感染症や出血で致命的になってしまいます)、長期のというと難しくなります。そうすると緩和ケアとして内服抗癌剤を使用した方が良いのか、本当のBSCの方が良いのか(輸血や抗菌薬の支持療法だけ)どうするか迷ったりします。

基本的には腫瘍細胞の増殖がどうかというところで、普通はとんでもない速度で増えてきて臓器浸潤とかもするので、使用できるたらした方が良いのかもしれません。ただ、どちらが良いか(BSC vs Palliative chemotherapy)というRCTは組まれてないのではっきりとは言えません。(僕が後方視的な解析をしようかと思いましたが、BSCの患者さんは元の病院に戻られているのでデータがなくてあきらめました)

確か北欧の方のデータで80代のAMLに積極的な治療科か緩和的抗癌剤治療かBSCかで比較したものもありましたが、早期死亡の数が多いが効果があれば積極的な治療が良いみたいな(当たり前ですがw)論文が出ていたはずです。

 

血液疾患では全く抗癌剤が効かなくなって…というところまでというのは少ないかもしれません。例えば急性白血病では、抗癌剤を使えば白血病細胞は死ぬけど、体の方が次の治療ができるようになるまでに同じような状況になってしまう。だから効果がないと判断される。ですので、同じ効果があって副作用が少なければ道は開けるのかもしれません。そういう意味ではvolasertib(2014年8月のBloodにのっていました。日本でもそのうち出るんでしょう)をはじめとした分子標的療法に緩和的な意味でも期待したいところです。

ただ、悪性リンパ腫や骨髄腫は本当に全然効かない…というようなこともあります。そうすると本当に使う薬もないというのが実情になります。メリットがデメリットを超えることができないので、治療選択肢として提示できないという状況です。抗癌剤治療は「体に有益な薬」ではありませんので、引き際が重要になります。どこまで使用するのか、それは患者さんごとに違います

 

この場合は患者さん本人もまじえてどういう方針で行くか相談する必要があります。と言っても、BSC以外の提示ができないということになります。抗癌剤のメリットがないのにダメージだけ蓄積させるわけにはいきませんので。意識がはっきりしている患者さんにはつらいかもしれませんが、自分の残された時間を使っていただくためにはきちんとその旨を言う必要があると思っています。逆にそれを聞いても「受け入れる時間」がない患者さんもいます(死の受容:エリザベス・ロスの「死ぬ瞬間について」というのがありますが、血液疾患の患者さんでは進行が速すぎて、受容できずにうつ状態のまま亡くなることもあります。その場合、僕もしまった・・・と思うことはありました。それでも告知しないと次のステップに進めないので告知はしたほうが良いと思っているのですが・・・・、告知をしない場合は本当に告知を聞いても退院も外泊もできないだろうという段階まで追い込まれている患者さんでしょうか・・・)。

 

緩和的な抗癌剤治療ができないとなればBSCとなるわけですが、BSCというのも症状がなくて元気だけどともかく輸血が必要・・・とか、今は抗菌薬を入れて感染症が改善できれば一時的にでも家に帰れそうだという話になれば積極的に行います。仮に家に帰れなくても。病院で今しばらく家族と話す時間ができるのであればそういう選択肢はありだと思っています。

 

輸血や抗菌薬治療など、やっても毒にはならないのではないかと思う治療をやらないほうが良いのではないかと判断することもあります。これは家族が判断するのは無理です。理由は患者さんに悪いとは思えないので。

 

ただ、僕は次の場合はやらないほうが良いのではないかという判断をしたりします。

1、まず原疾患のコントロールがついていないこと(要するに、抗癌剤の適応に乏しい)

2、本人の状態が著しく悪い(呼吸不全、腎不全などにより早晩苦痛を伴った死が来る可能性がある)、もしくは本人の意識レベルが悪い(患者さんの延命を図ったとしても患者さんのメリットに乏しい、医師と患者家族の満足で終わってしまう)

単純化すると多分これだけです。

 

1の条件は頑張ったらどうにかなる可能性のある人は、そもそも緩和ではなくて・・・そもそもどうにかクリアするべき人です。ですので絶対条件です。もちろん合併症でもうにっちもさっちもいかないならば、それで緩和ケアになりますが…その場合は次の項目を満たします。

2つ目の患者さんの容体が著しく悪い状況だと、ある程度の積極的な治療介入が患者さんの苦痛を伸ばすだけになるかもしれません。麻薬などを用いて苦痛の緩和をはかっているといっても、つらいのは患者さん本人です。苦しそうにはぁはぁ・・・いっている。確かにモルヒネで呼吸緩和はしているけど、苦しそうだ・・・。腫瘍熱と思われるが熱が出ている。解熱剤を使用しているけど、うまくコントロールできない。肝不全や腎不全が原疾患(白血病やリンパ腫、骨髄腫など)のために起きている。これでどれだけ対症療法を頑張っても、原疾患の治療ができなければ改善の余地がない。

 

その患者さんに「治る可能性は0ですけど、この状況でどれくらい生きたいですか?」などと聞く馬鹿な医師はいないと思います。ですから、できることを積極的にやるか、その旨を患者さんの家族に説明して積極的な治療を控えるかという話になります。もっというと最後まで頑張ろうとする輸液量などが増えてきて、患者さんの体がむくんできます。個人的にはそれもどうかと思っています(ですので、僕の場合…というよりおそらく多くの医師の場合は最終的な輸液量は少なくなっていると思います)。ついでに言うと輸液量を絞ったほうが・・・おそらく呼吸不全などでなくなったりするのが遅くなると思っているのですけど、経験上でしかありませんが。

 

意識が悪いとかそういう状況だと論外です。患者さんに何のメリットもなく、あるのは『患者さん家族の「その状態でもいいから生きていてほしい」という思い』だと思います。それは当然の事であり、否定はできません。早く死んでほしいとは家族は誰も思っていないはずです(たぶん)。しかし、苦痛が長引いてほしいとも思っていないと思います(たぶん)。それ故に意識がなくて患者さん本人にメリットがないのであれば、ただただ生かされるというのは望まないのではないかという話になると思います。

これらの場合は・・・患者さん本人にメリットが乏しい以上、患者さん本人の苦痛を伸ばしているだけかもしれない。ということで、僕が良く言うのは「患者さんが最後にご本人が頑張れる範囲内で頑張ってもらって、そこに苦しみがないように医療はサポートしていきます。ただ、苦しみが長引くような処置はもうしないようにしたいと思います」という話をすると思います。

 

これは僕が言っていることであり、私見でしかありません。参考になるかはわかりませんが、将来研修医の先生や学生さんが迷った時の参考になるとうれしく思います。

 

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