まあどうにかなるさ

日記やコラム、創作、写真などをほぼ週刊でアップしています。

キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるかデラックス

2011-05-24 18:03:04 | 書評
本のタイトルである。
書店で平積みになっているこの本のタイトルについ、惹かれてしまい、思わず購入してしまった。
これがなかなか面白い。
『日常生活のなかには“やってみたいけど、ちょっと勇気がいるような”と、ついためらってしまう、そんなシーンがちょくちょくある。
ヤクザに絡まれている人を助けるとか、そんな大げさな話じゃない。もっと些細な、もっとビミョウな、ほとんどどうでもいいこと、うまく説明できないが、やってやれないことはないけど少しばかり度胸がいるとか、恥ずかしい気持ちに打ち勝たなければならないとか、そういう種類のことだ』
そんな書き出しから始まり、作者の北尾トロ氏が実際に体験したことをレポートした内容である。
必然性もなく、特に誰からも褒められるわけでもなく、しなかったところで困ることもないので普段はやらない。やりたいけど、行動に移せなかったそんなことを、作者は果敢にチャレンジしていくのである。
電車に乗っていて、ふと目についたオヤジが気になって見ているうち「どんな人なのか、話してみたい」
作者はそんな要求がこみ上げてくることがあり、できれば居酒屋に誘って途中下車して、いっしょに飲むことができれば理想だと思う。
たまたま電車に居合わせたオヤジに声をかける。
しかし、何人かに声をかけるも、何かの勧誘かホモのナンパと勘違いされ、ささやかな望みはなかなか叶えられない。
もし、僕が見知らぬ男性に声をかけられ、居酒屋に誘われても、やっぱりついて行かないと思う。当たり前だけど、見知らぬ人はどうしても警戒してしまう。
作者は話しかける内容や路線などをいろいろ工夫するが、なかなかうまくいかない…
こういった実際にチャレンジした内容がレポートされている。
タイトルにもなった「鼻毛が出ていますよ」と面と向かって言えるかの章。
気の置けない仲の相手ではなく、初対面に人に対して、果たして、こういう事が言えるかどうか、作者は名刺交換したばかりの若い男性に勇気を出して注意する。
気まずくなることが予想されるが、結果は意外にも感謝されるのである。
知人に貸した小額金銭の返済を迫る。
これは、誰でも経験があるのではないだろうか、小銭など、ちょっと足りないからと貸した小額の金銭は、忘れられることが多く、返ってこないことがある。
しかも、小額ゆえ、なかなか返せと言いづらい。
好きだと言えなかったあの女性に23年のときを超えて告白する。
高校のとき、同じクラスだった女性にどうしても打ち明けられなかった気持ちを告白する章がある。作者は40歳ですでに結婚している。
高校卒業後一度も会ってない女性の実家へ電話をする。
偶然、女性は実家に帰っていて、再会の約束を果たす。
若い頃、どうしても打ち明けられなかった気持ちをそのままに今までずっと暮らしている人間は多いと思う。
今さら打ち明けたからといってどうなるものではないし、大切な思い出として胸にしまっておく方がいいようにも思う。女性にも既に家庭がある。
でも、作者は勇気を出して告白するのである。
その他、作者はいろいろなことにチャレンジする。
公園で遊んでいる子供たちに声をかけ、いっしょに遊ぶ。
電車でマナーの悪い乗客を叱り飛ばす。
激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する。
クラス全員でさんざんイジメた担任教師に謝罪する。
母親に恋愛時代の話を訊く。等。
どうでもいいようなことを少し勇気をだして行動する。
その先は後悔するのか達成感があるのか、それは実際に行動してみないとわからない。


