まあどうにかなるさ

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

2017-11-19 00:30:56 | 書評

今秋映画『ブレードランナー』の続編である『ブレードランナー2049』が公開された。前作は今から35年前に公開されたSF映画の金字塔である。原作をずっと読んでいなかったので、この機会に読んでみた。タイトルは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディックの最高傑作と言われている1960年代の作品である。

第三次世界大戦で放射能灰に汚染された地球が舞台。
人々はそんな地球を離れ火星へと移住を開始していた。火星で奴隷として働かされていたのが人間とほとんど見分けのつかないアンドロイド(映画ではレプリカント)だ。
ある日、8人のアンドロイドが火星から逃亡して地球に来て、北カリフォルニアに潜伏した。
警察官であるリック・デッカードはアンドロイドの捜査に乗り出した。前任者が逃亡アンドロイドのうち2名を殺害したが、逆にアンドロイドに殺されてしまっていた。
残るアンドロイドは6人。
人間とそっくりなアンドロイドを見分ける方法はフォークト=カンプフ検査とういうある種の心理テストを行い、瞳孔の反応を見ることによって判断する。専門の捜査官はバウンティ・ハンター(映画ではこれをブレードランナー)と呼ばれていた。
その頃生きている動物は高価で、なかなか飼うことが出来ない。主人公のリックは本物そっくりの電気羊をもっていた。逃亡したアンドロイドを殺せば高額なインセンティブが入るため、本物の羊を買うことが出来る。
だが、アンドロイドは人間社会の中に巧みに溶け込み、発見は容易ではなかった。
リックは捜査協力をアンドロイドの製作をしているローゼン協会(映画ではタイレル社)に依頼する。協力してくれた協会の女性、レイチェルもまたアンドロイドだった。

映画ではレイチェルは最後にリックと共に行方をくらませる。映画ではリックは独身だが、原作ではリックには妻がいるのにアンドロイドであるレイチェルとのベッドシーンがある。
リックは見事に逃亡したアンドロイドを殺してインセンティブを受け取る。リックは生きた羊を買い、妻と喜びの時間を分かち合う。だが、そのことに嫉妬したレイチェルによって羊を殺されてしまうのである。

映画ではリックとアンドロイドの戦いに重点を置いているが、原作では、いかにアンドロイドを見つけるかといった面白さに加え、レイチェルとリックとの人の道を外れた関係が描かれていて興味深い。


現場紀信 福島第一原発

2017-03-25 11:39:37 | 書評

発行部数24000部の土木業界誌『日経コンストラクション』に篠山紀信が撮影した写真を掲載するページがある。
『現場紀信』と名付けられたそのコーナー、2月27日号の同誌の特集は福島第一原発。
篠山紀信が撮影した福島第一原発の写真が掲載されていた。
インタビューの中で篠山紀信は「東日本大震災の直後、被災地に行くことにものすごく迷いがあった。行かなくちゃ、と思いながらも、僕のカメラで捉えられるのか、写真家として何ができるのかー」と語っている。
「常に原発のことが心の片隅にあり写真家として震災を捉えた時、原発の問題は素通りできない」
今度は躊躇なく取材撮影に参加したそうである。
「未来に向かって、計り知れない長い時間を掛けて、それでも止めることなく続ける。そんな現場に触れた。すごい写真を撮ろうという思いはなかった。僕は、これから何年掛かるか分からない膨大な時間の中にある一コマに立ち会ったにすぎない。その気持ちを込めて、僕は撮った」
掲載されている写真はどれも迫力があり、目で見た空気を伝えようと言う凄みがある。

下の写真はネットから

こちらの写真もネットから

ここからの写真は雑誌から



この写真もネットから 篠山紀信ご本人 


多数決を疑う

2016-07-09 15:47:50 | 書評

慶應大学教授坂井豊貴氏が書いた『多数決を疑う』という本がある。
面白そうなので買って読んでみたが、内容はかなり難しい。
自分なりの説明を加えて要約してみようと思う。

