まあどうにかなるさ

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本当の祖父

2024-07-21 17:28:32 | 日記

母はお人好しで涙もろい。

今月で90になった。すっかり体も衰えてきた。

実家の浜松で下の妹と2人で暮らしている。

 

母が若い頃、宝塚に憧れたが、身長が足りず諦めた。

NHKのアナウンサー試験に受けるも、不合格。

スポーツはまるでダメだが詩や俳句は上手い。

若い頃の写真を見ると阿川泰子に似ている。

そんな母だ。

 

僕が大学生の夏休み、長期で実家の浜松に帰っていた。

ある日、母が突然僕に言った言葉。

「ともちゃん、ほんとうのお祖父さんに会いたくない?」

 

何のことか判らなかった。

母方の祖父は僕が幼稚園の時に他界している。

 

母が結婚する日、実は本当の子供ではないと祖母から打ち明けられたそうだ。

祖母の兄の子供だと。

母が伯父だと思っていた人が本当の父だったということになる。

 

母は妾の子で、まだ母が小さい頃、実母が亡くなり、実父の妹に預けられたが、そのことは母の記憶にはない。。

 

その話は、初めて息子である僕に打ち明けてくれた。

父にも僕の妹にも話してなかったらしい。

 

本当の祖父が住む愛知県瀬戸市へ二人で出かけた。

ここは母が高校生まで過ごした地だ。

 

駅から降りてタクシーの運転手に、母は場所ではなく、個人名を告げる。

「K藤○○さんの家へ」

それだけで、タクシーの運転手には通じる。地元の名士らしい

昔、祖父は瀬戸市の市会議員を何年もやっていたそうだ。

 

古い建物の家に通され、初めてほんとうの祖父と対面した。

顔は母と似ていなかったけど、マメによく動くところはそっくり。

この人の血が流れているのかと思い、見ていた。

 

僕が祖父に会ったのはそれ一回きりだったが、その数年後に祖父は他界した。