昔、ある人にひどいことをしてしまったことがある。
ものすごい剣幕で叱られたので
「あれはわざとじゃなかった」
その一言がどうしても言えなかった。
機会があれば謝ろうと思っていた。
でも、その機会がないまま時が過ぎていった。
それから数十年後、その人はすでに他界されたことを知らされた。
「あのときはすいませんでした」
もう、この一言は伝えることはできない。
ほんとうは大好きだった。
そのことも、もう伝えられない。
今、伝えておかなければ伝えられなくなる言葉がある。
身近にいる人、少し遠くにいる人
謝罪の言葉、感謝の言葉
伝えるには少し勇気が要ることもある。
伝えないほうがあるいはいいこともある。
でも、伝えることができなくなったとき
その言葉は永遠に行き場を失ってしまう。
今日も誰かと会い、誰かと話す。
でも、その人と明日も会えるとは限らない。
当たり前のような瞬間を大切にしなければいけないと思う。
行き場のない言葉をこれ以上ふやさないように。