未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




私が何かものを買う時、オールマイティーなものを選ぶ傾向がある。

例えば時計の場合、TPOに合わせて着け替えるなどという面倒なことが出来ないため、同じ時計でどんな局面でも通用するようなものを選ぶ。

今使っている時計を選んだ時の基準はこれだ。

1.時間が正確であること。
 これがまず第一。時間に几帳面という訳ではなく、時刻合わせが面倒なので、なるべく長く放置したままでもそこそこの時間を表示して欲しい。

2.そこそこラグジュアリー感があること。
 スーツでも、(ひょっとすると将来行くことがあるかもしれない)パーティーなどの華やかな場に着けて行っても、違和感がないこと。

3.ちゃんとした防水機能があること。
 もし、何かの都合で水に飛び込むハメになっても、時計が気になって躊躇することがないように。その一瞬が命取りに繋がることもある。

4.アナログ針と、デジタル表示の両方あること。
 これは私の趣味であり、次の多機能であることに繋がる。

5.多機能であること。
 アラーム、ストップウォッチ、複数時間帯同時表示、などなど。

6.シンプルであること。
 とは言え、ごちゃごちゃしているのは嫌いなので、竜頭は一つだけであること。

家電量販店やデパートなどを探し廻ったが、そもそも上の条件(特に6.)を満たすものがまず、ない。

高級ブランドは機械式だとの思いがあるので、初めからスルーしていた。

一つ、かなり近いものがあったのだが、手に持った感じが凄く軽くて、なんかオモチャのようで萎えた。

どこかで妥協しなければならないのは解っているのだが、なかなか踏ん切りが付かない。

ここでヘンなものを買ってしまうと、その後の人生、時刻を確認するたびに後悔の念に苛まされることになる。


そんな悶々とした日々を送っていたある日、テレビで何気なく観ていた「ブロークンアロー」で、ジョン・トラボルタが着けていた腕時計が目に留まった。

「今の、『デジアナ』だったよな。」

早々ネットで調べると、『ブライトリング』というメーカーであることが判明。

メーカーHPにて、運命の時計に辿り着いた。

ブライトリング『エアロスペース』
http://www.breitling.co.jp/products/professional/aerospace/

私が持っているのは、このモデルだ。
http://www.watchallure.com/Breitling-226-gry-Breitling-Aerospace-Collection-Watch-1/

殆ど条件通り。しかも、竜頭が1つだ!!

正直、回転式のベゼルは好きではない。その昔、ダイバーズウォッチが流行った時に、不必要な機能を持ち歩く者を「バカじゃねーの?」と、嘲笑っていたことがある。

だが、他の条件は満たしている。運命の時計に違いない!!

そう、思って次の休みに専門店に買いに行った。

だが、実際に手に触れてみると、気にいらない点がいくつか出てきた。

・秒針がない。秒を表示したければ、デジタル部分を使用する。だが、このモードだと曜日が表示されない。
・バックライトがない。電力駆動にもかかわらず、バックライトが付いていない。かわりにミニッツリピーター風のビープ音がする。これ、かなり致命的だった。ミニッツリピーターは、機械式で実現しているからこそ、その音色に趣があるし、それを生み出した技術者への尊敬も生まれる。だが、ビープ音でそれを真似ても、ちゃちなだけだ。そもそも、現代社会において、暗がりで時刻が知りたい局面など、映画館の中くらいであるので、音が出せるわけがない。(最近のモデルでは改善されている)

よほどやめようかと思ったが、この先、これ以上のものに巡り合えるとも思えないので、「ここが妥協点だ」と、購入した。

しばらくは、どっちつかずの不安定な精神状態が続いたが、だんだんと気に入って来た。

さて、ここで本題の「竜頭」だ。

この時計の場合、「竜頭」の右回転、左回転、右早回転、左早回転、押し込み、引き出し、引き出した状態での回転・・・。により操作する。

この早回転が難しい。たとえばアラームの時刻をセットする時に、早回しなら時間を。普通に回せば分を設定するようになっている。店頭でも気になったのだが「慣れれば簡単ですよ」との店員の言葉。と、いうより廻せないなら商品として流通していないはず。との思いから不安を押し留めたのだが、結局いつまで経っても、左早廻しは出来るようにならなかった。(後でメンテナンスしてもらって、出来るようには、なった)

表示モードを切り替えるだけなら良いのだが、アラームの時刻を合わせるような時には、未だに時計を外してから行う。そしてある時、こう、思いついた。

「これ、竜頭じゃなくて、ベゼルを廻してセット出来ればいーんじゃね?」

なぜ、今まで誰も、そのことに思い当たらなかったのか。

まぁ、本来の機能からすると、ベゼルがそんな簡単にくるくる廻ってしまうのは問題がある。といえば、ある。
だが、本格的にダイビングする人が、こんなモデルを装着して潜るとも思えない。

で、あれば、どうせ飾りの役目しか果たしていないのであれば、新たな、重要な役目を与えてやっても良いのではないか?

Apple Watch を見て、真っ先にそう思った。

これ、竜頭の操作性はどうなのよ?やはり、竜頭ではなく、ベゼルをくるくる廻せた方が、格段に操作性、ユーザービリティーが上がるのでは?と。

恐らく、Apple の開発チームでも、同じ結論に達したと思う。プロトタイプも作られ、その仮定が正しいことも確認されているに違いない。

なぜ、却下されたのか。

ひとつは、これからファッションメーカーを初め、いろいろな会社に協力してもらうに当たって、回転式のベゼルが付いていたのでは、デザインが限定されてしまうからであろう。

そしてもう一つの大きな理由は、丸い盤面では、それを有効に利用するアプリの開発が難しい。という点がある。

まだ、Apple 自体も、この新しいデバイスに、未知の可能性が残されていることを自覚しており、様々な開発者が参入することによって、思いもしなかった使用方法が見出され、世界中の人々が、Apple Watch をすることになるのを夢見ているに違いない。円形ディスプレスは、この可能性を大きく減じる恐れがある。

Apple 社としては、3回ほどのモデルチェンジの後、世の中に Apple Watch が当たり前になり、ユーザーI/Fの定番が定まって来た頃に、「新しい操作性。ベゼルで操作する New Apple Watch」として発表しようとしているに違いない。

今、彼らの一番の脅威は、それをどこか他社のメーカーに先を越されてしまい、「こっちの方が便利じゃね?」と、シェアを奪われてしまうことであろう。

良く考えたら、物理的な回転式ベゼルが付いている必要はない。現在の四角いディスプレイに、仮想ベゼルを表示して、それをクルクルすれば良いのではないのか?それは、試してみたのだろうか。

いや、いや。

もっとよく考えたら、仮想ベゼルを表示する必要すらない。

四角いケースのフチを、人差し指で右回りや左回りになぞるだけで良い。

これは、考えなかったのだろうか。

誰かに、作って欲しい。

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