(原題:Hotel Rwanda )94年のルワンダ動乱に巻き込まれたホテル支配人のサバイバルをスリリングに描くテリー・ジョージ監督作品で、実話を元にしている。
大上段に振りかぶったような社会派映画ではなく、極限状態におかれた人間が必死の脱出を試みる様子をサスペンスフルに捉えた娯楽作であるところが天晴れだ。我々は映画館に“お勉強”のために行くのではない。楽しむために足を運ぶのである。小難しいウンチクは後回しだ。まずは観客を最後まで引きつけるような魅力を持たないと、どんなに御立派なテーマ設定も無駄骨である。
ドン・チードル扮する主人公は腕っぷしも強くなく、武器の扱いに長けているわけでもない。ビジネス的に厳しい状況の中、周りの連中や顧客をなだめすかして何とか日々を乗り越えている“普通の人間”である。その彼がなけなしの人脈と小金をフルに活用し、またホテルマンとしての矜持も失わず、次から次と襲ってくる絶体絶命のピンチを紙一重で切り抜ける様子は、大いに共感を呼ぶ。それが上手く描けているからこそ、当時のルワンダが置かれた惨状をも観る者に印象づけられるのだ。
よく“第三世界での内紛は武器を供与する先進国側に責任がある”などという小利口なセリフを口にする者がいるが、あいにく、最新兵器がなくても彼らは弓矢や槍で虐殺をおこなうに決まっているのだ。この映画でも家庭にある鉈が簡単に大量殺戮の道具になっているではないか。
要するに“どうしようもない”のである。ニック・ノルティ演じる国連軍将校も(そして私達も)、理不尽な先進国上部の決定に歯噛みしながらも、このロクでもない現実を受け入れるしかない。それが世界の現状なのだ。