デフレの正体

2010-09-17 19:14:00 | 書評
現役の銀行員、藻谷浩介氏が書いた『デフレの正体』を読んだ。
日本経済の本質を人口の波で説明した目からウロコが出るような著書である。景気が悪いのは「景気循環」では説明することは出来ない。本質的なことは「日本人の加齢に伴う生産人口減少」であると。
今までの日本経済の波は生産人口(15-64歳)の波で説明がつく。例えば、バブル経済は団塊の世代がマイホーム購入の適齢期を迎え、大量に不動産を購入した結果であり、団塊の世代がマイホームを購入し終えた時点でバブル景気は終焉を迎える。
この生産人口は96年をピークに減少を続けており、それと同時に小売販売額の総額も縮小に転じている。
作者はこの「内需の縮小」の犯人は「地域間格差」ではないことを数字をあげて証明している。そして驚いたことに輸出が伸びても国内の景気には必ずしも結び付かないと結論付けている。事実、バブルのときに41兆円だった輸出は07年には80兆円にも上っている。だが、景気がいいと実感している人は少ない。国際経済競争の勝者である日本にこれほどの不景気をもたらせた犯人こそ、「人口の波」なのである。貿易で得た利益は一部の株主などを潤すだけである。
本書で触れているが、日本の相続の平均年齢は何と67歳。もう消費意欲はほとんどない年齢である。そして二十数年経つと、また高齢者が大金を相続する。日本の個人預金1400兆円のかなりの部分をもつ高齢者の上の方でぐるぐる回っているだけで、下の世代に降りてこない。
若い世代の所得をもっと増やさないと景気は良くならない。
本書は、生産年齢人口を増やすためにもっと主婦が仕事に就くべきであるとも書いている。
少なくとも移民による生産年齢人口の増加はコストがかかるため、望ましくない。


永遠のゼロ

2010-08-03 22:51:10 | 書評
「特攻ってなに?」
先日、百田尚樹著『永遠のゼロ』を読んだ。
特攻で死んだ祖父のことを姉弟が調べていく話である。
当時の特攻隊のことも詳しく描かれていたので、中学校2年の息子に読むように薦めた。
だが、息子は特攻隊のことを知らなかった。
教えたことはなかっただろうか?
考えてみると現在、テレビや新聞などで特攻隊のことが取り上げられることはほとんどないように思う。学校でもそんな話題はしないだろうし、先生も社会の授業では教えないのかもしれない。
僕が子供の頃は当然のようにみんな知っていたと思う。
父は小学校の頃に戦争を体験しているし、まだ、第二次世界大戦の記憶が残っていた時代だった。
僕の父は70を越え、世間では戦争をリアルタイムで体験した人はどんどん少なくなっていく。
記憶も薄れていっていく今、戦争のことをきちんと描いた作品を読むことは意味のあることだと思う。
この作品は小説として描かれているが、特攻と自爆テロを混同する風潮があることに作者の苛立ちを感じる。戦争を美化するわけではなく、守るべき人のために死んでいった特攻隊員の精神には心から敬意を払うべきであると訴えているように思う。
特攻は最悪の作戦ではあったと思う。彼らは戦争の犠牲者というよりは当時の海軍に殺されたというべきかもしれない。
特攻隊員が残した遺書には『お国のため』などと書かれていることが多いが、これは検閲があったためである。特攻隊員は決してマインドコントロールされていた訳ではない。
この国の未来を信じ、家族や愛する人のために死んでいったのである。
特攻で死んだ人が、今この国を見たらどう言うだろう?
平和でいい国だと言ってくれるだろうか?それとも自分勝手な人が増えて、こんな国のために死んでいったのではないと怒っているだろうか?


35歳を救え

2010-03-08 23:11:44 | 書評
NHKで放送された特集『35歳を救え』の書籍版を読んだ。
放送は観なかったけど、今の35歳は10年前の35歳より平均年収が200万も低いというショッキングな内容である。
年収別のグラフが掲載されていて、それを見ると、確かにグラフの最頻値は200万少なくなっている。
10年前の35歳の世代も、もしかしたらその後年収は減っているかもしれないが、今の35歳が200万も年収が少ない背景には団塊ジュニアであるこの世代の人口が多いために非正規雇用者が増加していることなどがある。
200万という数字は車が一台買える値段だ。
家のローンの一年分もこれくらいの数字だろう。
それがまるまる減ってしまったのが今の35歳である。
何も今の35歳が他の世代に比べ怠け者であるわけでも能力が低いわけでもない。
製造業は中国や韓国など賃金の安い国の労働者との競争にさらされ、製造拠点が海外にシフトした結果、かつての労働力を必要としなくなっている。
デフレにより、負のスパイラルの被害を最も受けたのがこの団塊ジュニアの世代だ。
この世代は、受験や就職も他の世代以上の競争にさらされ、最初の就職に失敗すると、なかなか浮上するのは難しい。
本書では、具体的に取材した中から、厳しい現実からなかなか這い上がれない35歳の素顔を紹介している。
突然の配置転換により年収が400万から300万に激減し、二人目の子どもを断念した印刷会社に勤める男性、自動車部品製造メーカーに勤めながら、マイカーを手放さなければならなかった男性、夫の収入が半分以下になり、幼い子どもが眠ったあと夜中から朝までコンビニでバイトをする女性など、生々しい事例が続く…
その他にも多くのデータを掲載しているが、年収の話よりもショッキングなのは、その世代の女性の現時点での出生率が0.86であること。
この数字は日本の平均値をはるかに下回る。少子化がさらに加速する可能性がある。
本書では、このまま放置しておくと、今後20年、日本経済の成長率はプラスにならないと警告している。
イギリスやデンマーク、フランスなどの海外の事例や一部の自治体での取り組みなどを紹介し、この世代を救うヒントを掲載している。
NHKでは35歳の1万人以上にアンケートを実施し、本書にその結果がまとめられてある。
不安に思うことは何ですかとの問いに、給料が上がらない、給料カット、など収入に関することが続き、子育て、結婚などの回答が続く。特になしと答えた人はわずか3.6パーセントだった。
不安のない人はどの世代にも多いと思う。
でも、世界第2位の経済大国の35歳で不安のない人がたった3.6パーセント…
あまりにも低い数字だと思う。


