日々ふさおまき

走って跳んで歩いてます。

秋の北海道旅行 ②チミケップホテル 一人ディナー

2012-09-30 23:03:03 | 旅行記

 

森の県道は舗装道路から砂利道になり、やがて見えてきたチミケップホテル。

瀟洒な森の音楽堂を思わせるような建物です。

 

部屋は8室。それぞれ違った間取りだそうですが、私が予約したのはダブルルーム。

ふかふかの羽毛布団に、枕が4つ、そしてクッションが2つあって、本を読むのの寝ころぶのも自由自在。

木の香りのする家具にアメリカンキルトが、窓から見える緑にマッチします。

到着したのは午後2時30分、ウェルカムドリンクを頂いて、チェックインタイムの15時より少し早めに入れていただきました。

久々の長距離ランニングと、朝5時30分出発の寝不足がきいたのでしょう、

荷物を置いて、部屋の中をあらかた見て回り、風の音しかしない部屋でベッドに腰掛けたとたん、

体は枕の間にうまり、そのまま30分ほど気持ちよくし目を閉じておりました。

 

このホテルに泊まる期待の大きなところは、原生林と湖に同化して、心を開放すること。

眠るのも大切ですが、やはり外に出ないと。

良い具合の気温で、長袖一枚にベストをつけたくらいでちょうどいい。

ホテルの玄関を出て50mも歩けば、そこはチミケップ湖、そして桟橋が湖面に延びています。

幸いまだ誰もいません。

桟橋の上であぐらをかけば、目の前に広がる緑とあふれる水が静かに染みいってくるようです。

陽が落ちる17時まで、少し本を読んだり、あとからやってきたルアーを投げるご夫妻と言葉を交わしたりしながら、

ここに来た目的の一つを果たしたのでした。

 

少し冷えたでしょう、ホテルマンの気遣いで暖炉に火がくべられました。

樺の薪が暖かく炎を上げます。

 

いったん部屋に帰って、180㎝長の手足を悠々と伸ばせる風呂に入って体を温めると、

お腹に空き地が広がりました。

いい具合です。

18時30分、ディナータイムのスタート。

「妻へのお土産に」と言い訳をして、お料理の写真を撮影する許可も頂きました。

一人ディナーのわがままですが、おかげさまで一皿一皿をじっくりと味わい記憶に刻むことが

できました。

①小さなアミューズ パイボールにチーズ入り

 メニューにない、焼きたてのパイ生地が、直径2センチほどの大きさに香りを詰めて、

 食欲に火をつけます。

 

②ブラックオリーブとアロエ プラムのスープ

 ブラックオリーブと爽快な冷製プラムの果汁に出会いがあるなんて。

 

③厚岸産カキ貝、柚子ジュレ

 柚子のジュースで煮たという身厚のカキは、海の香りも一切無く、

 ひたすらにふくよかで、味も含みも丸々としています。

 レモンを搾ることはよくございますが、柚子も良いものでございます、

 とウェイターの方が添えてくれました。

 

 自由奔放なお料理です。あまり多くはない仏蘭西料理の経験ですが、

 お皿の中のコーディネーションが、ある種のサプライズをもたらす切っ掛けになっています。

 思わず、飲めない私が白のグラスワインを頼んでしまったほどの驚きでした。

 

④豆乳フォアグラムース

 濃厚なフォアグラが豆乳で滑らかになっています。

 そのままでぺろり、では赤いソースの正体は?

 クランベリーでした。

 強い甘みが、重ためなフォアグラと共に口に含むと、一気に華やぎます。

 ぱっと花が口の中で咲いたみたいとでも言うのでしょうか。

 三口目は、ブリオッシュにつけていただきました。

 牛の脂分に位相を違えたフォアグラは、これまた層の厚さを流し出してくれて

 口の中はますます複雑な味わいに満ちていきます。

 

⑤網走産タラバガニとコーンのリゾット

 暖かな一品。牛乳とともに熱を加えられると、タラバガニは香り立ちます。

 お皿が席に近づいてきただけで、思わずそちらに顔をむけたほど。

 具だくさんのミルクスープとも言えます。

 

⑥鯛のブレゼ アメリケーヌソース

 お野菜が力強い、だから北海道。

 

⑦つべつ産和牛ヒレ肉のロースト マスタードソース

 お肉が好きという方、是非この一品を食べるためだけでもチミケップホテルを訪ねることをお勧めします。

 肌理の細かい肉質は、口当たりが絹のごとし。それを柔らかく味わい深くローストするシェフの腕。

 赤身なのに溶けていくのは何故?

 一口、また一口と楽しむごとに残りが減っていく悲しさといったら。

 津別町の名を冠した和牛ブランドは最近できたものだとのこと。

 以前ブルータスに載っていた料理では、十勝産和牛となっていました。

 幸せな育ち方をしている牛さんなのでしょう。

 あまりに美味しかったので、

 ディナーの締めくくりに、お肉の色をもう少しお見せしましょう。

 

 

 一人で食べてごめんなさい。

 食べ終わって最後に椅子で背をただし、ごちそうさまとつぶやきました。

 幸せな時間。

 ワインで当然となった私は、食後のコーヒーには何も反応せず、

 部屋に入るなり羽布団と再び一体化して、幸せな深い眠りを、

 何も考えることなく味わうことができたのでした。

 

 


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