未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




10年ほど前まで、荷物は安くて丈夫なリュックサック(?)に入れて持ち歩いていた。

トラブルなどで急な呼び出しがあった時に、とりあえず関係する書類一式:A4のキングファイル2冊くらいと、ノートPCを持って行く必要があるからだ。

最初の会社が私服可であったので特に意識していなかったのだが、会社が変わり、スーツを着るように言われても、必要性からバックはそのままであった。

ある日、役員と客先に行くことになり、その時に「おまえ、そのバック何?」と、聞かれた。

諭された。のかもしれない。

「確か、ジョシュもそんなバックを持っていたはず」とも思ったが、バックも人物も、格が違い過ぎるので、言うのをやめた。

しかたがないので、それっぽい鞄を買うことにした。

以前、時計の時に「ものを買う時、オールマイティーなものを選ぶ傾向がある。」

と、書いたのだが、鞄の時の条件はこれだった。

1.普段は、薄くて、かっちりと四角いこと。
2.ちょっと洒落ていること。
3.で、ありながら、いざとなったらマチが広くて、書類が沢山入ること。
4.酷使するので、予算は1万円くらい。気に入れば、2万円くらいまで。

池袋のデパートに行ってみた。いわゆる「鞄売り場」で、どんなのがあるのか、物色してみようと。

だが、運命の鞄は、最初の店にあった。

輪怐マルチブリーフケースL



1つを除いて、条件にぴったりだ。いや、画像では良く解らないが、これ、サイドのジッパーを開くと、マチが 17cmもある。



普通のバックって、わざわざサイドにジッパーを付けているにも関わらず、開いても5cm位しかないのが殆どだ。

全く、飾りにもなっていない。

「せめて、10cmぐらいはあって欲しい」と思っていたのだが、これには思わず嬉しい悲鳴を上げた。

「きゃーっ!」

しかも、皮ではなく、キャンバス地に防水加工がしてあるという実用本位ながら、要所々々に皮をあしらったデザインは、凄く洒落ている。

「もう、これしかない。」と、思ったのだが、値段が高い。

一応、他も見てみたが、やはり、どこのそれも、輪怐の足元にも及ばない。

「うちは普段はセールやらないんですが、今回は2割引してます。」

4万円のバックが3万2千円。

もう、買うしかないと、購入した。

どうせ3万円も出すのであれば、硬派を気取って、その高級感がイマイチ他の人には伝わり辛いクロではなく、ネイビーにしようかとも思ったのだが、何故かネイビーは防水加工が施されていない(発色に拘ったのか?)とのことであったので、クロにした。



いい気になって酷使していたのが祟り、5年ほど前に、肩紐の金具が折れてしまった。

あちこち綻びも出始めていたので、修理に出すことにした。

問題は、修理に出している間のバックをどうするか?だ。

欲張らずに、前に使っていたバックで凌げば良いのだが、やはり、ネイビーが気になる。

「まだ、あるのだろうか?」

ちょっと公式HPを覗いてみたら、同じ型で、本革製と見られる、ラグジュアリー感に溢れたバックが、誇らしげに笑っていた。

(オリジナルの画像は見つけられなかった)

「これ、すげー、素敵だ。思い切って、買うか?」

だが、売り場にあったそれは、なんか、全く別物で、安っぽく感じられた。

ちょっと型が違うが、こんな感じ。


今にして思えば、別物だったのかもしれないのだが、その落胆ぶりは助けたカメに連れられて、場末のキャバクラに案内された時のようだ。

「しまった。新手のキャッチだったのか。」

これなら、よほどネイビーの方が良いと思ったのだが、店頭にはない。

店員に確認すると、「商品は入れ替わるので、もうない。」ようなことを言われた。

思えば、この店員の接客が『輪怐』の凋落の象徴であったと思う。

いつものように「なんか、もー、どーでもいーや」と、茶を購入したが、心が晴れることはなかった。

後日、修理の上がったクロを取りに行くと、ちゃんと、ネイビーが店頭にあった。

この店員、いつ行ってもコイツが居るのだが、普段使いのバックを探していた時に、

「A4の雑誌が縦2つ折で丁度入るくらいのを探している。」との問いに、A4が普通に入るバックを出して来て、

「どうせ、服を買ったりした時に、別の紙袋が必要になったりするんですよ。」

と、間の外れた口上で、売りつけようとした。

余程、叱りつけてやろうかと思ったが、遣る瀬無い気分で黙殺したのだが、その時にはもう、引き返せないポイントを通過してしまっていたように思う。

もしかすると、成績は良いのかもしれないが、ブランド品を扱うショップの店員としては、あってはならない態度であった。

つい最近、またクロの方の金具が壊れてしまった。修理を頼もうと購入店を訪れたが、別のテナントが入っていた。

スマホで検索すると、公式HPはヒットせず、ショップポータル的なサイトで、まだそのフロアにあるようなことが書いてある。

フロアを2周ぐらいしたが、見当たらない。どうやら、なくなったようだ。

東武にも、以前通りかかった時に、「あ、ここにもあるんだ。」と、そこの店員さんは、一瞬目が合っただけだったのだが、

「うちのバック、使ってくれてますね。」と、目が微笑んでいた。のを覚えていたので、その日は時間がなかったため、次の週に行ってみた。

やはり、なくなっていた。

スマホで探しても、例の情報の更新されていないポータルサイトしかヒットしない。

公式HPの案内に従って、「修理のお問合せ」に電話をしてみた。

「修理頼みたいんですが、店舗がなくなっていて」
「店舗は、全てクローズしました。」
「ブランド、やめちゃう感じですか?」
「復活するかもしれませんが、いまの所、営業を停止しています。」

んー、今のうちに、ネイビー、買っておきたいとこだが。。。

しかたがない。復活に懸けるか。

唯一無二の良いバックだったので、非常に残念だ。




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