いじめについて

2010-01-26 18:37:41 | 書評

余り考えたくないことだが、もし、自分の子供がいじめに遭ったら・・・
僕は幸いにも、ほとんどいじめとは無関係にこれまで過ごしてきた。
小学校でも、中学校でも周りにいじめはなかっと思う。
高校の時は少しはあったが、現代に報道されてるような深刻ないじめではなかった。せいぜい使い走りがあった程度。
現代のいじめは大人が想像する以上に残酷で、誰もが被害者になりうるという。
息子が小学校のときに学校でいじめはあるの?と訊いたことがあるが、ないとの返事が返ってきた。
ほっとしたが、水面下のいじめに息子は気がついていないだけだったかもしれない。
もし、わが子に火の粉が降りかかったとき、親として何が出来るだろうか?
『教室の悪魔』という本がある。
児童相談所に勤める児童心理司が著した本で、いじめに対する対処方法が具体的に書かれている。
それまでのいじめに関する本は、命の尊さを書いたような少し的外れなものや、格闘技を習わせるのも一法などと、非現実的なことが書いてあったりするものが多かったように思う。
この『教室の悪魔』はいじめの恐るべき実態や具体的な対処法が書かれてあり、とても興味深い。
いじめの実態の中で特に衝撃的だったのは、日によっていじめのONとOFFを使い分けるというもの。
クラスの全員からいじめに遭っている子が、ある日学校に行くと、みんな普通に接してくれる。ああ、いじめは終わったのだと喜ぶのもつかの間、喜んで次の日に学校へ行くと、再びいじめが待っている。
いじめる側の子供たちは大人にも想像できないような人の心を弄ぶ術を知っているのだ。
この本を読む限り、いじめは本人にも原因があるというような意見が全く的外れであることがわかる。
そして、現代のいじめは大人の想像をはるかに超えるほど残酷で凄惨だ。
いじめの対策として、まず、最初に親がすること。
それは、自分の子供がいじめに遭っている事実を知ることだ。
いじめに遭っている子供は、そのことを親に隠そうとするので、親が気づかないことが多い。
・最近、よくものをなくすようになった。
・学校のノートや教科書を見せたがらない。
・学校の行事に来ないで欲しいと言う。
など、32項目のチェックリストがこの本に書かれてあり、まず、親が自分の子供がいじめに遭っていることを把握することが重要だと述べている。
子供がいじめに遭っていると確信したら、最初にすることは学校を休ませることだそうだ。
その上で必ず子供の同意のもと、学校に相談に行くわけだが、このときは担任の先生だけでなく、教頭か学年主任に同席してもらう。
いじめは担任の先生だけでは解決できない場合が多いためだ。
このとき、学校の責任を追及することはしないで、協力を要請するという立場をとること。責任を追及すると学校とは敵対関係になってしまうからだそうだ。
本では、このあと、いじめを解決した具体例が書かれてあるが、いじめは誰に対しても行われる可能性があり、また、誰もがいじめをする側になる可能性もある。
この本を読み、感じたことは、昔に比べ、明らかに子供たちの人間関係が変わってきているということだ。
いじめの質も、「1対その他のクラス全員」という構図になっている。
昔はいじめっ子もいたが、いじめられっ子と仲良くする子供もいたと思う。
いじめに参加しないと次は自分の番という恐怖感が、いじめの側に立たせているのだという。
本屋で探しても、いじめられた側の本はあってもいじめた側に立って書かれた本はない。
恐らく、いじめに遭った人間以上にいじめたことのある人はいると思うが、その事を正直に発表する人はいないのだろう。
もし、自分の子供がいじめる側になったら・・・
それも、余り考えたくないが、こちらの対処方法もかなり難しいことだと思う。