まあどうにかなるさ

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グラゼニ

2012-04-21 00:27:39 | 書評
週刊モーニングに連載中の『グラゼニ』というコミックをご存知だろうか?
原作 森高夕次 漫画 アダチケイジ の一風変わった野球漫画である。現在単行本は4巻まで発売されている。
『巨人の星』や『ドカベン』など、従来のスポ根モノとは一線を画す。よく、プロ野球は夢を売る商売だと言われるが、この漫画は金銭面からプロ野球を描いている。
主人公は神宮スパーダースに所属する中継ぎ投手、凡田夏之介。左のサイドスローという特長のある投法を武器に辛うじて1軍にとどまっているプロ8年目の26歳独身。
彼の年収は1800万。サラリーマンではちょっと考えられないほどの高い額である。
しかし、プロ野球選手はサラリーマンよりずっと活躍できる期間が短いため、人生の収支としては全然合わないのだという。
解説者やコーチになれる選手は一握り、プロ野球選手はたいがいはつぶしが利かないので、引退の翌年から年収100万円代ということもざらにある。
主人公はプロ野球選手名鑑を頻繁に見ていて、常に対戦相手の年俸を頭に入れている。
所詮プロは金、自分より年俸の高い選手は上に、自分より年俸の低い選手は下に見てしまう。これがぶっちゃけ、プロの野球選手というものだそうである。
中継ぎ投手の職場はほとんどがブルペン、マウンドにも行くが、圧倒的に長い時間を過ごすのがブルペンである。そこで、肩を作るためのキャッチボールを続け、出番を待つ。
中継ぎ投手はとにかく投球数が給料に反映されるという。
ある日、凡田夏之介は年俸700万の代打と勝負をする。
この打者は、30歳、幼い子供二人を抱えている。
もし、ここで打てなければ、まず間違いなく2軍に落とされ、来期の契約はないかもしれない。幼い子供を抱えた打者の家族の将来が夏之介の脳裏を横切る。
だが、ここで、この打者を抑えなければ明日はわが身なのである。
夏之介は、お気に入りの定食屋の女性店員に思いを寄せる。
彼女は、別の球団の熱烈なファン。
だが、相手球団の中継ぎ投手の顔などは全く憶えてくれない。彼女には、毎回のように普通の客としての対応しかしてもらえない夏之介。
でも、現実はこんなものかもしれない。
グラウンドには銭が埋まっている。それを略した言葉がタイトルになっている。
普段、プロ野球を観る時は年俸何億かのスター選手ばかりに目がいきがちだが、プロ野球選手は夏之介のような辛うじて1軍にくらいついているような選手の方が圧倒的に多い。
そして、そんな彼らがプロ野球を支えている。
そこにスポットを当てたこの作品は、よくできた大人の漫画だと思う。