例えば30人のクラスがあるとする。
そのクラスでABCの3人がクラス委員長に立候補したとする。
たいがいは多数決で決めることになる。だが、多数決が必ずしも民意を反映しているとは限らない。
Aに11人の支持者がいるとする。
その他の19人はAだけはイヤだと考え、BかCに投票する。
結果Aに11票、Bに10票、Cに9票入ったとすると当選はAになるが、Aはイヤだという19人の民意は反映されないことになる。
この場合、AとBで決選投票すれば、Aが11票、Bは19票となり、今度はBが当選することになる。
自民党の総裁選はこのような決め方をしていて、過半数の支持を得られた者が総裁となるので、自民党員の民意は比較的反映されていると考えられる。
しかし、選挙では、1回の多数決をもって全てが決まってしまう。現在の日本の選挙制度では必ずしも民意を正確に反映していないというのが本書の趣旨である。

本書では2000年の米国大統領選を取り上げている。
この年の共和党の候補はジョージ・W・ブッシュ、父親も大統領を務めたテキサス州知事。対する民主党の候補はアル・ゴア、環境保護と情報通信政策に長けた当時の副大統領である。
事前の世論調査ではゴアが有利、そのまま行けば恐らくゴアが勝つだろうと思われた。
だが、途中でラルフ・ネーダーが第三の候補として立候補したのだ。彼は、大企業や圧力団体などの特定勢力が献金やロビー活動で政治に強い影響力を持つことに反対してきた弁護士である。
ネーダーの政策はブッシュよりもゴアに近く、ゴアの支持層を一部奪うことになる。ゴアの票が割れて、ブッシュは第43代米国大統領に就任した。
もし、ここで決選投票をしていればゴアが当選した可能性が高いが、そうはならなかった。
ゴアが大統領になっていればイラク戦争は起こらなかったかもしれない。

オリンピックの開催地を決める方法は投票者の意向をかなり正確に反映させることが出来ると言われている。
投票した結果の一番得票数が少なかった都市を一つだけ落選させて、再び投票し、次はその中で一番得票数が少なかった都市を一つだけ落選させる…
こうして最後に決戦投票をして過半数を得た都市をオリンピック開催都市に選出させるのである。実に慎重で公平だが、実際の選挙でこの方法を採用するには時間と労力がかかりすぎる。選挙で複数回投票するのはあまり現実的ではない。

では、どうすればいいのか? 
本書ではボルダルールという方法を紹介している。
先の30人のクラスを例にとると、
有権者は3点、2点、1点を各候補に振り分ける。
結果はAが52点、Bが59点、Cが58点となり、一度の投票でBが当選する。
このルールで選挙を行った場合、何とAは最下位になるのである。
赤道直下に浮かぶ島国ナウルはこのルールを発展させた独自のダウダールールを採用している。
例えば定数2名の選挙区に5名の立候補者が立候補したとする。
すると有権者はその5名の順位を紙に書いて投票する。そして「1位に1点、2位に1/2点、3位に1/3点4位に1/4点、5位に1/5点」の配点で候補者は点を獲得するのである。その総和が候補者の獲得ポイントとなり、上位2名が当選する。
この方法であれば、民意をかなり正確に反映されることができる。

日本を含む多くの国は間接民主主義のシステムを採用している。
主権は国民であるが、有権者は選挙を通じてのみ、政治に関与することができるが、現実的には主権者である国民は立法にも執行にもほとんど関わることはできない。
人々が声を上げたとしても、ノイズとしかとらえられないこともある。
本書では小平市の都道328号線問題を取り上げている。
この問題はわずか1.4キロメートルの半世紀前に計画された都道328号線を巡る市民の賛否を巡る問題である。
予定地には自然が残る雑木林があり、予定地の隣にはすでに府中街道があり、人口減の時代にこれ以上交通量が増えることは予想されない。道路の建設には800人の立ち退きと250億円もの巨費が必要なのである。
反対派は賛否を問う住民投票を行うよう署名活動を起こし、住民投票に必要な5パーセント以上の署名を集めることに成功した。住民投票に法的な拘束力はないが、市議会でも住民投票が可決された。
だが、小平市の小林正則市長が「投票率が50パーセントに満たない場合は開票しない」という成立条件を求め、それを含む修正案が可決されてしまったのだ。
結局、2013年5月に行われた投票率は35パーセントとなり、小平市は開票しなかった。
投票箱の中身はいまだに誰も知らないのである。
小平市の小林市長が当選した市長選の投票率は37パーセントだった。
このことを考えると住民投票の35パーセントは決して低い数字とは言えない。
住民投票の開票さえ行わないというのは、住民の上げた声の強制的な沈黙化であると作者は論じている。

