ハエを模した極小の飛行ロボット
http://wiredvision.jp/news/200707/2007073023.html
米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)は、ハーバード大学の超小型ロボット研究者Robert Wood准教授の飛行ロボットに出資し、将来極小のスパイにすることを目論んでいる。
「おそらく、部屋の中にタカがいれば気が付くが、ハエがいても気が付かないだろう」と、Wood准教授は述べている。
翼長3センチ。
確かに小さい。だが、現段階では、まだ、単独で飛行することはできない。バッテリー駆動と思われるので、航続時間も、たかが知れているであろう。
だが、この大きさで、実際に飛翔することができる人工物を製造するためには、乗り越えなければならない沢山の障壁がある。
マジシャンは、複数の小さなトリックを緻密に組み合わせ、大きな奇跡を演じて見せる。逆に、大きな奇跡を演じるためには、一つ一つのトリックを完璧に演じなければならない。
たった一つでもミスが生じれば、もはや奇跡は起こらない。
極小の飛行ロボットであっても、それは同じだ。障害となる技術的問題が、たった一つでも解決しなければ、ロボットが飛翔することはない。
飛行ロボットを、どこまで小さくできるか?
一見、単純ではあるが、飛ぶか?飛ばないか?という、はっきりとした結果が得られる課題こそが、時として技術を飛躍的に向上させることがある。
だが世間には、そこまでの寛容さは、ない。
Wood准教授は決して、スパイロボットが作りたかったわけではなく、飛行ロボットをどこまで小さくできるかに、興味があったはずだ。
だが、「小さいロボットを作ります。これだけ小さく作れるのは、私だけです。」では、誰からも開発費を引き出すことはできない。
正直、人に気付かれないだけであれば、『テレビのリモコン型』にしたほうが、よほど隠匿性が高いし、実際には、ハエどころか蚊が飛んでいたとしても、人は直ぐに気付いて、ベープのスイッチを入れるであろう。
この手の、直ぐには役に立つかどうか解らないような技術の奇跡が報じられるたびに、とって付けたような実用面が添えられることに、いつもちょっとした寂しさを感じる。
「これです。」
「何かね?これわっ。」
「人型ロボットに変形する乗用車です。」
「いいかね、君っ。ここでは実用的な研究でなければ、予算を確保するのが難しいのを、知っているのかね?」
「ええ。」
「では、これの実用面を説明してくれたまえ。」
「これには将来、スパイロボットとしての活躍が期待できます。」
「スパイロボット?」
「はい。最近では、毎日のように、新しいロボットの技術が報道されています。家庭に人型ロボットが浸透するのも、そう、遠い将来ではないものと思われます。そのためには今から、このような人型スパイロボットの研究を進めておく必要があります。」
「ロボットが人の家に入り込んで、その家の様子をスパイする。とでも言うのかね?」
「ええ。」
「いくら、ロボットが普及した世の中であったとしても、見知らぬロボットが自分の家に入り込んでいたら、明らかに不自然だろう?そう、思わないのかね?」
「直感的には、皆、そう思うでしょうね。実は私も、この調査結果を見るまでは、そう思っていました。」
「そうでは、ない。と?」
「はい、企画書の3ページをご覧下さい。これは、調査会社に依頼して行った、1万人を対象とした100問からなるアンケート調査の結果です。」
「要約してくれんかね。」
「では、最後のページをご覧下さい。意外なことに、『家に帰ったら、部屋の中にロボットがいたら、驚く。』に『はい』と答えた人より、『家に帰ったら、部屋の中に乗用車があったら、驚く。』に『はい』と、回答した人の方が、多かったのですよ。」
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