未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle






XGの最新シングルがこちら。

XG - WOKE UP (Official Music Video)


彼女達の初の「オールラップソング」であり、MVもそれに負けじとPOPでありながら視るものを挑発する、斬新なものになっている。

彼女たちの別の楽曲「GRL GVNG」と似たテイストだが、こちらは歌詞とリンクしているシーンが多いので、理解し易い。

今回のMVのテーマはマルチバースだ。

■サイモンPD



冒頭のシーン。

曲もまだイントロだし、XGファンでなければこれが誰かも分からないが、この10秒程度で、MVの世界観を印象付けている。

普通の映画の1シーンとして観れば、バイクで駆けつけた主人公が、敵の牙城に乗り込もうとしているところ。

その目的は捕らわれたCOCONAを救出するためだ。



赤色灯が虜囚の身であることを暗示している。



「マスク」はCOCONAを取り囲んでいる者と全く同じなので、正体を隠すためであり、つまりは今から潜入しようとしているところだと解る。

ここでわさわざイヤモニをしているのは、救出チームが良く付けてるのを外面的に真似て「救出に来た味方」感を醸し出しているだけで、決してチームで来ているわけではないのは、その凛とした佇まいからも伺われる。

ここで先に触れておきたいのは、COCONAを取り囲んでいる者は何者なのか?ということだ。

普通に考えれば、悪の巣窟を守る下っ端構成員なのだが、それで考察を進めていくと辻褄が合わなくなる。

悪の教団本部に通う、実情を良く知らぬ信者程度の位置付けとしておこう。



砦はこのMV でしばしば登場する頭の上半分がない【ヒト】。

何かのメタファーなのだが、ハッキリしない。

頭がないので「何も考えない者」なのか?

いや、実はもう一つ重要な特徴がある。

目もない。

「自分では何も見ようとせず、何も考えようともしない者」恐らくは、騒ぎに乗じてワラワラと集まって来ては、無責任な言葉を吐き散らす、広い意味での【アンチ】を象徴している。

恐らくこのあと、アチコチで登場する【メダマ】は、この逆の「物を良く見て考える者」、こちら側の人格の象徴だ。

自分の顔を模した、これだけの建造物を作ってしまうあたりは、悪の組織と言うよりは、狂信的な宗教団体の方が腑に落ちる。

■JURIN



前に「オオカミ風のヘルメットがカッコ悪い」と、失礼なことを書いたが、岩盤を突破するためなら多めに見よう。

いや、あの程度の装備で、砦の岩壁を突破出来たので、むしろ褒めてあげなければならない。



周りにいるメンバーも、チームの証の「狼」をあしらった制服に、ヘルメットを被った標準装備で統一し、まずは何らかの目的を持ったチームであり、JURINがそのリーダーであることを示している。



このショットの意味が良く分からないが、普段の姿は仲の良いギャルのチームであることを印象付けるためのものと思われる。

これから乗り込もうとしている敵のアジトの前で、ノーテンキに記念撮影をしている。

余裕だな。

衣装が違うので、別の世界線上のメンバーなのかも知れない。



最後のタイヤは、リリックそのまま。中盤の「スカォート!」からの「Tokyo Drift」へのオマージュへと繋がっている。

■HARVEY



白バージョンは、大気圏突破用の装甲だ。

大気圏にバン!と、突入したところから始まる。一見重装備にも見えるが、この程度の軽装備で大気圏を突破出来たのであれば、やはり褒めてあげなければならない。

砦にランディングする直前で、装甲をリリースしている。



黒バージョンは「BIG MAD」のリリック「Half asian half aussie alien」「me and 6 boss queens」からのリファレンスで「Queen Alien」。

