雨は夜更け過ぎではなくて、午後三時半には傘が要るくらいの降りになりました。
宇治から京阪線で黄檗乗り換え、JRです京都に出ました。
ここで私たち、意外な行動に出ます。
南側出口から新しくできたイオンモールに向かいました。目指すはユニクロ。
なんでわざわざ旅先で、と自分でも突っ込みたくなりますが、理由は今日明日限定で二千円割引になっている、フード付きのダウンパーカです。
実は二年前に同じものを買ってたのですが、薄さと軽さが冬のランニングにはうってつけで、寒がりの私には欠かせないアイテムになっています。
でも、二年着ていれば汗を吸い込みます。天日干しをしたりファブリーズ漬けにしたりもしましたが、そろそろ限界です。
その上、ユニクロのダウンは結構特売に出るのですが、フード付きだけは決して値段が下がらず、ほとんどディスカウント待ちの辛抱合戦(自分の独り相撲です)。
それが今朝の織り込みチラシに、2日限定として、然も緊急入荷とまで銘打って売り出しになりました。
我ながら、ユニクロフリークではないかと思います。でもこのシグナルを見逃すわけには行きません。
そんなわけで、わざわざ京都駅で途中下車してまで目指す服を買い、気分良く今日のお宿、今出川は御所の西にあるブライトンにチェックインしました。
この数年、年末の京都旅行は蹴上のウェスティン都ホテルでしたが、ブライトンは、かつて敬愛する叔父上が京都で指折り、と高く評価していたので、
一度泊まってみたいと思っていました。
住宅街に突如として現れるホテルは、一歩中に入り、高い吹き抜けと、心地よい人々の行き交うざわめきに迎えられると、社交という言葉が頭に浮かび、やや晴れがましい高揚感に包まれます。
スタッフの方はもちろん礼儀正しく、身のこなしもキレのいい人ばかりです。
案内された部屋はリニューアルされたばかりの、リビング付きの広いお部屋です。
デザインもアクセントありで、楽しく内装を見渡すことができます。
喜びがお腹をすかせたのでしょうか。
風邪気味で食欲不振な二人で、リビングに座り、関西の雑誌『meets』とネット検索で空想を巡らせます。
蒸し寿司、お好み焼き、パンとスープ?
絞り込んでいくうちに、第一夜は徒歩圏内を条件に(雨ですから)、胃袋八割くらい食事量で、京都だから、という特別感も有る店にしようということになりました。
テクテク、ザーザー。
京都府庁前を南に下り、丸太町通りを渡って夷川通りにぶつかったら東へ。
こりゃ、彼女がいなけりゃ迷子になってるな~、カッパの集会に迷い込んでも不思議手はないな、という程に家々の間を抜けて20分近くは歩きました。
『デミ』さん。ハンバーグメインの洋食屋さんです。
美味しいのはもちろん、これが京都、という味が隠れています。
それは、味の引き算。
これほど食後の印象がいいハンバーグをこれまで私は知りません。
息が香辛料に色づき、脂の膜が口の内側に出来てしまうような体験は、美味しいハンバーグを食べたと思った食後にもよく感じることでした。
それが、『デミ』さんでは全くない。
挽き肉は、肉をミンチにした味わいの広がりだけで特徴となり、決して複雑な香辛料やつなぎで味を足したりはしていません。
ニンニクやラードを使わずに調理する、京都中華とつながります。
ドミグラスソースは、食べ終わりになっても固まらない。つまり、油脂が少ない。そして甘ったるくなく、本当に肉にはない旨味を補い、相乗効果を生むためのソースなのです。
そう、鰹節のイノシン酸と昆布のグルタミン酸の関係!
大きな満足で、腹八分目なれど胸は一杯。
食後のバーに行ければ大人の夜ですが、下戸な私たちは、もう少し夜の街を歩いて、静かに灯りを輝かせる珈琲店に入ったのでした。
『王田珈琲店』
夷川御幸あたり。
私はブレンド、彼女はカフェオーレ。
カウンターに座って、豆を挽き、ネルで10分近くかけてドリップしてくれるマスターの技を眺めさせて頂きました。
コーヒーのエキスを凝縮した、雑味のない味わいです。
ゆっくりゆっくり、お湯に味を写していく淹れ方、という感じです。
この味があれば四方山話も弾み、一時間ほどスツールで憩わせて頂いて、
夜の御所を回り込むようにして、
ホテルに戻ったのでした。