精神発達障害の治療に光明――「脳を増強するタンパク質」の可能性も?
http://wiredvision.jp/news/200710/2007101122.html
研究者たちは、脆弱X症候群マウスの脳の海馬領域に、神経細胞の成長を活性化させるタンパク質を与えることにより、神経細胞間のシナプスを強化する能力――長期増強(LTP)と呼ばれるプロセス――を回復させることができた。
この記事を読んで、誰でも想像することがある。
つまり、脳に成長を活性化させるある種のタンパク質を投与することが、機能の障害を回復させるのに役立つのなら、健常者の記憶を向上させるのに役立つようなタンパク質も存在するのではないか、ということだ。
実際に、そのような作用のある薬が開発される可能性は、非常に高いと思う。
だがそれは、「飲めば、みるみる頭が良くなる、魔法の薬」には、ならないであろう。
神経細胞が発達しても、それだけで、ひとりでに新たな知識が蓄積して行くわけではない。
ステロイド剤をいくら服用しても、トレーニングを何もしなければ、筋肉が増強されないのと同じことだ。
知識を得るためには、勉強しなければならないことに、変わりはない。
とは言え、受験生など、学習すべき課題の膨大さに圧倒されている者にとっては、ついつい手を伸ばしてしまいそうな、魔力を持っていることも間違いない。
だが、安易に薬に頼るのは危険だ。取り返しの付かない結果に至る前に、その結果を十分に検討してみるべきであろう。
そもそも、自分で何も考えられないようであれば、薬を飲んでも、結果はあまり変わらないのだから。
「どうされました?」
「最近、なんか、ずーっと頭がぼーっとして、勉強にちっとも身が入らないんです。」
「何か、心当たりはありませんか?」
「実は、来年、医学部を受験するんで、がんばっているんですが、補助的に『BDNF』を服用しています。」
「『脳由来神経栄養因子』のことですか?日本ではまだ、市販されていないでしょう?」
「ええ、海外のサイトから通販で購入しました。」
「脳に、直接注射しないと、効果が得られないはずですが?」
「ナノ粒子を使用して、脳細胞のみに薬剤が作用するようになっているそうです。」
「怪しいですね。それ、見せてもらえませんか?」
「これです。」
「・・・騙されましたね。これ、『BDNF』では、ありませんよ。」
「でも、それまでは、勉強していても1時間ぐらいで、直ぐに疲れてしまって、集中力がなくなっていたんですが、これを服用するようになってからは、長時間勉強しても、疲れないようになったんですよ。はっきりと、効果があると考えて問題ないでしょう?」
「そりゃあ、持久力は、付くでしょうね。だが今は、決して、頭の調子が良くない?」
「ええ。」
「むしろ、前より悪くなっている感じですね?」
「副作用でしょうか?」
「いえ、この薬剤の正常な作用ですね。」
「これ、何なんですか?」
「ステロイド剤ですね。」
「ステロイド剤?」
「ええ、筋肉を増強する作用があります。」
「脳細胞が増強されているんですか?」
「いえ、ちょっと違いますね。」
「いずれにせよ、服用を止めれば、治るんですよね?」
「正直に言って、可能性が低いですね。」
「いったい、何が起こっているんですか?」
「予備検査の結果を見ると、どうやら、脳細胞の50%が、筋肉細胞に変わっているようですね。」
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