一応お断りしておくが、アニメ版「BEASTARS」の第2期最終回をまだ見てない方は抜けて欲しい。
録画してあった「BEASTERS」の最終回を観た後で、YOASOBIの「怪物」が聴きたくなって、テレビをYoutubeに切り替えた。
私はそこで、たまたま一覧に表示されていた「優しい彗星」のMVを見つけて、未だかつて味わったことのない、「感動」とはもう一つ上の次元の、名前のまだ付けられていない感情に、激高の高揚感と共に全身を支配されて打ち震えた。
いや、ほんとだって。
1970年代に角川春樹が「メディアミックス」なる言葉を作り出してから半世紀。
その言葉の目指す姿が、一つの頂点に到達した感がある。
「メディアミックス」と言っても、当初のそれは、単純に多メディア展開、多メディアへのバラ撒きを意味するに過ぎないものであった。
何も「ミックス」はされていない。
その後、様々な工夫が凝らされて来たので、私の知らないことも多いと思うが、いわゆる『相乗効果』がこれ程プラスに感じられたのは初めての体験である。
人間の創り出せる限界を超えてしまった。
だが、全ての者が等しく、このタイミングで味わうことが出来るものではない。
賭けでは、あった。
私は最終回を観た直後に、何の先入観もなく「優しい彗星」のMVを観るという、幸運に恵まれた。
たぶん、残りの人生の内の10年分位の幸運が、全て消費されてしまったと思う。
それでも、この体験は、それに十分に見合った、幸せなものであった。
さて、そろそろネタバレが入る。
再生前に、番組一覧の「BEASTARTS」のタイトルに[終]のマークがあった。
そうか、第2期は終わってしまうのか。
そう、思った。
良くある演出で「オープニングなしで始まるんだろ(けっこう好き)」と、そう思っていたら、良い意味で裏切られた。
いきなり「エンディング」アニメが始まった。
前から、曲のイメージに作品世界を当てはめた、素敵なエンディングだと思っていたのだが、じきにその演出の意味に気付いた。
「今日の話って、このエンディングの続きから始まるんだよな、そー言えば。」
その時は、いわゆる「伏線回収」的な心地よさを感じた程度であった。
漠然と、今日が最終回だとは思っていなかった。
単なる「第2期の最終話」程度で観始めたのだが、完全に間違っていた。
濃密な最終回であった。
「BEASTARTS」の作品世界のみで成立する、数々の生き様が、見事なアニメーションで語られた。
自分の趣味として、主人公が正義を語り始めたら、そのアニメは興ざめして観なくなるのが常であった。
なんか、白々しく、薄っぺらく感じられて、一気に腑抜けた状態に陥ってしまう。
今回のこれ、主題として「正義の在り方」が語られているように思う。
そう言えば、オープニングの「怪物」の歌詞にも、そんな言葉があった。
だが、その作品の世界の中でのみ通じる「正義の在り方」であるせいもあるのか、いつも感じる空虚さは全くなかった。
いや、逆だな。
彼らの語る「正義」が、理屈が合っているのかどうかすら解らぬままに、全身に熱い血潮をもたらしてくれた。
「すげーな、すげーな。すげーアニメだったな。」
こんな時、「アニメ派」(原作コミックより先にアニメを観てしまう派)であったことに、至福の喜びを感じる。
原作と同じ展開かどうかは不明だが、原作を読んでもそれなりの感動はあったであろう。
だが、技術的な完成度も、芸術的な完成度も非常に高い、こんな圧倒的なアニメで、こんな凄いことされてしまうともう、やはり自分はアニメ派として生きて来て良かったし、今後もそのまま生き続けたいと思ってしまう。
毎回楽しみにしていたオープニングがなかったので、「でもやはり、今日も『怪物』は聞きたいな」と、Youtube に切り替えたところ、お勧め動画一覧に「優しい彗星」があった。
今まで観た覚えがなかったが、「怪物」もMV版はロングバージョンだったので、最終回冒頭で観たばっかりだが、もう一度観てみることにした。
ノンクレジットだが、いつもと同じだ。
でも、確か今までは見た覚えのない「歌詞」が表示されていたので、なんとなく見ていたのだが、実は歌詞とアニメーションが濃密にリンクしていることに、改めて気付いた。
いや、歌詞を忠実にアニメ化している。
・・・?
そこでやっと気付いたのだが、ちょっと前まで「YOASOBI」を全く知らず、最近何かで「詩に曲を付けたのがウケた」ような記事を読んだのを思い出した。
いや、これはさ、アニメーションに、曲付けて歌ってるんじゃねーの?
そう気付いてドキドキしながら観ていると、それまで忠実にアニメのエンディングのまま進んで来た曲の、さらに続きが始まった。
今観た、アニメの展開そのままに展開し始める。
そして、歌詞も見事にリンクし、アニメで語られた二人の絆が、より一層の深みを伴って、歌い上げられて行く。
さっきまで見ていたアニメの感動の残り火に、新しい息が吹きかけられて、再炎上した。
「こっち、先に観なくて良かった」
との思いもふと掠めたが、それより何より、このタイミングで、この2つを続けて観られたという幸運に感謝した。
もう、2度とこんな体験は出来ないとは思う。
全ての人が、このタイミングで観れるとは限らない。
制作サイドにも「賭け」である危惧はあったはずだが、誰かが英断してくれたおかげで、今日のこの体験が得られた。
そして、そんな「賭け」があったにも関わらず、ジャストのタイミングで体験出来たことに、そんな幸運に巡り合わせてくれたどこかの神に、感謝した。
そんな、至福のひと時であった。
YOASOBI「優しい彗星」Official Music Video (YOASOBI - Comet)
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