民主的なプロセスにより選ばれた代表者による執行の強権が存在する。だが、強権が発動される以上、民意がより正確に反映された代表者が選ばれる必要がある。


ウルトラセブン特集とガンダム特集

2016-05-21 22:21:56 | 書評

今週ライバル誌である2誌が懐かしのヒーロー特集を取り上げていた。
週刊朝日の特集は機動戦士ガンダム、対してサンデー毎日はウルトラセブンの特集で迎え撃つ。
書店で並べて積んであったので、思わず2冊とも購入した。
どちらもトリビア的な内容が掲載されていて興味深い。

まずはガンダムのトリビアをいくつか…

・ホワイトベースの乗組員は軍服を着ているが、なぜかフラウ・ボウだけが生脚なのはなぜか?
 実はパートで来ていたアニメーターが色を塗り間違えたから。

・アムロ・レイは当初「本郷東」という名前で山陰地方出身という設定だったらしい。

・ガンダムの小説版ではアムロとセイラのベッドシーンがある。

・赤い彗星のシャア専用機は赤ではなくなぜピンクなのか?
  それは制作にあたったサンライズにピンク色のセル画用塗料が大量に余っていたから。

 次にウルトラセブンのトリビア

 ・ウルトラ警備隊の紅一点、ひし美ゆり子演じるアンヌ隊員の制服はボディーコンシャスなところが色っぽいが、なぜあんなきついサイズかというと…
実は直前まで別の女優がアンヌ隊員を演じる予定だったからだそうだ。制服はその女優の体型に合わせて作られたものだった。

・アンヌ隊員がハスキーボイスなのは、実はひし美ゆり子は毎晩遅くまで飲み歩いていたから。

・アンヌ隊員は本来ショートヘアだが、最終回は雰囲気を出すためにカツラを使いロングヘアにしている。

・主演の森次晃嗣は主演なのに安月給だったため、飲み会も断ってばかりだった。アンヌ役のひし美ゆり子より安かったらしい。

・森次晃嗣は免許を持っていなかったのでポインターを運転するシーンは運転を代わりにする専門のスタッフがいた。

ウルトラマンシリーズとガンダムシリーズは今でも手を変え品を変え続いていることが凄い。
今度DVD借りてこようかな…


東京ラブストーリー

2016-01-30 23:49:14 | 書評

1989年にビッグコミックスピリッツで連載が始まった紫門ふみのコミックである。柴門ふみは好きな作家の一人だ。
当時スピリッツは毎週(もしかしたらこの頃はまだ隔週だったかもしれない)買って読んでいた。
主人公の永尾完治の同僚赤名リカの自由奔放さは今までのコミックで描かれたことのない新鮮なものだった。
当時としては驚くようなセリフ「カンチ、セックスしよう!」は今でも印象的だ。
1991年には織田裕二、鈴木保奈美でドラマ化された。いわゆるトレンディードラマの走りとなった作品である。

25年ぶりに読み切りの続編が掲載された。
ずいぶんと久しぶりにスピリッツを購入した。
改めて前作を読みたいと思ったが、当時購入した全3巻は処分してしまい、手元にはない。

スピリッツに25年前の『東京ラブストーリー』のストーリーが掲載されていたのでそのまま転載する。

愛媛から上京して市場調査会社に就職した永尾完治(カンチ)と、同僚となったアフリカ育ちの自由奔放な赤名リカ。
なぜかリカになつかれるカンチだが、高校時代の初恋の人で、幼稚園に勤める関口さとみと再会。
同じくさとみに惹かれる幼なじみの医大生・三上健一も加わり、20代前半の初々しくも、もどかしい恋愛模様が、きらびやかな東京を舞台に繰り広げられる。
そして最終的には、リカはある男性との子供を身ごもり、カンチは彼女と別れて、さとみとの人生を選ぶ。

そして25年後、カンチの娘が結婚したいと言い出した相手は赤名リカの息子だった。

物語の最後、リカの回想。
幼い息子を前に涙しながらつぶやく言葉が切ない…