蝦夷富士と呼ばれる、すそを広げる山姿が美しい羊蹄山。
その麓は砂礫地でアスパラ作りに向いていると聞きました。
北海道の心優しい友人から、羊蹄山麓・喜茂別町産のアスパラをいただきました。
りりしく立ち上がった緑の野菜は、口に入れるとパワー全開。
濃い味のエキスがみずみずしくほとばしり、少し時間差をつけて香りが膨らみます。
春爛漫、大地の力が詰まったお野菜は、北海道の激変する季節の象徴です。
続いてホワイトアスパラもいただきます。
出自はまったく同じでも、育て方だけでこれほど味が違うのか・・
白面美人の内側から静かに広がるのは、グリーンとは違った
少し粘度を強くして、ゆっくりと染みとおる様な深い味です。
裏にわずかな苦味に続く味覚の尾を感じさせるのが、ホワイトアスパラの
離れがたい魅力だと思われます。
伸びる茎に土をかけ、ずっと日に当たらせることなく収穫される
白い女王。北の地の美しき女性たちが内に秘める、
強い意志とあでやかな微笑みになぞらえてみたくなるのでした。
朝から楽しい味が誘ってくれた想像の旅。
グッドモーニングをいただきました。
東京は朝でも20度、しかし旭川空港に着くと12度。
そして向かうのは十勝連峰の一角、上ホロカメットク山。
登山道入り口では雨、渓谷沿いを上がりその源流と交差するまで標高を上げると、
牡丹雪です。
渓谷を見下ろすと、雪解けに引きずられて谷へ落ちていく大きな岩が見えます。
早々に引き上げ、上ホロ山荘へ。櫟の湯船がかぐわしい温泉で、
人恋しそうなキタキツネの振り向き顔。様子をうかがう表情です。
食べ物を上げることはできませんが、しばしにらめっこ。
北海道、ふふ、な気持ちに。
そして、宿はいつものペンション和田。北海道勤務時代に通い始めた、野菜料理が特別に美味しく、
オーナーのMUさんの暖かくほんわかした人柄がこの上なく居心地の良さを供してくれる宿の
もう一つのよりどころが、旅の友も喜ぶ立地。
牧草地の真ん中で、周りを囲むのは東大の演習林。
ここは麓郷、旅人が別世界に求める多くのものがあります。
ちなみに地名まで特別です。麓郷別天地・・・
今回の旅の、いろいろ見聞き出会いの意外部門特別賞が、布礼別(ふれべつ)の森での時間。
最初は威嚇の声を上げていたトラちゃんが、数分後には彼女におなかを見せてじゃれていました。
少し前まで多くの若人が未来を夢見ながら共同生活を送り、今は新しい人が住まうために
開拓を始めたこの森。その新しい方とは行き違って会えませんでしたが、おそらくその方に馴染んでいるのだろう
トラちゃんは、毛のつやも良く、親しげに遊んでくれて、十分にこの森のぬくもりを私たちに伝えてくれるのでした。
旅先のいろいろは、心の奥行きを深めてくれます。
直径20cm。
エゾアムプリンの登場です!
