篠つく雨がやまない麻布十番。
そば屋を出て、ご一緒してくださった彼女の仕事仲間とさよならすると、
美味しかった蕎麦の余韻が、水滴の冷たさに薄くなっていきます。
街場のパン屋さん・サンモリッツで肌理の細かなカステラ巻きと
アップルクーヘンを買ってから、冷え込む体と萎える心を温めるために、
駅前の紅茶やさん・Darjirinさんに入ります。
ダージリンやニルギリといった産地を書いたメニューは、さらに農場別に
選べるようになっています。
私は渋みも風味も三つ星の、100年農場(お名前はメモを忘れました)をチョイス。
なかなかインパクトがあって、目が覚めるお味でした。
一緒に頼んだザッハトルテが薄ぼんやりとかすむほどの、紅茶ココにあり、という大宣言です。
彼女は若干渋みを押さえた、華やかな紅茶を選びましたが、
お互いにしっかりと気持ちを整えることができたのは、まさにこの伝統のお茶のおかげでしょう。
店をでると、今朝から目論んでいた上野の国立科学博物館での展示を見に行くことにしました。
南北線から銀座線にのりかえて到着した上野の駅前は薄暮。
光が漏れ始めたコージーコーナーは上野限定のパンダワッフルがあったり、
道路をパンダバスが走っていたりと、やはり上野は上野と納得する独自の雰囲気が
あります。
人通りもけっこうあるのは、金曜日が博物館や美術館のレイトオープンを知っているからでしょう。
科学博物館も20時までやっています。
ライトアップされたシロナガスクジラの銅像を見上げながら、元素の展覧会以来になる
科博にはいります。
で、Chocolate。
チョコレートと環境、チョコレート製造の科学、チョコレートと健康、
何処が科学やねん、とつっこみたくなるテーマをぎりぎり科学メスで切り取る、
なかなかチャレンジングな企画です。
だから子ども連れも楽しめる、ということで、
上の写真はアトラクションの一つです。
考えていますねえ。私たちも乗っちゃいました。
年平均気温16度以上の熱帯の森が出自だという雰囲気も再現されて、
館内には鳥たちの声も響きます。
大きな実のレプリカ、ねっとりした果肉、
菌との共生、マヤ文での貴族の飲み物、
襲い来るヨーロッパ、輸出と輸入、
バンホーテンやリッツといった有名メーカーが果たした技術的発展、
カカオマスとカカオバターの分離が生んだ、固形化・大量生産への道、
そしてこれほど愛されるのが、体温下では固まり、体温で溶けるという物質性によるものだと
いうこと。他の食品にはない甘い口溶けはそういう、歴史や技術をもった、ある意味、欲が引き継がれて
生まれた味わいなのですね、と納得した展示になっておりました。
はあ、とチョコの科学・大河ロマンをした後は、アメ横で威勢のいい声を聞いて、
おうちに戻ることにしました。
けっこう、寒かったり暖かかったり、ねっとりしたりと、自分の心の物質性を楽しんだ
勤労感謝の一日でした。