未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




「ステイホーム週間」

「オンライン帰省」

この手の言葉が嫌いだ。

この言葉だけ聞いても、何を意味するのかが明確ではない。

前後の文脈を聞いて初めて、何を意味しているのかが、何となく解る。

仕事がIT関連なのだが、お客さんや非IT部門の者から「専門用語で言われても解らない」と、言われることが良くあった。

「専門用語というほどの、専門用語ではないのでは?」と、思うのだが、一応気を付けてはいる。

エンジニアが専門用語を使う時、エンジニア間での共通語であるために、うっかりと使ってしまうこともあるのだが、その概念を意味するもっと適当な言葉が他にない場合もある。

例えば「クラウド」。

これを「雲」と訳しても、意味が通じない。適当な他の日本語も見当たらない。

「クラウド」は「クラウド」だ。

だがそれは、まずはエンジニアに広まり、企業経営に与える影響が大きいため、報道やセミナーで盛んにその意味するところの解説などがなされてビジネス用語となり、徐々に一般に使用しても意味の伝わる言葉になる。

「ステイホーム週間」

同じ理由で、このコロナ禍による自粛要請下の長期の休みを象徴する言葉として、GW(黄金週間)に変わる言葉として、考案されたものと思われる。

その言葉には「家で過ごすことは『我慢』することではなく、家族全員で楽しく休日を過ごす、一つの形態である」との意味合いが含まれている。

「ホーム」という言葉に、「家族」、「安らぎの場」との意味が、日本語においても含まれているからだ。

恐らくは、役人が会議が決めたのではなく、それなりの大手広告代理店などの、その手の専門チームにそれなりの金額で発注して、戦略を立ててもらい、その戦略の一環として、「名前は『ステイホーム週間』でいーんじゃないでしょうか。」と、決められたものと思う。

人々に外出せずに家に居てもらうためには、どうしたら良いのか。

ただ、「自粛自粛」「命を守るため」と言っても、強制されている、我慢しろと言われている感が強いので、反発を招いているために、守られていないのではないか。

などなどの経緯を経て、生み出された言葉であろう。

いや、悪くは、ない。

だが、もう来週に迫っているこの時期に発報(?)しても、浸透するのか?

「GWだがら、海行きた~い!」

と同じように、

「SH週間だから、家で映画見た~い!」

との会話がされる日は、恐らく来ない。

せめて、子供が「外行きた~い!」と、言われた時に、「ステイホーム週間だから、家で映画でも見ていない。」との、親の言い訳程度にしか、使われないであろう。

その割には「ステイホーム週間」には、そのお気楽な響きから、人々から危機意識を奪うという、逆の作用も十分にある。

問題は「週間」だ。

「交通安全週間」と言われても、様々な関連イベントや、交差点で町内会の人が旗振りしたりなどの光景が見られるが、一般の人が、特にその時期に何かしたり、特別なことを気に留めたりしない。

ましてや「あー、交通安全週間のおかけで、今週は安全だったわ。」と、思う人は、まずいない。

一過的なもの、あまり真剣に取り組む必要のないもの、との印象を与えかねない。

並行して、もっと人々に危機意識を持たせる施策も必要なのではないか。

新しい言葉が一般に普及するまでに、それなりの時間がかかる。

かつての「E電」や「ズレ勤」のように、かなりの金額と期間をかけても、定着しない言葉も沢山ある。

なんとなく政府なり、官僚なりの「ちゃんと対策は打ちました」との、言い訳のために実施されている感が満載だ。

一方、今朝のNHKの「あさイチ」で、「家で家族で楽しみたいお勧めのドラマ」が紹介された。

「ストレンジャーシングス」(Netflix限定)
「ロスト・イン・スペース」(Netflix限定)
「魔法のレシピ」(AmazonPrime限定)
「リラックマとカオルさん」(Netflix限定)

いずれも特定企業のサービスに加入しないと見れない作品ばかりだ。

「Netflix」や「AmazonPrime」への加入を勧めている。

NHKでこのような「お勧め」の仕方をするのは、本来はあり得ないはずだ。

苦情の電話が来るのは承知でこれに踏み切った背景には、恐らくは都なり国なりの要請、つまりは対策チームの戦略の一環であると思われる。

「Netflix」に加入させる。

確かに、一番効果があるかもしれないし、民放でお勧めしてもらうのは、難しいと思われる。

だが恐らく、このご時世で「パチンコ」に行ったり、海に行ったりしている人々には、通じない。

楽しいキャンパスライフを夢見て上京して来たがすることがないので、里帰りしようとしている寂しがりの若者にも通じない。

その行為が、全国民が取り組んでいるこの1ヶ月間の、自分の生活が成り立たなくなるのを覚悟してまで取り組んでいる善良なる人々の、身を切る様な思いの全てを、「ムダ」にすることになることを、もっと知らしめる必要がある。

99%の国民の、廃業や失業を伴う1ヶ月間の努力を、お前たち1%の無責任な行動が、「全てをムダにした」んだ。と。

そう、はっきりと伝え、99%対1%の対立を生ませ、1%に対する99%の監視体制を引かないかぎり、無為な1ヶ月が繰り返されることになる。

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