まあどうにかなるさ

日記やコラム、創作、写真などをほぼ週刊でアップしています。

少年犯罪の実名報道について

2015-03-14 23:57:33 | 社会問題

中学一年生の上村遼太君は真冬の川で無理やり裸にされて泳がれたあと、刃物で切りつけられて殺害された。

極めて残虐な「川崎中一殺人事件」は少年3人が逮捕される。

先週発売の「週刊新潮」に主犯格の18歳の少年の実名と写真が掲載され、話題になっている。但し、主犯格の少年とともに逮捕された2人の少年については従属的な立場だったとして顔にモザイクをかけ、匿名で報道している。

ネットではすでに実名や写真は出回っているが、マスコミの報道としては初めてである。

少年法には罪を犯した少年の氏名や容貌を報じてはならないとある。テレビや新聞、他の雑誌でも実名報道はしていない。

 

週刊新潮の同じ号に3ページに渡る『「少年法」と「実名・写真」報道に関する考察』とされる記事が掲載されていて興味深い。

少年法をそのまま適用すれは、週刊新潮の記事は違法という事になる。この法律に罰則規定はなく、同誌では過去にも何度か少年犯罪について実名で報道し、顔写真の掲載に踏み切っている。

同誌の言い分として、過去の判決をあげている。98年に起きた「堺市通り魔殺傷事件」で、19歳の犯人の実名を報じたケースだ。少年法に抵触していることから、犯人が名誉毀損で訴えてきたのである。この裁判の控訴審で新潮側は逆転勝利しているのである。

判決の要旨は『仮に一部の市民が(報道によって)名前を記憶していたとしても、そのことによって直ちに更生が妨げられることになるとは考え難い』としている。

そもそも現在の少年法ができたのは昭和23年のこと。戦後の物のない時代、空腹に負けてパンなどを万引きするような非行少年を想定していた。

しかし、最近は大人顔負けの少年による残虐な犯罪が増えてきている。18歳選挙権と合わせて少年法の適用年齢を引き下げるべきという議論は当然起こってくると考えられる。

20歳の青年が万引きで実名報道される一方で19歳の凶悪犯罪犯が自動的に匿名になる。この論理矛盾を説明できるだけの合理的な理由は見当たらないと思われる。

それでも、僕は少年の実名報道には反対である。

少年法は犯罪への罰則という事より更生させるという側面がある。

 

1988年東京都足立区綾瀬で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件。

4人の少年による実行犯が女子高生を猥褻誘拐し長期間監禁、そして強姦、暴行を繰り返した。その期間は2か月にも及ぶ。その後殺害しドラム缶に遺体を入れてコンクリート詰めにして遺棄した残虐な事件である。

4人の少年の犯行は極めて悪質である。そして、監禁は実行犯の一人の自宅で行われており、周囲の大人がなぜ救えなかったのかということも衝撃的だった。

この事件で主犯格の少年は20年の実刑判決を受け服役した。

その後、出所した当時の主犯格の少年のことがテレビで放映されていた。

顔もモザイクがかけられ、声も変え、もちろん匿名である。彼が住む場所なども特定できないように構成してあったが、何と彼は結婚して子供をもち、幸せそうな家庭を築いていたのだ。結婚相手には事件のことを打ち明けたという。

奥さんへのインタビューが印象的だった。

事件のことを打ち明けられ、ずいぶん悩んだが彼との結婚を選んだという。

奥さんと子供にとってはかけがえのない夫や父となっているのだ。

更生したと考えるべきである。

それでも遺族は彼を許すことはできないだろうと思う。

凶悪犯はたとえ刑期を終えても幸せになる権利などないという考えもあるだろう。

だが、人から更生する機会を奪うことはできないはずである。少年であればなおのこと、実名報道によってその機会が奪われる可能性がある以上、するべきではないと考える。

実名報道を伏せたところで、ネットで拡散してしまうので規制は意味がないかもしれないが、だからといってなし崩し的に容認するのは違うと思う。