薄いパラフィン紙がかかり、すりガラスの向こうに見えるようなプリンの景色。
ささ、開きます。
素焼きの平皿に、ぶなの紅葉のような濃い黄色を見せるプリンの肌が現れます。
紙を取ったとたん、甘い香りが。
直径20cm、20cm!比較の一円玉もライターも、最近で言えばI-Podも置かない私が
悪いのですが、とにかく20センチの大きなプリンだということを頭に描いてください。
手が伸びると少し比較できるかと思ったら、遠近法で以外にプリンが小さく見えてしまった。
だけど繰り返しますが、直径20センチのプリン、タユタユする広い海です。
しかも濃厚です。原料の卵はきっと黄身がオレンジ色に燃えていたことでしょう。
色が濃ければ味も濃い。クリームも上質で、滑らか。
プリンの大きなしずくは、大きなスプーンひとすくいでも、並みのひとのお腹にはズンと落ちていきます。
牛乳と卵にカラメルも混ざっているそうです。どうりで香ばしさも高らかです。
切った面の写真がこちら。密度の加減が伝わるでしょうか。
最近多くなってきた滑らか系プリントは、一線を画します。
結局、夕飯もアスパラとパンチェッタ炒めだけにとどめた二人の胃袋でも、
一日に食べることが出来たのはこれだけでした。
プリンの概念を変えるような、卵と牛乳のおいしい出会い。
8人分といわれるのもむべなるかな。
数日の賞味期限があるようですから、今日も冷蔵庫で眠っていただきましょう。
アムプリンさん、ご馳走様。
彼女によれば、店に建つのはかわいらしく話の面白いお姉さんだそうです。
私は店の外観写真を撮影していて、お話ができませんでした。
残念ですが、きっとまた、丘を越えて買いにいきます。
太陽の光で撮影した方が、パンもより美味しそうに見えますね。
朝食には、2種類のパンをいただきました。
一つは、フラノマルシェ内のパン屋さん。
木の実やドライフルーツがたっぷり。ブリオッシュ生地のふわっと感は
2日目でも十分楽しめます。
そしてもう一つが、電話で最後の一個を確保した、私的あんパンNo1。
新富良野プリンスホテルのパン工房で手に入れました。
十勝産あずきを上品にたいた餡。
富良野の小麦と牛乳をつかった生地。
牛乳の風味が程よく、甘み控えめのあんこと良くマッチしています。
餡は半分すくい取って、明日のあんトースト用にとっておきます。
もちろん、ペンション和田さんの畑でそだった立派なグリーンアスパラも
さっと塩ゆでにしました。
朝の新鮮な気分にぴったり。大地のエキスといわれるアスパラの水分が
かむごとにほとばしります。
添えてあるのは、フラノマルシェの産直市場でかわいらしく箱の隅に残っていた、
ミニ人参。
ちっちゃいけれど、あの少し渋めの人参らしい味が、ぐっと凝縮されていて、
富良野がきた~という体の叫びが聞こえます。
たんまりたまった洗濯物をこなしながら、
まだまだ楽しい時間が続きます。
いきなりですが、カバンのあちこちに押し込んだお土産の一式をテーブルに並べました。
今回は、一日目のメインが山登り(途中撤退)、二日目が丘眺め(ランニング付き)なので
おとなしい買い物かもしれません、ってどこがや。
この写真で何かわかった方は、私の方からうかがいたい。
味はどうでした?
これこそ、彼女が旅行前から電話で予約して、日曜の朝に取りに伺った
「エゾアムプリン」。富良野の平沢(たいらざわ)地区の、本当に驚くべき場所にある
畑の中の小さな製造工場で手渡ししてもらったのです。
お皿の直径は24センチかな。今晩は熟成の魔法をかけて、明日食べるのが楽しみです。
こちらは定番スープカレー。S&Bの緑箱(らっきょというお店の監修)が、なかなか東京の店頭では見つからないのに、
北海道ならスーパーで買うことができます。もう一つは、今回見つけた明治さんの製品で、マジックスパイスという店の監修品。
おなかを温めたい、と思うときスープカレーはとってもいいのです。
野菜が美味しく辛く食べられます。
プリンスパン工房からはこちら。手前にあるのが富良野あんパンです。
これ、あんパン、とは別に売られています。
今年の冬のスキー旅行で食べたときの衝撃といったら。あんパンはここまでできるんだ!
って、大げさすぎるかもしれませんが、ふくよかな甘みがあずきと小麦の共通項。
口に入れたら、2色の風船が膨らんでいく感じで、あんとパンを味わえるのです。
ちなみに、手回し良く店に電話を彼女がしてくれて、ぎりぎり最後の一個を確保できたという
人気のお品でもあります。
お菓子シリーズももちろんあり。富良野市のフラノデリスさん、上富良野のトアルージュさん。
そして美瑛のカルビーさんは、ええあのポテトチップのカルビーさんです。
ブースカが持っているのは、帰りのJALでもらった、東京スカイツリーとのコラボ企画絵はがきです。
最後はこちら。
一番嬉しいアスパラガス。
ペンション和田さんで自家栽培しているアスパラを、朝取りでお土産にいただきました。
この季節をさきどりする、北海道でも年の最初に広く出回るお野菜は、
実に繊細で、味の変化が早いので、朝取りを早く食べるのが一番です。
ぬれた新聞紙で来るんでもらって、明日の朝に北海道の目覚めを思い出させてもらうことに
いたしましょう。
お土産話でも、まだまだ盛り上がってしまう北海道旅行でありました。