さすがにちょっとこじつけっぽいが、意匠は酷似している。



実は「Queen Alien」は、強敵から家族を守るために、身を挺して戦っている。



壁を破って突入するシーンが、インサートされている。

■CHISA



リリックそのままのオープンのクーペで登場。リリックを言葉通りに解釈して、空を飛んで来る。



CHISAのシーンでしばしば見られる、手前に牙のようなものがぼんやり映っているシーン。

「これってもしかして、口の中の【メダマ】が見ている風景なのか?」

と思ったのだが、ここでCHISAを見ている理由がないし、誰の【メダマ】が見ているのかも不明。

Behind」を見たら、牙の装飾の施された、サイドミラーに映っている情景の様だ。

これを以てして「CHISAがミラーワールドなどの異次元空間を通過していることを示唆」と言うのは、さすがにこじつけが過ぎている。



やはり、壁を破って砦に侵入しているシーンが、最後にちゃんと織り込まれている。

■MAYA

最初の数カットで、天井を突き破って降り立つ様子が、わざわざ入れてある。



役割は、やはりリリック通りの「審判にして裁判者」



ここで急に解釈が解らなくなる。

断罪されているのは、リアル【アンチ】。



この砦の造形が、彼をモチーフにした物であるので、砦のボス、または教祖。

ちょっと華奢に描かれているのは、ネットの世界では大物感を漂わせていても、実態はどこにでも居るような普通の人間であることを暗示している。

だがこれ、明らかにサイモンPDがモデルなんたが、だとしたら潜入にバレて捕まった事になる。

このリアル【アンチ】が助けに来たサイモンPDだとすると、MAYAが破壊するのはおかしい。

だが逆にボスだとすると、ボスが破壊されているのに、構成員が拍手してるのはおかしい。

辻褄を合わせようとすると、MAYAの言葉による説得で、構成員が真実に目覚めたことになる。

「非暴力により、相手を改心させた」のか。

だとすると、構成員が面を外すような演出があるはずだが。

■COCONA

リリックと関係ないキャラ。



コンテナが「バス」の意匠というわけでもないようだし、構成員が「ファンが殺到」している様子を表しているわけでもなさそうだ。

恐らくはCOCONAがベリーショートすら超えた「坊主頭にしたい」との要望を受け、急遽シナリオが差し替えられたものと思われる。

COCONAの「断髪儀式」を見守る構成員。

もしこの人数が12人であるなら、明らかにキリスト教的なものの象徴である。

冠の造形は「牙」をモチーフとの言い逃れも出来るが、明らかに「いばらの冠」を連想させる。

「自身の殻を打ち破ったことにより、新たな覚醒を得た」ことを表している。

他のメンバーが外的な壁を打ち砕いているのとは対照に、COCONAは内なる壁を打ち破っている。

冠が宙に浮いているのは、覚醒によって得られた力が、超常的なものであることを示している。

そして、その超常的な力を使って構成員を操り、「非暴力的手段」により、自分を窮地から救い出している。

■JURIN



アルバム風の装飾は、このシーンが現在の物ではなく、砦に乗り込んで来た彼女の過去の様子であることを示している。

桜が舞っているので、卒業アルバム。

クラスメイトがまだ何者でもない段階で、ヘルメットを膝に抱えたJURINは、既に出撃の準備が出来ている。

■HINATA



マルチバースのうちの「All at Once」を示唆している。



目に囲まれていたり【メダマ】の表現は、彼女が「観察者」であり、かんじがらめに束縛された状態から、残された唯一の手段である「森羅万象を視る」という行為によって、束縛から解放されたことを示している。

■JURIA



分かり難いが、JURIAもまた、この教祖のポートレートが掲げられた壁を打ち破って出現している。



一人だけ時代も場所も大きく異なる。古代エジプトの時代。マルチバース感を強調するために、大きく時間軸や地理的な距離の異なる要素を盛り込んでいる。

そしてHINATAとの画面の融合という演出と、元々の楽曲の二人のバースの融合により、「Everything everywhere All at once all the time All around the world」を端的に表している。

■MAYA

これも何だか分からない。



「Behind」ではもう少し長いシーンがあるのだが、やはり何だか分からない。

■HARVEY

お祭りの「山車」



リリックにもある「Mardi Gras」。

特に「Half asian half aussie alien」からの推測で「Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras Parade」を指しているものと思われる。

タイトルの「WOKE UP」には、「Woke Culture」への示唆もあるのでは?との指摘があった時に、あまりピンと来なかったのだが、ここで再度の引用があるので、恐らくは意図的なものと思われる。

この部分のリリックも、そんな感じだ。

ただ、そこにはっきりと言及してしまうと、色々とやっかい(個人の主観です)なので、カルチャーに対する目配せ程度に抑えている様に感じられる。

■COCONA



「私は群れの中の狼、だから私は吠えて攻撃するんだ」の締めのリリックと共に、ダンスパフォーマンスに移行する。

■ダンスパフォーマンス

ここは普通に、ダンスパフォーマンスパートと考えて良いのではないか。

オープニングの記念写真と絡めて、なんらかの解釈がありそうなのだが、上手く説明出来なかった。



バックの目は「Eye in the sky」。

Philip K. Dickの小説(邦題「虚空の眼」)または、全てを見通す神の目。

表現としては、XGを理解するALPHAZ に見守られた平穏な世界で、本来の狼の姿で過ごしている様子。と、捉えて良さそうなのだが、最後に爆発している砦を背に立ち去って行く。



スタッフロールが眼の形になっているのもまた、重要なポイントであり、その意味を見逃して欲しくないからこその念押しなんだと思うのだが、肝心のその部分が抜けてしまった。



「外圧の壁を砕き、自分の殻を破るためには、自分の眼で世界を視て、そして考えよ」

と、そう言っているんだと思う。

P.S.

最後に残る疑問

「サイモンPDは、どこに行ったのか?」

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「XG の『WOKE UP』は HIP-HOP か?」

その論争があったようだ。あまりSNSを見ないので論争の内容は知らないが、結論は明白だ。

XG の音楽は HIP-HOP ではない。

なぜか。それは自分達で言っている。

私たちの音楽は『X-POP』である。と。

XG が「私たちの音楽は X-HIPHOP だ」と言っているであれば、叩かれて当然である。

だが、「X-POP」だと、「POPソングなんだ」と明言している。

では「POPソング」とは何か。

語彙的には「大衆向け音楽」。

音楽的特徴は「あらゆるジャンルのいいとこ取り」。

「ジャンルの厳密な『掟』から逸脱しても、ハッピーならそれが正義である。」と。

今回の「WOKE UP」は、ワールドツアーに向けて新たなファンを獲得するべく、現在主流の、最大の視聴者を抱える層へのアプローチである。

HIP-HOPへ全振りしている。

そして、それは狙った通りの結果を生みつつある。

ガチのHIP-HOP好きと思われる層からも、諸手を挙げて歓迎する者が後を絶たない。

では、XG は ガチのHIP-HOPを目指しているのか。

今年の夏はこの路線で攻めるかもしれないが、XGが目指しいるのは、そこではないと思っている。

デビュー時から「ヒップホップ/R&Bガールズグループ」と自称しているが、それは音楽的傾向をはっきりとさせるためのタグ付けに過ぎない。

ラップメンバーのラップスキルは、この後もどんどん上達し、場合によっては凌駕するであろう。

「これで、自分達がリリックを書けるようになれば、もう紛れもない HIP-HOP だ。」

と、その手の意見も聞くが、私は違うと思っている。

別に自分達でリリックを書く必要はない。そうでなければ HIP-HOPではない。と、言うものが居るなら、そう言わせておけば良い。

別にいーじゃないか、それで。

彼女達は HIP-HOP界で頂点を取ろうとしているわけではない。

X-POPとして、ポップスとして、大衆と呼ばれる全人類の殆どの人々が生息しているエリアで、頂点を取ることを、スーパースターになることを目指している。

忘れていないか?マイケル・ジャクソンは「キング・オブ・ポップ」である。

CHISA のフロウ(?)が歌よりなのは、CHISA が ガチのラップが苦手なわけではなく、敢えて X-POPらしさを残しているんだと思う。

MVのスタイリングなどを含めた全てで、ただ HIP-HOP の真似をしているだけではない。目指している音楽は X-POP なんだ。と。

ガチのHIP-HOP勢に対しても、そのニュアンスをちゃんと伝えている。

特徴的なのは「Everything, everywhere All at once, all the time All around the world」の部分、JURIA と HINATA がラップでハモっている。

もちろんエブエブの「マルチバース」のメタファーではある。

だが、他であまり聞いたことがない。

私が初めて聞いたのは「Total」の「No One Else」だ。

実は私が一番好きなガールズグループであり、その中で一番好きな楽曲だ。

残念ながら、2nd.アルバムがガラっと変わってしまい、色々あったようで短命で消えてしまった。

色々もっともらしいことを書いたけど、私の好みの楽曲を提供してくれるグルーブが現れたことに、歓喜しているだけなのかもしれない。

そしてそれが、世界に通用する実力を備えているからこそ、ワクワクが止まらない。

グループ単独でそれが出来てしまうのは、XGが初めてのように思う。

サイファーの一人ずつ順番にマイクをリレーするという作法や、R&B調の曲にラッパーが客演する形式とか、それらの決まり事を逸脱した新たな一歩を、新たなフォーマンスを、彼女達なら見せてくれるんじゃないかと期待している。

良く「XGは5年間の育成機関を経て、デビューしている。だから、あんなに素晴らしい」との意見を聞くが、良く考えて欲しい。

どんなに逸材を集めたとしても、『たった5年』でこのレベルに達しているのは、奇跡でしかない。

韓国がこの10年あまり、国をあげて取り組んで来た成果の力を借りて、この偉業が成し遂げられた。人類の歴史の中で、今、この時期で、はじめて可能になったのは事実である。

今まで誰も観たことのない世界へ、XG なら必ず導いてくれる。

Total feat. Da Brat - No One Else


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